第5話「かつての英雄」
「お待たせしてすいません、茶菓子を用意しました」
レイゼが茶菓子をお盆に乗せ持ってくる
「すみません、本当に大丈夫ですからね(ってか、夢境内で飲食って出来るの?)」
「ほんの気持ちです。そういえば先程、僕の古い友人がこの集落を訪れて来たのですが…もし良かったらご紹介できないでしょうか?」
「レイゼさんのお友達さんですか、是非お会いしたいです!」
「では少々お待ちください、呼んで参りますので」
『数分後』
「お待たせしました、跡夢殿」
レイゼと龍炎が共に歩いてくる
「はっ!跡夢《せきむ、》なぜお前がここに!」
「龍炎さん?なんでここに!」
「俺はこの近くで悪夢を狩っていた所、何やら怪しげな二人組を見つけてな、ここが無事かを確かめに来たんだが…まさかお前がいたとはな」
「私はこの森の悪夢を倒していたら、レイゼさんにお礼をさせて欲しいと言われてここに来ました」
「…なるほど、先程二人組が悪夢がどうたら言っていたが、お前が倒していたのか」
夢見と龍炎の話にレイゼが割って入る
「失礼ですが、御二人はお知り合いなのですか?」
「えぇ、私と龍炎さんは夢境で知り合ったんですよ。まだ会って数日ですけど」
「なるほど、そうでしたか……そういえば、龍炎殿。先程仰っていたその二人組とやらのこと、詳しくお聞かせて願えますか」
「分かった。二人組の片方は男で、もう片方は女だった。どうやら悪夢が倒されている事に対して激情していたようだ」
夢見が動揺した様子で龍炎を見つめる
「えっ?悪夢を倒された事に対して怒ってたんですか?普通、倒されていても文句は言わないと思いますけど」
「あぁ、基本的に悪夢は倒したほうが良い。たまにそういう連中もいるんだ、悪夢をあえて残し、他の人間に間接的に被害を与えようとする輩がな」
レイゼが相槌を打つ
「まったく、陰湿な。ですが、御二方が居てくれれば、しばらくはこの集落も安泰です。そういえば、4年前にも似たようなことがありましたね」
夢見がレイゼに対して問いかける
「4年前にも、何かあったんですか?」
「えぇ。4年前に初めて悪夢が我々の集落を襲撃しに来ました。多くの血と涙が流れることになり、集落は壊滅寸前まで追い込まれてしまいました」
「しかし、そこに勇敢な三人組が現れてくださり、集落を守ってくださいました。しかしある日、突然その三人は消息不明になってしまいました……もしまだご存命であるのなら、再び会って話をしたいと常々考えております」
龍炎がレイゼに問いかける
「まさに英雄だな、ちなみにその三人組の名前は分かるか?もしかしたら消息を絶った行方が分かるかもしれない」
「ありがとうございます、龍炎殿。名は今でも鮮明に覚えています…ハゲート、リュネシア、ゼルゼ。彼らの名です」
「ハゲート?何処かで聞き覚えが……」
「龍炎さん、知っているんですか?」
// ─────龍炎の記憶 ──────//
「お前たち、そこで何をしている?」
「お前は…龍炎!」
「彼を知っているのですか?ハゲート」
//─────────────────//
「そうだ!さっき俺が話していた二人組、その内の一人がハゲートと呼ばれていた」
夢見が状況を整理する
「さっきの悪夢を倒されてた事を対し激怒していた二人組の事ですか、もし龍炎さんとレイゼさんの話が本当なら、その二人組も昔は悪夢に対して敵意を向けていて、偽霊を守る為に戦っていたという事ですよね」
「そのはずだが…一体何があって、彼らにここまでの変化が…」
集落から離れた場所から爆発音が聞こえてくる
「何!?」
「おそらく、悪夢の襲撃でしょう!御二人、お願いします!」
「えぇ!分かりました!行きましょう、龍炎さん!」
《◇》夢見と龍炎は音の聞こえた方向に森林を進んでいく
「誰もいないな…」
木の上から男の声が聞こえてくる
「さっきの音は罠だよ」
龍炎が謎の男に対して呼びかける
「っ!誰だ!」
「っち、またお前か!龍炎…」
「お前はさっきの、ハゲートと呼ばれていた男か!お前たちの目的は一体なんだ、答えろ」
「俺たち目的……簡単に言えば、偽霊への復讐だな」
夢見がハゲートと名乗る男に対して質問する
「復讐…?なんでそんなことするの!」
「俺には二人の仲間がいた。一人は今も俺とたびを続けているが、もう一人は12年前に殺された。誰が殺ったと思う?」
夢見がハゲートに考察を伝える
「まさかそれって、……偽霊?」
「その通り……アイツらは恩を仇で返しやがった!俺達は偽霊たちの命を救ってやったのに…!アイツらは俺の仲間の命を奪ったんだ!」
龍炎がハゲートに問いかける
「まさか、お前の仲間を奪った偽霊はまだロドイン森林にいるのか?」
「あぁ。前に森林に入っていくのを見たからな。奴は白髮で珍しい獣のような耳が生えている、見間違える訳がない」
夢見が驚愕する
「その特徴…まさか!」
龍炎が心の中でつぶやく
「(レイゼ──)」
「さぁ、俺の計画を知っちまった以上……ここで死んでくれ!」
ハゲートが木から飛び降りて来て、剣で龍炎に攻撃を仕掛ける
「おりゃぁあ!」
「っく!」
ハゲートの剣と龍炎の槍による、両者の攻撃が絶え間なく続く
「おい龍炎!お前の隣にいる女はお前の何だ!大切な人か?俺にもいたんだよ!だけどもう帰ってこない……こんなことなら、偽霊なんか助けるべきじゃなかった!!……夢境には、こんな運命しか待っていないのか?!」
「大切な人を誰かに奪われる気持ちは、俺にも分かる……辛かっただろう、だがそれは……現実でも同じだ!つまらない復讐は終わらせろ!」
「黙れ!俺はリュネシアと約束したんだ、アイツの敵を討つって!」
「いい加減理解しろ!復讐の連鎖に終わりは無い!」
「一匹も遺さず殲滅すれば、復讐は連鎖しない。そうだろう?龍炎!」
「お前のやり方は間違っている!他に道があるはずだ!」
「はははっ…間違ってなんかいない!『反夢境戦線』の紅蓮さんは言ってくれた……俺たちが正しいって!」
「反夢境戦線…?」
動揺した龍炎をハゲートが剣で槍を押し返し、吹き飛ばす
「夢境に恨みを持つ者…憎しみを持つ者…そんな奴らの集まりだ」
「龍炎さん、聞いたことはありますか?」
「いや…初耳だ。だが奴の話を聞く限り…反夢境戦線はおそらく極秘機関なのだろう。夢境を裏側から壊滅させる気だ」
「壊滅なんて人聞きの悪い〜、俺達は…夢境の不純物を除去しようとしてるだけだぜ」
龍炎がハゲートに対して問いかける
「お前はその組織でどういう立場だ?実行役か」
「実行役と言えばそうだが、俺は組織とトップの一人である紅蓮さん直々に命令された。他の奴らと同じにするなよ」
「ならば、その紅蓮とやらの情報を吐いてもらおうか」
「…言う訳ねぇだろ……?」
「……跡夢、加勢してくれ。奴を倒すぞ」
「分かりました、龍炎さん!」




