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ゴーレムの可能性は無限大 〜副業で探索者になったら職業とスキルの組み合わせが良過ぎたみたいです〜  作者: 伝説の孫の手
横浜第三ダンジョン地下80階層

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208/210

第207話 脅威の探索速度

横浜第三ダンジョン地下81階層に放たれたCゴーレム群は、合体した巨体ではなく、探索用に最適化された小型編隊の姿で岩石地帯へ滑り込んでいく。その上、一機ごとにセンサーが一対一で結合され、低空を這うような軌道で死角を舐め取った。


また、岩肌の裂け目や転がる巨岩の陰には、黒い蟻型の魔物が地上と地下を行き来していた。その為、探索ドローンは、壁沿いの陰影と地面の起伏を利用し、羽音が濃い上空を避けて進路を刻む。


一方で空中には蜂型の魔物が散発的に群れ、金属を擦るような羽ばたきが断続的に響いた。そこでドローンは推進用フレームの出力を落とし、翼の縁を震わせない静音運転へ切り替える事で対応する。


そして編隊の先頭では、ビーコン杭が先行して設置されていく。しかも固定錨が岩盤に食い込み、淡い信号が一定間隔で脈打つたび、座標同期が線として繋がっていった。


それを合図に、ステルス探索ドローン四十機が各地に設置されたビーコンを辿りながら扇状に広がり、着々と探索範囲を広げていった。


この様に、Cゴーレム達が順調にマッピングを行えていたのはそれ相応の対策をしていたからでもある。


例えば地下の蟻は、足元の微振動に敏感だった。そこでドローンは岩陰の低い隙間へ潜り、進路上の地面を避けて壁面移動に寄せることで、接近に気づかれる確率を削っていく。


蟻にはそれで対処していても、蜂の斥候が偶然近づく場面は発生する。なのでデコイ散布機が本隊と逆方向へ滑り、偽魔力反応と残像投射で視線を引っ張り、蜂の群れを外周へ誘導していた。


デコイによる誘導が成立した瞬間、蜂の群れは目標を見失ったように旋回し、やがて別の場所に侵攻方向を定める。その隙にCゴーレム達が探索範囲を広げるという寸法だ。


この階層には魔物達の巣らしい巣がなく、魔物は岩場をただ徘徊しているだけだった。その為魔物達の分布に偏りがなく、至る所に存在した。なのでマッピングしながらも、優先度というものが付けれないでいたが、そこは満遍なく探索する事で補った。


地下81階層の岩石地帯へ放っていたCゴーレム群から、断続的に座標と反応ログが吸い上がってくる。そこで集約された情報を束ね、階段の所在を確定するまでに要した時間は、わずか約一時間だった。


しかも「一階層=一時間で階段を見つけられる」という速度は、横浜第三ダンジョンの深度帯では異常な数字になる。だから今日中に地下84階層へ届かせる計画も、机上ではなく実行ラインへ一気に降りてきた。


『マスター。階段を発見しました。場所はここから北東の方角に約3kmほど行ったあたりです』


その報告が飛んだ瞬間、セーフティーの端で横になっていた体が小さく跳ねた。とはいえ瞼は重く、腕だけが探るように上がって額を押さえる。


「…ん?ごめん、寝てたよ。なんだっけ?」


返答に合わせて、視界の端に薄い立体図が再点灯する。さらに柵の外では、岩陰から蟻の足音が微かに鳴り、上空には蜂の羽音が遠くで引っかくように響いていた。


『階段を発見した報告になります。場所はここから北東の方角に約3kmほど行ったあたりになります』


理解が追いついたところで、寝癖のついたまま首を回し、軽く伸びを入れる。そこで腕時計へ視線を落としてから、立体図に視線を戻した。


「損傷率はどのくらい?」


『損傷率は0.5%ほどになります。前回と比べると50〜60分の一まで減っております』


数字が出た途端、肩から力が抜けて息が漏れた。さらにもう一度だけ時計を見て、セーフティーの外周を軽く叩くように指を動かす。


「おお、じゃあ成功だね。これなら十分運用可能だ。時間は…大体1時間は、それもかなり早いね。上出来、上出来」


ただし周囲は静かで、だからこそ仲間の動きが目立つ。そこで警戒線の位置を保ったまま、雪の気配を纏う男が一歩だけ近づき、顔色を確かめるように覗き込んだ。


「剛志、お前大丈夫か?もう少し寝ててもいいんだぞ」


その言葉に続いて、刀の柄へ指を置いたままの女が柵の外を見た。さらに蜂の羽音が一段近づいたところで、声だけを落として現実的な提案が差し込まれる。


「そうね。1時間で階段を見つけられるならまだ時間的にも余裕はあるわ。それに最悪引き返すことも視野に入れてるんなら、ここで強行軍をする必要自体が薄いわよ」


返された正論に、返事はすぐ出ない。けれど上体を起こし、指先で頬を二度叩いて眠気を払うと、足元の地図へ視線を固定したまま立ち上がった。


「うーん、二人の言っていることはもっともだけど、ここからはあまりやることもないし、当初の目標を目指そう。早めについたらそれだけ早く休憩もできるしね。なんだか今日は頑張ったほうがいい気がするんだ。まあ、あともう直ぐ俺もレベル1000になって、最上級職になるというのも少し楽しみでもあるしね」


言い切ると同時に、雪の男は短く鼻で笑って肩をすくめた。さらに周囲の気配を一度だけ確かめ、念押しのように指を立てる。


「確かに、俺もつい最近レベル1000になった身だから、その気持ちはわからなくはないけどな。わかったよ、本当に無理そうなら止めるからな」


その了承を合図に、セーフティーの外へ足が向く。しかも立体図には、ビーコン杭が打たれた点列と、ステルス探索ドローンが刻んだ安全寄りの線が、一直線に走っていた。


「ありがとう。じゃあ、いこうか」


岩場へ踏み出した途端、蟻が岩陰から湧くように現れた。けれど今度は進路が明確で、だから迎撃は最小に絞られる。


さらに蜂の群れが上空を流れた瞬間、遠くでデコイ散布機の偽反応が弾け、蜂の視線が外周へ引っ張られた。そこで本隊は壁沿いの低空ルートを詰め、必要な撃破だけで距離を削っていく。


そうして道程が残りわずかになったころ、剛志の視界の端に浮かぶステータス表示が一瞬だけ強く瞬いた。次の瞬間、レベルの数値が跳ね上がり、四桁の丸い数字が定位置へ収まる。


その事実を示すように、表示を指で弾き、仲間へ見せる。さらに足を止めず、目前の群れを手早く掃討しながら、最後の直線を押し切った。


そうして82階層への階段に到着した剛志達。剛志は我慢できないと言ったような様子でみんなに自分のレベルが1000に到達した事実を知らせた。


「みんな!ついに俺もレベル1000だ!これで最上級職に職業も変わっているね。どんな職業で、何ができるのか。ワクワクするね」


テンションの高い剛志だが、レベル1000を超える探索者は本当に一握りだ。その為ここまで喜んでいるのも気持ちがわかる一向は剛志を祝福した。


『マスター、実際ステータスはどの様になったのでしょうか?』


イチロイドがそう尋ねると、剛志は待ってましたとばかりに自身のステータスをパーティーメンバーに共有するのだった。

本作品を楽しんで頂きありがとうございます。

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