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AIOライト  作者: 栗木下
7章:マイホーム

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376:70-6

「……。まず第一に何で俺なんだ?」

 俺は精神強める銀鉱石から視線を外すと、グランギニョルとシュヴァリエの二人に目を向ける。

 状況から察するに、二人の戦闘レベルは30オーバー、だが錬金レベルは30に届いていないという状況なのだろう。

 そして、今後のメンテナンスは自分でやるにしても、今はまず攻略の為に戦闘能力を上げることを優先しているから、錬金レベルが30に到達してレア度:4の素材を扱えるプレイヤーに作成を依頼している。

 ここまではいい。

 だが、そこでどうして俺が選ばれるのかは分からない。


「簡単に言ってしまえば信用と信頼の問題ね」

「信用に信頼?」

「ええ、貴重な素材だもの。腕のいい悪い以前に、素材を渡しても大丈夫、私たちが望む物を作ってくれる、そう思える相手じゃないと話にならないわ」

「それでどうして俺になる?攻略組になら、俺よりも信用も信頼もおけて、錬金レベルが30を超えているプレイヤーだって居るだろ?」

「そうね。レベルについては居ない事もないわ」

 俺の言葉にグランギニョルは何故か皮肉めいた笑みを浮かべる。

 いやうん、本当に訳が分からない。

 と言うか、普通に考えて、グランギニョルたち攻略組なら自分たち専属の装備作成プレイヤーぐらい居てもおかしくないと思うのだが……違うのか?


「でもね。今言ったようにこれは信用と信頼の問題。周囲がどれほど大丈夫だと言っても、私の主観として駄目だと感じたら駄目なの」

「だとしてもそこで俺が出て来る理由には繋がると思えないんだが……」

「いいえ、ゾッタ兄なら大丈夫よ。これは私とシュヴァリエ、二人で揃った意見でもあるの。『ドウの地の最前線で通用する武器を他人に作ってもらうのなら、ゾッタ兄以外には居ない』ってね」

「……」

 主観……主観か。

 その言葉を使われてしまうと俺としてはもう何も言えなくはなるな。

 実際、信用できない相手が作った武器と信用できる相手が作った武器じゃ、思う存分振るえる分だけ後者の武器の方が強くなることは間違いないだろう。

 ただ……グランギニョルたちの言う信頼と言うのは、俺のタンクとしての信頼のような気がしなくともない。


「分かった。そこまで言うのなら、工房を作り終った後に作ってみてもいい」

「ありがとう。ゾッタ兄」

「ありがとう、師匠!」

 まあ、それでも信頼してもらっている事は確かだし、高レア度の素材を扱えるいい機会でもある。

 条件が噛み合うのであれば、受けてもいいだろう。


「ただし、幾つか条件付きだ」

「分かっているわ。対価とかそう言う話でしょ」

「ああそうだ」

 と言うわけで、俺はグランギニョルたちに幾つかの条件を提示する。

 簡潔にまとめるならば……


・失敗しても文句は言わない

・レア度:PMにはならない

・デザインについては自然に出来上がったものにしかならない


 と言う所だ。


「まあ当然の条件よね。こちらが作ってほしい物としては……」

 対するグランギニョルも、条件……と言うよりは依頼の詳細を口にする。

 こちらも簡潔にまとめるのであれば、


・グランギニョルは鎌を希望、サイズと重心はお任せ

・シュヴァリエは細剣を希望、サイズと重心については今使っているものと同じような感じで

・銀鉱石は可能ならば、俺の魔力でミスリル化した上で使って欲しい


 との事だった。

 まあ、これくらいならば問題はないだろう。


「それで対価だけれど……」

「ああ、それについてはちょっといいか?」

 で、装備作成の対価についてはちょっと思った事が有ったので、俺はそれを口にする。

 するとグランギニョルは少し微妙そうな表情になった上で口で開く。


「ゾッタ兄、それでいいの?」

「ああ問題ない」

「まあ、そんな物でいいなら、私たちとしては明々後日の準備ついでに集めて来るだけだけど……」

「いいんじゃない?師匠が自分でそれが良いって言っているわけだし」

 グランギニョルとしては金銭で簡単に片づけてしまった方が楽なのだろう。

 が、俺としてはこちらの対価の方が遥かに嬉しいものだ。

 正直、自分一人で集めるとなると、かなり面倒そうだしな。


「分かったわ。じゃあ、ゾッタ兄。アイテムを渡すから、トレード画面を開けて」

「分かった」

 何はともあれ交渉は成立した。

 と言うわけで、俺はグランギニョルとシュヴァリエの二人から、精神強める銀鉱石をそれぞれ四つずつ、合計八個受け取る。

 うん、これならば鉱石をミスリルにした後、インゴットに精製、そこから更に武器を作るという事が出来るな。


「ああそうだ。ゾッタ兄。ついでだから、未確認情報も一つ渡しておくわ」

「未確認情報?」

「未確認情報と言うよりは憶測と言った方が正しいかもしれないけどね」

 トレード終了後。

 グランギニョルは一つの情報……いや、憶測を俺にくれる。

 で、その憶測の内容だが……まあ簡単に言ってしまえば、特化型潰しの仕様が一つ明らかになったかもしれないという話だ。


「ふうん、レベル差が開きすぎると、先行している側が成長しなくなる……ね」

「ええ、実を言えば、これも今錬金専門のプレイヤーを頼れなくなっている理由でもあるのよ。まあ、ゾッタ兄にはあまり関係のない話だと思うけどね」

 その具体的な内容はこうだ。

 『AIOライト』のプレイヤーは全員戦闘レベルと錬金レベルを持っている。

 だが、この二つのうちどちらかに特化して成長させていると、だんだんと先行している側のレベルが上がり辛くなり、最終的には低い方のレベルを上げない限り、成長しなくなってしまう、という憶測だ。

 勿論、憶測は憶測であり、まだ誰かがそうであると実証できたわけでもない。

 が、現にどちらかに特化してきたプレイヤーは徐々に伸び悩み始めているし……あのGMならばこれくらいの仕様は仕込んでいてもおかしく無いと言う、嫌な信頼が有った。


「いや、参考になった。俺も最近少しだけ錬金レベルが上がり辛いように感じていたからな。気を付けさせてもらう」

「そう?参考になったのなら嬉しいわ」

 と言うかたぶん仕込んでいるだろう。

 戦闘レベルが低いという事は、素材が自然界にどういう状態で存在しているのかを知らないという事。

 錬金レベルが低いという事は、物事の裏側に潜んでいる何かを知る事が出来ないという事なのだから。

 そしてそれではたぶん……賢者の石には辿り着けない。

 ならば、そうならないようにするための仕込みくらいはしてあるだろう。


「で、ゾッタ兄はこれから工房を作るわけだけど……」

「ああそうだった。シア」

「何でしょうか?マスター」

「ちょっとレンタル部屋の方で錬金をしてくるから、終わるまでグランギニョルたちと一緒に居てくれ」

「分かりました。それじゃあ、マスターが造っている間に明々後日以降についての打ち合わせをギニョールたちとやっていますね」

「よろしく頼む」

「まあ、こういう話はゾッタ兄自身よりもシアとやった方がいいわよね」

「師匠だと途中で寝てるとかありそうだもんね」

 何にしてもこれで俺が直接するべき話は終わった。

 そして携帯錬金炉・ミデンは俺とネクタール、それにGM以外には見せられないものである。

 と言うわけで、一緒に居れば俺が離れても問題ないと言えるグランギニョルたちと一緒に居るようにシアに伝えると、ギルドのレンタル部屋へと向かった。

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