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ゴーレムの可能性は無限大 〜副業で探索者になったら職業とスキルの組み合わせが良過ぎたみたいです〜  作者: 伝説の孫の手
A.B.Y.S.S.建国

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第196話 剛志の戦い方

パーティー登録が完了した瞬間、剛志の視界の端に、見慣れない数値の列が滑り込んだ。視線を向けると、そこに並ぶのはミア・コールマンのステータス。器用の数値が、ひときわ鋭い刃みたいに突出している。


剛志は歩みを止めず、ヘキサボードの縁を指で押さえて姿勢を整えた。目の前は地下深層の岩石地帯。転がる巨岩と割れた地面の隙間を縫うように、細い通路が続いている。空気は乾いていて、時々、遠くで竜の息遣いみたいな低い振動が響いた。


「こうしてステータスを共有してみると、ミアさんの実力の高さを再確認できるね。この階層で問題なく戦えていたから、強いことはわかってたけどね」


ミアは視線だけを前へ置いたまま、頷きもしない。反応が薄いのに、言葉は迷いなく届く。指先で何かを確かめるように銃の感触を整え、淡々と言った。


「逆にあなたはステータスからはわからない強さを持っているわよね。そう考えるとステータスが全てではないわ」


臼杵が小さく息を吐いた。口元は笑っていないが、納得した時の癖で顎だけがわずかに上がる。数字に現れない部分を、何度も目撃しているからだ。


ヘキサボードは滑るように前へ進み、岩の影を抜けた。次の瞬間、ミアの銃口がほんの数度だけ動く。視線の移動はほとんどない。だが、遠方で砂埃が跳ね、地竜の巨体が崩れる音が遅れて響いた。


剛志が確認する前に、もう次の一体が倒れている。イチロイドが索敵を続け、ミアは必要最低限だけ撃つ。無駄な動きがなく、時間だけが短縮されていく。臼杵は肩に力を入れずに周囲を見張り、剛志は回収用の小型ゴーレムを散らして、落ちた素材を拾わせた。


それがしばらく続いた。


岩陰を曲がるたび、地竜の死体が転がっている。骨の太さと鱗の硬さが、深層の現実を嫌でも思い出させる。それでも一行の速度は落ちない。落とせない。遠くから聞こえる飛竜の羽音が増え、空の気配が重くなる。


ミアの肩が、ほんの少しだけ下がった。呼吸のリズムが変わる。撃つ間隔が一拍だけ伸びた。弾丸そのものではない、魔弾を維持するためのMPが、底を見せ始めている。


役割交代は、言葉より前に必要になる。


剛志はヘキサボードの前縁を軽く叩き、イチロイドへ合図を送った。周囲のブロックの影に、淡い光の粒がいくつも浮かぶ。立方体の小さな塊が、低出力の空中移動で集まり始めた。


「この階層だから大体10000体くらいでいいかな。Cゴーレムの一体一体も結構強くなったけど、なんて言ったって種類が増えたのが大きいよね」


ミアが初めて、剛志の方へ視線を向けた。驚きではなく、測る目。臼杵はその視線の動きを見逃さず、口角を少しだけ上げる。


剛志の周囲に集まったブロックは、七種類に分かれている。中枢を担うコア、骨格を作るフレーム、防御のシールド、砲門のマジック。そこに、追加された三種が混ざる。


一つは索敵と測距を担うセンサーブロックだ。軽い反射のある素材感で、表面に細い刻印が走っている。MPが高く、索敵・測距・魔力反応解析に加えて、簡易立体投影まで担当できる。群れの中で“目”として散り、死角を埋める役だ。


そして、リレーブロック。接続面に銀線のような紋様が入り、同期補助と指示中継に特化している。通信網形成と負荷分散(強)で、命令の渋滞と同期ズレを抑える。数が増えるほど、合体形態が安定する骨格になる。


最後がリペアブロックだ。このブロックは一回り重く見え、表面が樹脂でコーティングされたような鈍い艶がある。応急修復と再接続、形状補修で“崩れない”ための穴埋めをする。完全修復じゃない。戦闘中に倒れないことが目的だ。


イチロイドの制御で、ブロック同士が魔力ジョイントで吸着し始めた。磁石みたいにカチ、と見えない接続が決まるたび、空気が少しだけ震える。フレームが背骨のように伸び、シールドが装甲を貼り、マジックが砲門の位置へ収まる。センサーが周囲に散り、リレーが要所に組み込まれ、リペアが“穴”になりそうな箇所へ先回りする。


合体前提の兵器が、瞬きの間に形を得た。


対ドラゴン用の形態は、前面を厚く、上方へも死角を作らない。遠距離砲の様な形態だ。


集まったブロック達が首と翼、そして喉に照準を合わせるため、センサーが飛行測距と着弾予測のラインを作る。リレーがそれを全体に流し、マジックが集束砲の準備を進める。


最初の交戦は、いきなり空から来た。


飛竜が岩の上から滑空し、影が落ちる。次の瞬間、組み込まれたマジックブロックが一斉に光り、集束された魔弾が一直線に空を裂いた。飛竜の翼の付け根が抉れ、姿勢が崩れる。



地竜が地面を割って飛び出した時は、もっと近い。鱗の擦れる音が耳に痛い距離で、顎が開く。ブレスの予備動作。センサーが先に兆候を拾い、リレーが同期を上げる。


次の瞬間、前面のシールドがドーム状に変形し、魔力障壁が重なる。熱の奔流がぶつかり、空気が白く焼けた。だが、壁は割れない。割れても、割れた面だけが切り離され、残りが残る。


ブレスが途切れた瞬間、マジックブロックの集束砲が喉元へ撃ち込まれた。鱗の奥で光が弾け、地竜の巨体が大きく揺れ、膝が折れる。倒れる勢いに合わせて、フレームが脚部を再配置し、滑るように距離を取った。


撃破が続く。二体、三体。そんな中視界の端で、素材回収用のゴーレムが黙々と動く。剛志はヘキサボードの上で、指先だけで指示を送るだけだ。イチロイドが全体制御を担い、剛志は“方向”だけを渡す。


一方、ミアは撃たない時間が増えた。代わりに、遠視で空を掃き、気配察知で影を拾う。必要な時だけ、最短の一発を置く。その淡さが、逆に全体の流れを乱さない。


「サミットの時もそうだけど、あなたの実力の底が知れないわ」


ミアの声は低い。驚きは表情に出ないが、視線が剛志の指先に留まっている。


臼杵は肩を回し、手をぶらぶらと振ってから、わざとらしく欠伸の形を作った。暇を誤魔化す癖だ。


「結局俺が暇になるのは変わらずだしな。俺もあいつの力の限界はわからねえよ。それにあいつの一番すごいところはその成長率だ。ここまで一年足らずなんだぜ?恐ろしいよな」


剛志は視線を外しきれず、頬だけが僅かに熱くなる。ヘキサボードの縁を握り直し、指先の力を抜いた。照れを見せないようにしても、動作が先に反応する。


その間も、イチロイドの指示は途切れない。ブロックの群れが波のように前へ進み、必要な形に変わり、必要な箇所だけを守る。


センサーが空へ光の粒を散らし、飛竜の軌道を線にして示す。リレーがそれを全体に同期させ、マジックが最短のタイミングで撃つ。崩れた箇所はリペアが埋め、再接続で形を保つ。


結果として、一行は“進む”ことに集中できた。


岩場の段差が増え、通路が細くなる。足元の振動が、深くなるほど重くなる。時折、空気が一段冷えて、竜の気配が近いことを知らせた。だが、進行速度は落ちない。


やがて、視界の先に、明らかに“区切られた”空間が見えた。巨岩が門のように立ち、そこだけ床が妙に整っている。ボス部屋の前だ。空気が一枚厚くなり、喉の奥が乾くのがわかる。


「なんだかんだで地下70階層以降は時間がかかるね。一度踏破していて、さらに今回は先に進むことを優先したのにも関わらず結局ほぼ半日かかった。今回はボスを倒したら帰還かな」


臼杵は壁に背中を預け、周囲の音を一度だけ聞き分けるように目を細めた。指先で魔力の流れを探る癖が出る。


「まあ、仕方ねえよな。それに前回は万葉ちゃんもいたしな。それで言ったら今回はミアが居たからどっちもどっちかもだけどよ」


ミアは腰を落として銃を点検し、必要な分だけ呼吸を整える。言葉は短い。


「結局後半は私も何もしてないわ。ほとんど剛志一人の戦果よ」


臼杵が小さく笑い、視線を剛志の背後――整列するCゴーレムの群れへ流す。圧倒的な数が、沈黙で控えている。


「ま、それに関しては慣れるこったな。俺らはあいつ本体を守ることに注力するというのが基本戦法だ。それも最近はいらなくなりつつあるけどな」


ミアが一度だけ瞬きをし、ボス扉へ視線を移した。無表情のまま、声だけが僅かに柔らかい。


「とてつもないわね。私の知る限り一個人の戦闘力でいうと群を抜いているんじゃないかしら。」


剛志は首を振りかけ、途中で止めた。言い切るより、まず状況を整えるべきだと理解している。だからこそ、言葉は慎重に落とす。


「そんなことはないよ。それで行ったら西園寺さんと一対一で戦ったら俺は一瞬で負けるよ?」


臼杵は肩をすくめ、片方の手を軽く上げた


「それも戦い方次第なところあると思うけどな。まあ、本人にその気が無いのに考えるだけ無駄だわな。今は次のボス部屋に集中しようぜ」


扉の前で、イチロイドが小さく位置を変える。ミニサンドゴーレムの姿のまま、周囲の魔力反応を測っている。


Cゴーレムの編成が、対ドラゴンの形態を維持したまま、突入の隊列へ滑らかに移った。


剛志はテトラボードから降り、足元の感触を確かめる。岩の冷たさが靴裏から伝わる。


準備は短い。だからこそ、丁寧さが必要だ。


ボス部屋の扉の前で、一行は最終調整を終える。次は地下79階層のボス。ブラックドラゴンだ

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