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ゴーレムの可能性は無限大 〜副業で探索者になったら職業とスキルの組み合わせが良過ぎたみたいです〜  作者: 伝説の孫の手
横浜第三ダンジョン地下80階層

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202/203

第201話 地下80階層探索開始

横浜第三ダンジョン、地下八十階層。転移の光がほどけると同時に、湿った岩の匂いと、薄い羽音のような残響が肌にまとわりついた。しかも足元の地面は細かな砂利混じりで、踏み出すたびに乾いた音が返ってくる。


それを合図に、先頭に立った剛志が周囲を一度見回した。昨日の作戦会議で決めた立ち位置に、自然と全員が収まっていく。そこで、軽く拳を握ってから声を上げる。


「よし、じゃあ早速ダンジョン攻略をやっていこうか!みんな、昨日の作戦会議の内容は覚えてる?」


返事より先に、横で首を鳴らした臼杵が肩を回す。さらに手袋の上から指先を擦り、息を吐いてから口角を上げた。


「ああ、バッチリだぜ。それにこの階層は俺が活躍出来る環境だからな、やりがいあるってもんよ」


雪魔法は、空間そのものを冷やし、粒子をまとった風を作れる。だからこそ、甲殻の隙間に冷気を流し込めば、蟻も蜂も動きが鈍る。しかも魔法は面で届くため、群れを相手にするほど手数が生きる。


一方で、後方で腕を組んだ万葉は、視線だけで暗がりの先を測っていた。とはいえ、わずかな羽音が耳に触れた瞬間、眉間が露骨に寄る。


「逆に私は戦いづらい事この上ないわ。見た目もキモいし、疲れるからあまり戦いたくはないわね」


それでも、彼女が最高戦力である事実は揺れない。だから今回は、前へ出すよりも「動ける札」として温存する。つまり、押し切る必要が出たときだけ一刀で線を引いてもらう形だ。


その隣で、百花が深呼吸を一つしてから、両拳を軽く握り直す。さらに姿勢を正し、視線をぶらさずに言い切った。


「私も皆さんの足を引っ張らない様に気をつけます!」


戦力として見ると、まだ伸びしろの段階だ。けれど、ここは経験値効率が桁違いで、しかも万葉が同行する理由にもなる。だからこそ、彼女にとっては危険を寄せない位置で「場に慣れる」ことが優先になる。


それとは対照的に、ミアは銃を肩から外し、スコープを短く拭った。さらに装填の動作を一度だけ確認し、短い頷きで区切る。


「私も作戦は頭に入れてきた。言われた仕事は完璧にこなすわ」


彼女の担当は、指揮官個体のピンポイント排除だ。だから、索敵と分類、射線の提示はイチロイドが担う。つまり、撃つべき一点が示される限り、弾は迷わないというわけだ。


ミアの発言を合図に、小さな影がちょこんと前へ出た。ミニサンドゴーレムの体で胸を張る姿は可愛らしいのに、声だけはきっちり整っている。


『皆さんの作戦は全て把握済みです。何かあったらサポート致します。お任せください』


胸を張ったままの姿勢で、砂粒がさらりと落ちる。身長は五十センチほどで、見た目だけなら護衛対象に見える。けれど、この小さなゴーレムがこのパーティの最高戦力の1人でもあるのだからダンジョンは面白い。


一通りの確認が終わると、階段付近の空気が一段重くなる。セーフティゾーンの境界を一歩越えた瞬間、遠くの羽音が明確に膨らんだ。さらに地面の下から、無数の脚が擦れるような振動が伝わってきた。


群れが来る。そう判断するより早く、暗がりの先がざわつき、砂利が跳ねる。しかも一体一体が一〜二メートル級で、甲殻の擦れる音が波のように迫る。上からは蜂が混じり、羽音が岩壁に反響して、位置感覚を狂わせるほどだ。


敵の接近を感じ取り、すぐさま剛志の手元で魔力が走った。立方体のブロックが空中に次々と生まれ、低い唸りを残しながら整列する。さらに魔力ジョイントが点灯し、ブロック同士が吸い寄せられて形を作り始めた。


前線では、合体したCゴーレムが盾の面を広げ、まず地走りの蟻を受け止める。押し返される前に一部が分離し、衝撃を逃がしてから貼り替わる。加えて、別の個体はマジックブロックを連結し、光の筋を面で薙いで群れの密度を削った。


その動きに合わせて、今度は臼杵が掌を上げる。すると白い粒が噴き上がり、冷気が床を舐めていく。蟻の脚が一瞬鈍り、蜂の羽が氷の膜に引っかかるように軌道を乱した。


さらには、遠目の岩陰に紛れた“違う気配”が、イチロイドの立体投影に小さく灯る。そこで、ミアの銃口がわずかに角度を変えた。次の瞬間、乾いた発砲音が一つだけ響き、群れの奥で背の高い個体が崩れ落ちる。


指揮官個体が落ちることで、群れの動きが一拍遅れる。その隙をCゴーレムが押し広げ、臼杵の冷気が面を固定する。結果として、蜂が落ち、蟻が固まり、処理の流れが滑らかに回り始めた。


少し離れた位置では三人が壁際に寄り、戦線の外形を見守っていた。とはいえ、前線の密度が高すぎて、今の距離では踏み込む余地がない。そこで、剛志が肩を落としてから、苦笑いのまま声を漏らす。


「いやー実際に戦闘が始まるとやる事ないよね。百花ちゃんも肩の力抜いていこう」


返事の前に、百花が胸の前で手を軽く握り直した。さらに緊張で上がっていた肩を、息と一緒に下ろす。


「ありがとうございます。そう言ってもらえると楽になります」


視線は前線に向いたまま、剛志の指先は止まらない。つまり、前を眺めつつ、手元ではゴーレムの数が増えていく。そこで、状況を区切るように口を開いた。


「それに、この階層ってとにかく大量の魔物を処理するから、結構早くレベル上がるはずだよ」


その言葉を受けて、百花はすぐにステータスを開いた。画面の数値が跳ねたのを確認した瞬間、目が見開かれる。だから、思わず声が弾んだ。


「うわ、本当だ!もうレベル上がってますよ。私だけまだレベル低いので、結構なスピードで上がりそうですね。体の使い方がわからなくならない様に訓練しないとですね」


百花の嬉しそうな声を聞き、万葉が大きく息を吐いた。退屈を追い払うように足首を回し、肩の力だけを抜く。


「じゃあ暇だから戦闘訓練でもしましょうか」


次の瞬間、小さな砂の体がこちらへ向き直る。前線を制御している本体とは別に、剛志の近くに置かれた分体が、少しだけ身を乗り出した。


『あ、では私も混ぜてください。戦闘データは常にブラッシュアップしていかないと。それにお二人の訓練に混ざれたらとても有意義です』


言い切ったあと、分体が小さく拳を作り、構えを取る。だから、百花も姿勢を真似し、万葉は短く顎を引いて間合いを測った。さらに剛志は、その様子を横目で追いながら、手元ではゴーレム生成を途切れさせない。


前方では激しい戦闘が続き、魔物の脚音と羽音が途切れない。ところが手前では、百花が一歩踏み込み、万葉が最小の動きで捌き、分体がデータを拾う。しかもその横で、剛志の指先からはブロックが増え続け、空中の列が絶えず伸びていく。


同じ空間で、三つの速度が並走していた。だからこそ、地下八十階層の攻略は始まったばかりなのに、すでに流れだけは完成している。そう示すように、前線の光と冷気が揺れ、手前の訓練の足音が乾いたリズムで重なり続けていた。

本作品を楽しんで頂きありがとうございます。

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