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ゴーレムの可能性は無限大 〜副業で探索者になったら職業とスキルの組み合わせが良過ぎたみたいです〜  作者: 伝説の孫の手
A.B.Y.S.S.建国

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第194話 帰国と共闘

ギデオンの襲撃が発生し、その後処理を経えたサミットは、結局のところ大きな混乱もなく幕を閉じた。


あの一件以降、数日間にわたって会合自体は続いたが、新たな事件は起きていない。

そうして各国代表は、表向きには何事もなかったかのように議題を消化し、予定通り帰国していった。


それは剛志達も同様だ。


日本への帰国後、さすがに皆疲労困憊の為、一日は完全な休養に充てることになった。


そして翌日、剛志達の姿は横浜第三ダンジョンにあった。


「……やっぱり、ここに来ると落ち着くな」


ダンジョンのエントランスを前に、臼杵が軽く伸びをする。

見慣れた景色、見慣れた空気。ここが彼らの“ホーム”だ。


「気を抜くと、ろくなこと起きないけどね」


万葉が肩をすくめ、周囲を見回しながらそう返していた。


そんなたわいもない会話をしながら、受付へ向かおうとしたところで、職員の一人が小走りで近づいてくるのが見える。


そして声量を抑え、周囲に聞こえないように剛志達に話しかけてきた。


「岩井さん。町田所長がお呼びです。……皆さんで、とのことです」


「全員で?」


臼杵が眉を上げる。


「なんでしょう?心当たりはいくらでもあるとは思いますが…」


百花がぼそっと言い、万葉はすでに歩き出す。

そんな三者三様の反応の中、剛志も一度だけ頷き、所長室へと向かった。


所長室に着き、扉をノックして中へ入る剛志達。


するとそこには町田所長と、もう一人。

つい最近見かけたある女性がソファに腰掛けていた。


背筋が伸び、姿勢に無駄がない。

視線は静かに一点を捉え、こちらを一瞥すると、すぐに町田所長へ戻った。


「紹介するわ」


町田所長が淡々と告げる。


「オーストラリア代表の探索者、ミア・コールマンさんよ。向こうの組合から派遣されてきたの。つい先日ぶりね」


「ミアです。よろしく」


声は低く、短い。

それ以上の自己主張はなかった。


「彼女がきた目的は、探索者同士の国間交流ということになっているの」


そう前置きをして、町田所長は説明を続ける。


「そもそもの話をすると、日本とオーストラリアの探索者組合は、友好的な関係にあるわ。それもあって今回のサミットを機に、実地での共同探索を打診されているというのが正直なところね。打診といいつつ、すでにいらっしゃっているけどね…」


剛志は一瞬、間を置いた。


「……そうですか。突然なので全くこちらの準備ができていないというのが正直なところですが。来てしまったなら、仕方がないですね。これも仕事ということで受け入れましょう。前回のサミットで少しですが話したこともありますし、全くの初対面ではないですしね。でも次回からはもっと早く教えてくださいよ」


「本当にごめんなさい。私としても実際にいらっしゃるのはもう少し後になると聞いていたから、連絡が急になってしまったの。なんでも彼女たっての希望で即日出発したらしいわ」


町田所長からそう紹介された割には、ミア・コールマンの反応はどこか薄い。


サミットで剛志達が会話した際も、このような感じだったのだが、淡白でどこか冷たい印象を持っていた。


なので彼女たっての希望で即日出発するというイメージが湧かないというのが正直な感想だ。


でもここでこれ以上ゴネても仕方がないし、そもそもダンジョンに早く入りたかった剛志。


ミアも同行するとなると、急いでダンジョンを潜らないと深層に潜るまでに時間がかかってしまうということで、彼女の参加を了承し早速ダンジョンに潜ることにした。


諸々の準備を整え、ダンジョンへ入る剛志達。


その間もミアの動きは静かだった。

慣れた手つきでライフル型のマジックアイテムをケースから取り出す所作に、一切の無駄がない。


金属音一つ立てず、淡々と装備を確認していく。その様子はイメージでしか知らない一流のスナイパーのそのものの様だった。


「静かな人だな」


臼杵が小声で言う。


「そうだね、どことなく怖いよね」


剛志がそう返すと、ミアは否定も肯定もせず、わずかに口元だけを動かした。笑ったようだ。

何が彼女の琴線に触れたのかわからないが、不思議な人だ。


なにわともあれダンジョンを潜り出した剛志達。ミアがいなければ転移陣で一気に目的の階層まで一っ飛びと行けるのだが、今回はそれはできない。


何故なら少なくともミアは、一層づつダンジョンを進んでいく必要があるのだ。なので剛志は今回、最初から全速力でダンジョンを攻略するつもりだった。


「普通に潜るんじゃ、時間がかかりすぎるからさ。今回は一気に行くよ!」


剛志がそう言って、手を横に振る。


次の瞬間、剛志達の目の前にヘキサボードが展開された。


以前のものより一回り洗練されたフォルム。

起動と同時に、低く安定した浮遊音が広がる。


「……おいおい、また改造したのか?」


臼杵が半ば呆れたように言う。


「うん、ちょっとだけね」


「お前、絶対ちょっとじゃないだろ!」


臼杵がそうツッコミを入れるのも無理はない。以前のヘキサボードとは見た目も、性能も全然別物に改造されていたのだから。


それを今までの付き合いから察知した臼杵が、先んじてそれを指摘したというだけだ。


しかし剛志は少し驚かせたいという悪戯心もあり、ヘキサボードのスペックについては教えることはしなかった。


そして皆が乗ったヘキサボードは一気に加速する。

今までとは異なり立ち上がりが早く、減速も鋭い。

カーブや上下への移動の際も揺れは最小限で、狭い通路でも速度を落とさずに旋回することができる。


速度、安定性、制御性能。

すべてが以前とは別物だった。


そしてミアに関しては初見だ。

彼女は乗った瞬間、目を見開いてた。

基本ポーカーフェイスの彼女も、こればっかりは流石に驚いたようで、その表情がコロコロと変わる。


そして新ヘキサボードの性能は素晴らしく、瞬く間に横浜第三ダンジョンを進んでいくのだった。


二、三時間後。


圧倒的速さでダンジョンを攻略していた一向はついに、地下60階層へ到達する。


そして、地下60階の階段近くの安全地帯で少し休憩を取っている際に万葉が話し出した。


「私と百花はここで分かれるわね。元々の予定通り今日も百花のレベル上げをモンスタドームで行うわ」


ここから先は剛志と臼杵、イチロイド、それにプラスでミアというパーティー構成になる。


「じゃあ行ってきます」


「後で合流ね」


百花と万葉がそう言って離れていくのを見送り、一向はさらに奥へと進み出す。


そして、戦闘をなるべく避けることで、これまた凄まじい速さでダンジョンを潜った一向は、ついに地下70階層へと到達した。


そこは巨大な岩が無数に転がる岩石地帯だった。

視界は遮られ、音は吸われる。足元からは、重い振動が伝わってくる。この足音の正体こそ、この階層から現れるドラゴンだ。


『地竜を確認しました』


早速魔物を検知したイチロイドが、即座に報告を上げる。


『岩陰に潜伏中。距離、方位、高低差を算出いたします』


「……座標、教えてくれる?」


そこでミアが短くイチロイドに尋ねた。


『かしこまりました。着弾角まで計算いたします』


「まじか、おまえそこまで出せるのか!」


イチロイドの優秀さに、臼杵が思わず呟いた。


「イチロイド、最近ちょっと優秀すぎて怖いよね」


それに返すように剛志が苦笑する。


そんなやりとりの横でミアは岩の隙間に立ち、おもむろにライフルを構えた。


動きが止まり、音が消える。


次の瞬間。ミアの構える銃口から、とてつもない勢いで銃弾が飛び出した。


音はなかった。あるのは銃弾の威力に対する反動と、一筋の光のみだ


『命中。討伐を確認しました』


イチロイドの報告で今起きたことが理解できた。彼女は今攻撃を放ったのだ。

そして報告と同時に、遠くで岩が崩れる重い音が響いく。


「……今、撃ちました?」


そう剛志が尋ねる。


「撃った」


「あんな流れるように?」


「当たるから、問題ない」


淡々とそう言い、ミアは銃口を下げた。


剛志は乾いた笑いを漏らし、彼女の化け物じみた実力の片鱗を理解する。


「……なるほど、やっぱりあなたの実力も化け物クラスですね」


岩石地帯に、再び静けさが戻った。


オーストラリアの代表は、ただの寡黙な女性ではない。


それはわかっていたはずなのに、実際に実力を見るとこうも驚かされるとは。


剛志自身、その化け物の仲間に片足を突っ込んではいる。なのにも関わらず、まだ一般人気分の抜け切らない彼に取って、こう言った人たちの関わっていくようになるのは、もしかしたら良いことなのかもしれない。


本作品を楽しんで頂きありがとうございます。

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