220話
何故今ラッサ将軍の名前が?そうこうしている内にワラワラと人が集まってきた。
「か、帰ってきたー!」
「殿下が魔物を捕らえたみたいだぞ」
一体どこから出て来たのか、兵士以外の人たちが口々に叫ぶ。
ドシン
青龍様が尻尾を振り下ろすと途端に静かになった。すかさずセラさんが皆んなの前に出て
「此方のお方はアリアステ様の使徒、青龍様です!そこ!石とか投げようとしないで!」
相変わらず市民との距離が近い次期宰相ね
「ナディア様のお連れになっているぷっぷ様の番であられる。皆、粗相なきよう計らってくれ」
ぷっぷちゃんが私の連れになり、公に様付けになり格上げされている!
シンと静まり返った広場は一気に蜂の巣をつついたような騒ぎになった
「えぇー!アリアステ様の使徒様って実在してたんだ!」
「初めてみたわ」
「ぷっぷ様の番って事はこれからもここにいてくれるのか!?」
「あの婚約者、初めてこの国の役に立ったな!」
うん?今最後に私の事を言ったのかしら?
「ただの疫病神じゃなかったんだな!」
「アタシはただのポンコツって聞いてたわ!」
「俺らシャナルが厄災を押し付けたんだと思って悪かったなー」
ひ、酷い…私はそんな風に思われていたの?
「ナディア、お主エラく嫌われておるな」
青龍様が同情の眼差しで私に言った
「わ、私だってここまで嫌われているとは…」
「ゴメン!ナディア様…実はディランがいなくなったのはナディア様がどこかに連れて行ったって噂がまことしやかに市民の間に流れてて…僕達が気付いた時にはもう…」
小声でセラさんが言った。なるほどね…全て私の仕業と言う事になっていると
「何故ですの?一体私が何をしたと?」
あぁ疲れているせいか、お腹が空いているせいなのか怒りが抑えられない
「い、いやナディア様は何も悪くないんだ。悪くないんだけど噂がさ、その、一人歩きって言うの?しちゃって…」
「セラさんは次期宰相なのだから情報を何とかしたり出来たのではないですか?ま・さ・か、また私の噂を放置したなんて事…」
「あっ、あっちでディランが手招きしている!ナディア様一緒に行きますよ!」
本当に呼んでいるの?凄くはぐらかされた感じがするのだけど。手招きされた方に向かうと殿下は私を引き寄せ
「皆の者、しばらく留守にして悪かった!色々とあったがナディアのおかげで無事戻る事ができた!そしてこのナディアのおかげで青龍様まで我がドレナバルに来ていただく事になった!」
うおおぉ〜
大歓声が巻き起こる
殿下、何だか私の名前を連呼し過ぎではないかしら?と思い見上げるとバチンと音がしそうなウィンクを返し、どうだ?この俺、凄いだろの笑顔
…え?一体何?
よくわからないまま私達はセラさんの誘導で仮設王宮に向かう事になった。
凄い…私達がマッサーラを彷徨っている間に、街中は石畳の広い道、両脇にはパン屋や宿屋などの店が出来上がっていた。
更に建物の間から見える石造の…水路?小さな舟が荷物を積んで行き来している。こんなに豊富な水は一体どこから引いているのかしら?川までは距離があったように思うのだけれど…
「どお?ここが一応メインの南大通りなんだけど、これと同じ規模の通りを東西にも造ったんだ。今のところ市民の居住は確保できてる」
セラさんが自慢気に言うと殿下は
「凄いな…旧王都に引けを取らないじゃないか。孤児達はどうしてる?」
「孤児院は今のところ3ヶ所用意していて…」
2人はそのまま街造りの話に入ってしまったけれど、本当に凄いわ。このような街は普通数十年単位でかかる筈なのに、魔法を使うとここまで早く造る事ができるのね。
殿下が遷都をすると言った時何を軽々とと思ったけれど、これなら納得してしまうわ。
そうこうしている内に高い塔が二つ目に入ってきた。
「凄いでしょ?アレ右側をリシャール殿が、左側をラッサ将軍と僕で造ったんだ」
「何であんな物を?」
いつの間にか街中の話を終えた2人が話しかけてきた
「王都なんだからシンボル的な何かが欲しいじゃないか。ナディア様も素敵だと思わない?」
微妙だわ…対になっているならともかく若干型の違う塔が二本建っている。良く見れば色も何だか違うし…
「あれさ、オベリスクって言って大昔のどっかの大国が、神殿とかに神様の象徴として建立したって聞いたら建てずにはいらんなかったって訳よ」
「意味がわからん」
同感だわ。でもきっと街もあんな風に造り上げてやる事がなくなっちゃったのかもしれない。
ここは大目にと言いかけて止まった
「これは…」
巨大なオベリスクの間にちんまりと佇む平屋建て
「王…宮、か?」
…これって私達がマッサーラへ行った時のままじゃなくて?
「王宮はさ、ディラン自分で建てたいかな?と思って」
「ふ、ふざけんなー!」
殿下の叫びと共に(仮)王宮の扉が開き、中から眼光鋭いお爺さんが2人出てきた。え?アレは…
「殿下?」
「あれ?ディラン?」
まさかリシャールさんとラッサ将軍?いやそれにしては老け過ぎている。お父さんかしら?
2人はものすごい勢いで走り出しこちらに向かってきた
「お前らリシャールとラッサか?ものすごい老けたみたいだけど、大丈夫か?」
「はぁ!?誰のせいだと思っているんだ!?」
声を上げたのは年をとったリシャールさん
「王都造り始めっから丸投げするつもりだったんじゃ…」
「まぁまぁまぁ…殿下が無事戻ってきて良かったじゃないですか。ナディア様もお元気そうだし」
相変わらず老けてもダンディなラッサ将軍は私に微笑みかけた
「ぷっ」
ぷっぷちゃんが声を上げると
「ぷっぷ様もお元気そうで良かった。あ、でも少し大きくなられましたね」
気の利くラッサ将軍はぷっぷちゃんにも挨拶をしてくれる
「ぷっぷ〜」
ラッサ将軍は相変わらずぷっぷちゃんと会話してるわと微笑ましく話しを聞いていたら
「貴様がラッサか…」
マッサーラよりも冷たい冷気が頭上から降りてきた。
青龍様?




