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ゴーレムの可能性は無限大 〜副業で探索者になったら職業とスキルの組み合わせが良過ぎたみたいです〜  作者: 伝説の孫の手
A.B.Y.S.S.建国

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第199話 水面下での暗躍

同じ頃――横浜第三ダンジョンの深層で剛志たちが息を合わせて探索を進める、その裏側で。世界の各地でもまた、A.B.Y.S.S.は水面下で暗躍を始めていた。


そして行われていたのは、探索者の拉致監禁だった。狙われたのは各国のトップ層ではなく、現場を回せる中堅層――いわゆるレベル一〇〇〜二〇〇あたりの探索者たちである。


しかも、手口は今までの彼らとは異なり派手ではない。というのも、舞台はいつもダンジョンの中で、周りには部外者はおらず、世界的に配信されているわけでもない。そういった相手を対象に、静かにことは行われた。


実際、いくつかの国では、深層からの帰還報告が途切れる事例がぽつぽつと出た。けれど同時に、ダンジョンというものは、そもそも探索者が帰らないケースがゼロではないこともまた事実だ。なので最初は「そういう日もある」と処理されてしまう。


ところが、その“そういう日”が続きすぎた。今までの経験上、探索者の帰還率というものはある程度データが出ている。加えて、いなくなっているのは、ある程度経験を積んで帰還率も上がってくる中級探索者たちだ。受付の端末に残る彼らの未帰還の表示が、いつもより少しだけ多い――それに違和感を覚える職員が現れ始めた。


それを合図に、各地で密かに同じ結論が増え始める。ダンジョンの中で襲われ、ダンジョン間転移で“連れていかれた”可能性――。しかしそれらも確信を得ることができないため、まだ「可能性」という段階で、数ある報告の中に埋もれていく。


そして、気づけば世界各地から総勢五〇〇名ほどの中級探索者が、一箇所に集められていた。全世界から五〇〇名と聞くと少ないようにも感じるが、中級探索者はそこまで人数が多くない。世間に気づかれるのも時間の問題と言える人数だ。


彼らが集められた場所は、人工の施設ではない。天井の高い広間のようでいて、壁面の岩はどこか不自然に滑らかで、空気だけが薄く冷たい。まさにダンジョンの中のような場所だ。加えて、出口になりそうな割れ目は見当たらず、足音が妙に反響する。


その中心に、一人の男が舞い降りる。黒い外套が肩から落ちることもなく、視線は群衆の上を軽く撫でるだけで止まらない。周囲の探索者たちは喉を鳴らし、拳を握る。一触即発の様相だった。


「やあ諸君、いきなり手荒な方法で集まってもらって申し訳ない。そんな状況ですぐには受け入れられないと思うけど、俺の仲間にならないか?」


返事の代わりに、怒号が上がる。数名が前へ出て、「ふざけるな!」と叫ぶような勢いで足を踏み鳴らしたが、その瞬間、周囲の部下らしき影が肩を震わせた。怒りが膨らみかけた空気を、男は片手で制する。


「いいね、そういう反応こそ探索者として当たり前の反応だ。でも、君たちはまだ僕のことよくわかって居ないでしょ。こういう時はまずは自己紹介からだ。」


そう言うと同時に、男の背後の空間が歪んだ。円環のような模様が浮かび、光が滲む。模様は転移陣にも似ていたが、輪郭の内側に沈む黒が深すぎて、目を合わせるほどに焦点が揺れた。


そして、召喚が始まる。まず出てきたのは人型の魔物――先日のサミットで目撃されたそれと同じ系統に見える影が、音もなく並ぶ。次いで、普段この五〇〇名が戦っている魔物の上位種たちが続き、体格も気配も一段重くなる。


さらに、どんどん数を増していく。羽音が頭上を掠め、爪が石を引っかく音が混じり、呼気の熱が肌に触れた。視界の端まで埋め尽くすように「倒せない」と直感させる存在が展開され、探索者たちの呼吸がそろって浅くなっていく。


逃げ道がないことは、足元が先に理解していた。背中を壁に預けた者が、肩甲骨のあたりで震えを止められない。槍を構えた者も、穂先がわずかに揺れ、汗が握りに染みた。


そこで、威嚇を終えた男がまた声を出す。拍手でもするように、指先が軽く鳴った。


「これはほんの挨拶だ。まずは僕の実力をわかりやすく教えただけ。でも安心してくれ、別に君たちの命が欲しいわけではないし、労働力はいらない。僕が欲しいのはシンプルに仲間さ」


ざわめきが波のように返ってくる。けれど、その波は怒りではなく、疑念と恐怖の混ざった揺れだった。誰かが唾を飲み、別の誰かが歯を食いしばる音がした。


「…その話、本当か?」


集められた者たちの中から、誰かが問いかける。それは強がりを含んだ声だったが、最後の音だけがかすれていた。男はそこで初めて、視線を群衆の高さまで落とす。


「ああ、そうさ。だって別に君たちを殺すのだったらこんなにまどろっこしいことをする必要はないし、労働力だって、これだけの者達を使役できるんだ。いくらでもある」


男の発言は傲慢だが、それを実行できる実力があることは嫌でも理解できる。誰もが言い返せず、しかし目を逸らすこともできない。足の裏が硬くなり、指が開けなくなる。


だからこそ、男は待った。ざわつきが一段落し、広間の空気が妙に静まり返るタイミングを。


「じゃあ、なぜ君たちを仲間に欲しいのか、そこが気になるだろう?それは僕の目的にはとにかく人材が必要だからさ。それも魔物ではなく人間の人材がね」


どこか含ませた物言いだが、探索者たちは彼が次に何を言うかを待つしかなかった。そして男――ギデオンは、微笑みだけを残し、計画の全容と今回の拉致の意図をこれから彼らに説明するのだった。


果たして、彼の本当の目的とは。今まで行ってきた一連の出来事の終着がなんなのか。それが今から語られようとしている。

本作品を楽しんで頂きありがとうございます。

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