表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ゴーレムの可能性は無限大 〜副業で探索者になったら職業とスキルの組み合わせが良過ぎたみたいです〜  作者: 伝説の孫の手
横浜第三ダンジョン地下80階層

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

203/205

第202話 ダンジョン攻略に必要なもの

舞台は横浜第三ダンジョン地下80階層。そこで剛志達は探索を行っている。


前方ではイチロイドの指揮でCゴーレム軍団が展開し、さらに臼杵とミアが左右へ射線を取っていた。だから後方の剛志は全体の外形を目でなぞりながら、手元では次の戦力を絶え間なく組み上げていく。


地下80階層の魔物は、入口に立っただけで圧が違う。というのも、レベル600〜700帯の蟻や蜂が数百単位で群れを作り、それだけで深層到達者をねじ伏せる数になるからだ。


しかも群れの奥には、レベル1000近い指揮官個体が混じっている。さらに恐ろしいのは、まだ“入口付近”に過ぎないという事実で、奥へ進めば密度も速度も上がるということを考えると、今から恐怖すら感じるだろう。


まず視界の端が黒く染まった。遠方の地面を埋める蟻の列は波に見え、一方で天井側からは蜂の群れが霧のように広がってくる。


どちらも近づくたびに、硬い金属が擦れ合うような嫌な音を立てた。そこで生理的な嫌悪が背筋を撫で、握った手のひらに汗が浮く者もいる。


迎え打つCゴーレムは編隊ごとに組み上がると、対集団用の形へ一斉に差し替わった。胴体を太くして殴り合う形ではなく、まず周囲へフレームが伸び、地面と空中に“輪郭”を描く。


外周を走るのはフレームの包囲リングだった。逃げ道になりそうな岩の割れ目や段差には、フレームが先回りして橋を渡すように繋がり、同時に迂回路には柵のようなラインが立つ。さらに前面には薄く広いシールドが扇状に展開し、押し寄せる群れを受け止めながら、進行方向だけを狭めていく。


上空ではセンサーブロックが点在し、索敵網を張った。羽音の層の厚み、群れの速度、指揮官個体の位置が立体的に拾われると、リレーブロックが情報を束ねて全体へ流し込み、攻撃の“向き”が即座に揃う。


次に、マジックブロックが拡散砲として開いた。円弧を描くように範囲火力が走り、地上の蟻の列は前から削られ、空中の蜂は群れの端から焦げ落ちていく。包囲リングは閉じすぎない。逃げ道に見える細い隙間をあえて残し、群れが自然に流れ込む先に焼却線を置いて処理する。


索敵網が指揮官個体の位置を弾き出すたび、後方から狙撃が一本だけ通り、統率が一瞬だけ揺らぐ。そこへ雪の魔法が重なり、動きが鈍った群れから順番に焼却線へ吸い込まれていった。


撃ち漏らしが出ても、リペアブロックが欠けた接続面を埋め、シールドの穴を貼り替える。結果として、群れは“散らばって突破する”ことができず、Cゴーレムが用意した一本の通路へ押し込まれ、そこでまとめて焼かれていった。


蜂は空中戦が前提なので、浮いているCゴーレムの優位が通じない場面もある。とはいえ編隊の交代が早く、攻めと守りの継ぎ目が見えないまま、戦場の中心は少しずつ塗り替えられていく。


そこへ臼杵の雪魔法が重なる。つまり動きを止める薄い霜が地面と空気に散り、羽ばたきの角度が狂った蜂が落ち、蟻の脚が滑って列が崩れた。


さらに彼は、雪を円錐状に固めて針の束を作り、Cゴーレムの射線から外れた個体を一本ずつ撃ち抜いた。加えて大きな雪玉を転がすと、押し潰される音が連続し、飲み込まれた群れが黒い筋になって消えていく。


一方で撃破数だけを見れば少ないのに、流れを変えているのがミアだった。イチロイドの指示が飛ぶたびに、彼女はわずかな角度修正だけで、群れの奥にいる指揮官個体を抜いていく。


例えば遠方の岩陰で腕を振っていた蟻の指揮官が、次の瞬間には頭部を失って崩れ落ちた。またある時は、指揮官側も察して腕を差し出し、弾を受けて体勢を保とうとしたが、直後に二発目が胸を貫いて沈黙した。


こうした攻防が約二時間ほど続き、地下80階層を少しずつ押し進めたところで、臼杵が息を吐いて手を上げた。だから砲撃の回転を落とし、前衛の合体機が一度だけ陣形を締め直す。


「そろそろ休憩しようぜ。俺のMPも結構減ってきたしな」


「そうだね。じゃあそうしようか」


臼杵の発言を聞いて、剛志はリーダーとしての判断で探索を一時ストップし休憩をすることにした。


休憩といっても、座り込む余裕はない。そこで殲滅し切った区画で足を止めるだけに留め、周囲の警戒は疲れを知らないイチロイドが引き受けた。


加えて非常識なのは、休憩場所そのものが用意されている点だ。つまり剛志は“休憩用ゴーレム”をすでに持っており、地面から出てくる蟻への対策として、足場ごと宙に浮かせていた。


呼び出された小部屋の名はセーフティーだった。特別な武装はなく、クッション性のあるソファーやベッド、テーブルだけが備え付けられているだけのゴーレムだ。


見た目は床が浮いているだけで、壁と天井はない。だから外周に柵だけが巡らされ、外の様子を見下ろせる形になっていた。


ちなみに天候次第では壁が必要になるため、壁と天井を備えたセーフティー2も存在する。そこで臼杵は柵に肘を乗せ、下を見下ろしながら乾いた笑いを漏らした。


「何度経験しても、剛志のゴーレムは便利すぎるよな。ダンジョンの中でこんなに快適に過ごしているのは俺らくらいなんじゃないか?」


「まあ、確かにそうかもね。でもどちらかと言うと俺の得意分野はこっちだし、元々持っているスキルが所持制限無視だからね。やろうとおもえば家具なんかを持ち運ぶことは可能だしね」


そういう剛志は自分の元々のダンジョン探索を思い出して居た。


元々剛志は、ダンジョンに初めて入った際に石板から⭐︎5スキルの所持制限無視を手に入れ、探索者組合としては荷物運び要員として特別待遇の仕事斡旋をしてもらえるというところが本当のスタートだ。


ただ、その時に手に入れた職業のゴーレム使いとの相性が良すぎたせいで、気づけばこんなところで先頭を行うまでになっている。


人生とは想像の斜め上に進むものだなとしみじみと考える剛志だった。


そんなことを剛志が考えている間に、臼杵がある提案をしてきた。


「まあ、そうだけどよ。てか、そう考えるとこの快適な状況は、ゴーレムというよりもそっちのスキルの影響が大きいのか?まあどっちでもいいか。でもこの感じだと流石に地下80階層は泊まり込みでないと攻略厳しいかもな。少し動けば魔物の大群だ。それを簡単に殲滅できるだけの力がないなら時間をかけて攻略するしかないしな」


言葉が終わるのを合図に、視線が女性陣へ移った。だから剛志はテーブルの端に手を置き、口調を落として問いかける。


「確かに、こればっかりはどうしようもないかもね。女性陣はどう思う。意見を聞かせてほしい」


「ほとんど活躍して居ない私がいうのもなんだけど、確かに泊まり込みにするしかないわね。でも欲を言えば剛志の力でシャワーとかそう言ったものを揃えられないかしら?やっぱりさっぱりしたいという気持ちはあるわ」


万葉の言葉に、百花が小さく頷いた。するとミアも柵の外へ目を向け、周囲の気配を確かめてから口を開く。


「ああ、日本人はそうするとよく聞くな。ダンジョンの中でも体を洗えたり、用を足せるマジックアイテムなんかは基本日本産が有名だ。そういうのは持って居ないのか?」


ミアの発言は、国民性の違いで価値観が異なるという部分の発見にもなったが、それよりも大きな気づきを剛志にもたらした。


ごくごく当たり前なのだが、剛志にとっては思考から外れてしまっていた。そんな考えだ。


「たしかに!何でもかんでもゴーレムでって考えてたけでど、それでいいじゃん!じゃあ、一旦帰ってそういうアイテムを買いに行こうよ。女性陣も俺のゴーレムよりかは市販のものの方が抵抗ないでしょ?」


提案が出ると同時に、場の空気が少しだけ軽くなる。そこで皆が短く頷き合い、次の動きが自然に定まったところで、この日の区切りがついたのだった。


本作品を楽しんで頂きありがとうございます。

ブックマークや評価、感想、リアクションなどをしていただけますと幸いです。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ