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AIOライト  作者: 栗木下
7章:マイホーム

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398/621

398:72-8

本日は二話更新になります。

こちらは二話目です。

【AIOライト 72日目 07:15 (5/6・雨) 始まりの街・ヒタイ-ヘスペリデス】


「「「……」」」

 翌朝。

 食堂は奇妙な空気に包まれていた。

 だがそれも仕方がない事だろう。

 前日にヘスペリデスに居た面子だけでなく、GM謹製の大正感ある女中メイド服を身に付けたラードーンに、しれっと混ざってシアが作ったパイを食べているGMの姿があるのだから。

 と言うかGMよ、俺はともかくグランギニョルたちの前に姿を現してもいいのか?

 明らかにトラブルの種になるだろ。


「「「御馳走様でした」」」

 まあ、それでも朝食は進んでいき、無事に終わった。


「で、GMが居るのはこの際どうでもいいとして、その子は誰なの?ゾッタ兄」

「あ、見事に私がスルーされたのニャ」

 口火を切ったのはやはりというべきかグランギニョルだった。

 その視線はかなり鋭く、俺に隠し事の類を許す気は無いという意思が現れている。


「名前はラードーン。ヘスペリデスの管理用に今朝作ったホムンクルスだ」

 まあ、ある程度は話すべきだろう。

 と言う事で、リアフ・ラードーンと呼ばず、ラードーンと言う名前で俺は紹介。

 ラードーンも俺の言葉に合わせる形でゆっくりと礼をする。


「管理用ね。まあ、この規模の携帯工房ならそう言うのが必要になるのは分からなくはないわね」

「でもマスター。今マスターは私、ネクタール、ラードーンで三体召喚している事になりますよね。一度に二体まで召喚できるという縛りは……」

「それについては私が説明しましょう」

 シアの質問にGMが答える。

 で、それによれば携帯工房はある一定規模以上のサイズになると、工房整備用のホムンクルスを常駐させることが出来るようになるらしい。

 この常駐ホムンクルスは工房の外に出られない代わりに、工房が展開されていない時でも内部で活動し続ける事が出来るとの事だった。


「まあ、そんな常駐ホムンクルスが必要になる規模の工房が出てくるのはもう少し先だと私は予測していたのですが」

 で、説明が終わったところで何故かGMに睨まれた。

 まったく、管理用のホムンクルスを作れと言ったのはGMのくせに作ったら睨まれるとはいったいなんなんだ。

 後、視線に呪詛を混ぜて来るな、効かないがウザったい。


「ああうん、GMにとっても師匠は色々と想定外なんだね」

「まあ、ゾッタ兄だものね。この件だけはGMに同情するわ」

「マスター。やっぱり色々とやり過ぎなんじゃないですか?」

「ーーー……」

「キュッキュイ」

「カーカー」

 どうやらこの件について俺に味方は居ないらしい。

 何故か全員からジト目で見られているし、目が無いネクタールもやれやれと言った感じの色になっている。


「ところでマスター。作った経緯については分かりましたけど……大丈夫なんですか?」

「大丈夫って何が?」

「このヘスペリデスをラードーン一人で管理できるのかって事です。ヘスペリデスは広いなんてものじゃありませんよ」

「ああ、その事か」

 シアからの質問は実質的にラードーンの能力について、だな。

 まあ、ヘスペリデスの広さを考えたら、ラードーン一人で大丈夫なのか疑いたくなるのは分かる。

 が、その辺りは問題ない。


「ラードーン」

「分かりましたー」

 ラードーンが自分の影を二度ほど叩く。

 すると影の中から小さな……本体の四分の一程の大きさの各部がデフォルメされたラードーンが二体出て来て、部屋の外に駆け出していく。


「マスター今のは……」

「これがラードーンの能力。簡単に言ってしまえば、自分の複製品を生み出して、個別に活動させることが出来る。この能力があれば、一人でも問題なくヘスペリデスは管理できる」

「なるほど」

「ちなみにこんな能力を持っているからこそ、GMとしてラードーンはヘスペリデスの外に出せない仕様とさせていただきました。流石にゲームバランスが崩壊してしまいますから」

「ゲームバランスが崩壊って……ああ、そう言う事なのね」

「あー、もしかしなくてもそう言う事」

「マスター、本当にやりたい放題なんですね」

「……」

 なお、ラードーンが影から生み出せる複製品の総数は99体までである。

 これでゲームバランスが本当に崩壊するのかは分からないが……まあ、リアフ・ラードーンを『AIOライト』の中に入れる事は出来ないからな、丁度いい方便と言う事にしておこう。

 それと生み出されたラードーンの分身……敢えて呼ぶならミニラドンとでも言うべき存在だが、アレは見た目に反して呪詛の塊であり、何かしらの攻撃を受けて弾け飛んだ時には……まあ、相応の被害が周囲にもたらされる事になるだろう。

 尤も、その事に気づいているのはラードーン本人を除けば、俺とGMぐらいだろうが。


「じゃ、最後に僕から質問。ラードーンはどうして女中さんの姿なの?」

「GMの趣味だ」

「この和風屋敷で洋風メイド服とか有り得ないのニャ。ま、外には出せないし、これくらいの贈り物なら何の問題もないのニャ」

 シュヴァリエの質問についてはGMがふざけた口調かつ真剣な面持ちと言う珍しい姿を見せつつ答える。

 なお、ラードーンの容姿は青白い肌、濡れているような黒髪、鳶色の瞳で、胸は普通サイズ、身長はシアより少し小さい程度となっており、頭部には髪に紛れてほぼ見えないが、黒くて短い角が生えているようだ。

 で、格好については先述したようにGM謹製の大正感ある女中メイド服であり、基本的に和風であるヘスペリデスにはよく合うと同時に、GMにラードーンたちの居場所が分かるようにするための発信機も兼ねた服装となっている。


「さて、質問はこれくらいか?じゃ、最後に……ラードーン」

「はいー、ご主人様ー。私、ラードーンと申しますー。これからよろしくお願いしますねー」

「あ、はい、よろしくお願いします」

「よろしくね」

「そうね。よろしくだわ」

「ーーー」

「キュキュイ」

「カー」

 そうして最後にラードーンが少々間延びした口調と共に自己紹介と一礼をする事によって、この場はお開きとなった。

 うん、違和感を持たれる事は無かったようだし、上手くいったと思っていいだろう。

 これで安心して普通の『AIOライト』プレイが出来るな。

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