219話
結局グランゼン侯爵一行はアルバナール伯爵邸に行ったものの伯爵本人は不在で、マッサーラに行ったと言う噂を聞き行ってみたらドレナバルの皇太子と婚約者が罪人として連行されていたと。
そりゃあビックリもするわよね。
でもこれって誰かが裏で手を引いていると言うより、皆んな自分勝手に動いたような?兄様だって一応私の事を思っての行動だし。
ルールとか秩序とかモラルって大事よね
「ナディア様?難しい事はあまり考えない方が良いですよ。また発熱とかしますから」
「エアリー?それは一体どうゆう意味かしら?」
「意味も何も事実を…あっ!アイリスさん?大丈夫ですか?」
かろうじて座っていたアイリスさんの身体がグラリと揺れそのまま倒れてしまった。
狭い馬車内に隙間を作りアイリスさんを横たわらせる。意識はほとんど無いようで本当にこのまま死んでしまうのではないかと不安になってしまう。
エアリーと殿下が魔力を身体に巡らせているようだけど、得意ではない上にアイリスさんもそんな治療を受けた事がないせいか効果が全く見られない。
この人のせいで私はシャナルから出る羽目になったけれども、今となってはもしかしたら感謝するべき人かもしれない。色々な事を知る機会が増え、あの花畑男と一緒にならずに済んだのだのではないかしら?
助かってほしい。土気色になっている顔色を見ながらそんな事考えた。
「ナディア様、そろそろお時間ですよ」
またなのね。私は1時間に一度馬車を出て青龍様の首元までぷっぷちゃんを連れて行くと言う任務を課せられた。何故なら青龍様が駄々をこねたから。
青龍様はマッサーラを飛び立つ時に
「ナディアは我の首元にいるが良い」
「え?」
「さすれば我とぷっぷはずっと一緒にいられる」
本当に嫌だけれど、ドレナバルまで連れて行ってもらえる負目から頷き、飛び立った瞬間
「せせせせ青龍様ーー!こっ、このままでは、わ、私もぷっぷちゃんも凍死する前に、いい、息が出来ずに死んでしまいます!」
「何?…そうか、風圧か」
スッっと風がなくなりやっと普通に呼吸ができるようになった瞬間、猛烈な寒さが私達を襲ってきた。
「せせせせ青龍様ー!寒いーーー!」
「我が儘よのう」
絶対に我が儘なんかではない
「ぷっぷっぷっぷちゃんが凍死してしまいますよーー!」
「何だと!?」
ふと寒さも無くなった。青龍様の何らかの魔法で寒さも治った…治ったけれども…
「青龍様?ぷっぷちゃんがなんだかとても寂しそうですよ?」
「寂しい?我といるのにか?」
「ぷ?」
「青龍様、乙女心と言うのは女子同士が語り合う事が必要なのです。多分ぷっぷちゃんはエアリー達と語り合いたいのではないですか?」
「言葉が通じないのに?」
「大切なのは言葉ではなくその場の雰囲気とノリです。ぷっぷちゃんこのままその輪に入れなかったら…」
ぷっぷちゃんをダシに私の気持ちを語り皆んなと一緒にいたいと訴えた。
何故なら私達の後ろでは寒さを何とか防ぎながら荷物を固定し続ける兵士達の目が怖いのだもの。お前達だけズルいよな!と言う声が聞こえそう
「ふむ…ならば…」
と言う訳で1時間に一度ぷっぷちゃんを連れて青龍様の首元に来るならと言う条件付きで寝台馬車に乗る事を許されたのだ。青龍様って寂しがり屋の我が儘よね。
そんなこんなで夜通し青龍様は飛び続け、皆んなも一睡もせず荷物を守り続ける。気が付けば空は白々と明け始め星々が輝きを失い始めた頃
「見えたぞ!河だ!ハイドン…かもしれない!」
兵士の叫び声が聞こえた。
かもしれないって何かしら?
アイリスさんの側にいると言うコーデリアさんを残し全員馬車を出る。
キラキラと輝く朝日に目を眇めながら見た光景に全員頭の上に?マークが浮かんだ
「…違う河なんじゃないか?」
殿下が言った。ハイドン村の北側に流れるコルデン河は沢山の川が合流して、ハイドン村近くで大河になっている。形はそれっぽいけれど、それならばあの変な塔がある所がハイドン村と言う事になってしまう。
しばらく旋回していたら
「場所はここであろう。降りるぞ」
言うと同時に青龍様が急降下した。悲鳴も出ない程のスピードでこれは最早落下では?聞く暇もなくやや広めの場所に青龍様は着地した。
するとすぐさま周りから弓矢や大きな石が飛んできた。攻撃されている?止めないと!と思った瞬間大きな火の玉が飛んできた。
「ナディア!」
咄嗟に殿下が私を庇い手のひらで攻撃を跳ね返した。腰が抜けてへたり込んでいると
「「殿下ーー!!」」
魔力を跳ね返され攻撃をしていた兵士達が殿下に気がついた
「ふざけんな!ナディアに当たるとこだっただろ!?」
まぁ殿下、私の為にあんなに怒って…
「こっちのセリフだよ!朝っぱらから何で魔物に乗って来るんだよ!ビックリして攻撃しちゃっただろ!」
セラさんだわ。凄く凄く窶れているけれど元気そうね。
ドシンドシン
ハッ!青龍様、攻撃された挙句魔物呼ばわりされて凄く怒っている
「青龍様!彼らは何も知らずにウッカリ攻撃しちゃっただけです!悪気があった訳ではなくてですね、かっ、カッコ良い青龍様を表現する言葉を知らなかっただけなのです!」
「…そう、なのか?」
疑っている。凄く疑っている
「も、勿論です!ねっ?ぷっぷちゃん!」
「ぷ」
私が一生懸命取り繕っている間、殿下とグランゼン侯爵がセラさん達に説明をする
すぐにワラワラと他の兵士達もやって来て荷物を降ろすと同時にアイリスさんを運び出す。アイリスさんこれで助かるかしら?
「ところでナディアよ、ラッサとはどの男だ?」
え?




