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本日は二話更新です。
こちらは二話目です。
「ハルウゥゥキイイィィ!」
「ちっ、凌ぐぞ!」
「『力を和らげよ』!」
アイテム使用不可とは、何と言う状態異常を。
俺は内心でそう思いつつ、接近してきた『防御する幻惑蟲の王』の鉤爪に対応するべく、重い八尺円棍を両手で持ち、受け流す。
「ゲエエェェニアアァァ!!」
「ネクタール!」
「ーーーーー!」
『防御する幻惑蟲の王』は前三対の脚を巧みに使って、鉤爪を連続で振るい続ける。
対するこちらはネクタールの槍を中心として『防御する幻惑蟲の王』の攻撃を防御し、八尺円棍でも可能な限り攻撃を逸らすようにして、被ダメージを抑えるように立ち回る。
それでも少しずつ少しずつダメージを受けて、雷撃によって最大値の半分以下になった俺のHPは30%を切ろうとする。
だが、此処は耐えどころ。
焦ってはいけない、逃げ回ろうとしてもいけない。
『防御する幻惑蟲の王』の攻撃を防御し続けて、状態異常:アムネジアが解除されるまで耐える。
それが正解である。
「ハルッハルッ!」
「すぅ……はぁ……」
「……」
それが分かっているからこそ、俺は『防御する幻惑蟲の王』の攻撃を受け続ける。
シアも『力を和らげよ』を使用してからは、じっと待機して状態異常:アムネジアが回復するのを待っている。
「今っ!」
そして状態異常:アムネジアが発生してから約30秒後。
状態異常:アムネジアが解除される。
「シアッ!ネクタール!」
「はい!解除されました!」
「ーーーーー!」
「ギニャ!?」
その瞬間、ネクタールはオトガナッツサーベルを取り出して『防御する幻惑蟲の王』の六本の脚全てを弾き飛ばして隙を作る。
それと同時に俺は八尺円棍をインベントリに戻しつつ、後方に跳躍、シアの視界内に入る。
で、このタイミングで俺はインベントリ内の要らないアイテムをネクタールに食わせることで回復力に変換、シアは緊急時用のリジェネメディパウダーを俺に投擲して回復。
高まった回復力と回復アイテムの合わせ技によって、俺のHPは一気に全回復する。
「ハルウゥゥキイイィィ……」
距離が出来た事で『防御する幻惑蟲の王』が雷撃の体勢に入る。
その姿は直視することも難しい程に輝いており、電気が限界までチャージされた状態から放たれる雷撃は、放たれる前から既に俺のHPをゼロに出来るだけの威力を秘めていると理解できるものだった。
「すぅ……」
だがその姿は隙だらけでもあった。
だから俺は『防御する幻惑蟲の王』に向かって駆け出す。
『防御する幻惑蟲の王』を直視して、ほんの僅かな変化すらも見逃さないように睨み付ける。
「ゲニャ……」
『防御する幻惑蟲の王』の背中の棘から上空の雨雲に向かって雷撃が放たれる。
そして雷撃は目標に向けて、逐一軌道を変化させながら落ちてくる。
これは俺と『防御する幻惑蟲の王』の間に距離が存在する為に必要となる手順なのだろう。
「はぁ……」
目標決定から着弾までは雷撃の見た目に相応しく、一秒も存在しないだろう。
目標決定前に俺の姿が見えなくなってしまえば、雷撃はシアに向かうだろう。
裏を返せば、目標決定から着弾までの間に俺の姿が消えてしまえば、雷撃は正確に俺の居る場所に向けて落ちることが出来なくなる。
だから俺はその一瞬を見定めて……
「アアアァァァ!」
「ネクタール」
ネクタールの能力を使って姿を消す。
「さあ……」
結果は?
直撃はしなかった。
雷撃は俺の背後の地面に落ち、周囲に衝撃波と礫をバラ撒いた。
受けたダメージは10%程で、状態異常はなし。
「ハル……」
俺は雷撃を放った事で背中の電光を無くし、隙も晒した『防御する幻惑蟲の王』に接近する。
「行くぞ」
「キ!?」
そして『防御する幻惑蟲の王』の前で姿を現すと、両手で斧を持ち、横に回転して斧に勢いを乗せる。
その状態で斧を八尺円棍に変更、インベントリから取り出した一里吼札を発動、五寸鬼瓦を含む三つのレア度:PMのアイテムの効果を用いて魔力を生成、八尺円棍の先端に斧の刃の形で魔力を集中させる。
「『フォボス』!」
「ゲニャアァ!?」
そうして準備が整ったタイミングで八尺円棍を振り抜き、『防御する幻惑蟲の王』の首に深い傷跡を造り出し、大量の赤い光と共に『防御する幻惑蟲の王』のHPバーを一気に残り30%近くにまで持っていく。
同時に反動で俺のHPも60%近くまで減少、『防御する幻惑蟲の王』の背中の電光も一瞬にして最大状態になる。
「ゲニャ……!」
大きくHPを減らした『防御する幻惑蟲の王』は即座に雷撃を放とうとする。
先程とは違い、直接俺に向けて叩き込む構えを見せている。
「『守護を与えん』!」
だが雷撃が放たれる直前、シアの『守護を与えん』によって、俺の前にとても濃い水色の障壁が現れる。
それはシアが全力を込めて生み出した守りである。
「アアアァァァ!」
『防御する幻惑蟲の王』の雷撃とシアの守りがぶつかり合う。
勿論、ボスの最大攻撃と個人の守り、どちらが強いかなど決まっている。
着弾すると同時に殆ど抵抗なく守りは突破され、俺の身体に雷撃が襲い掛かる。
そして雷撃の中で……
「はははっ!」
俺は笑う。
「ははははは!」
己を奮い立たせるために笑う。
「ッツ!?」
笑いながら八尺円棍を振るった勢いを殺さないまま回転し、インベントリから取り出した二枚目の一里吼札を破り捨てて、周囲に俺の魔力をバラ撒き、ヘイトを高め、高まったヘイトを俺の魔力に変換して斧の刃にする。
「ハハハハハッ!サア行クゾ……」
だがこれだけでは足りない。
『防御する幻惑蟲の王』のHPバーを削り切る事は出来ない。
だから見る。
『防御する幻惑蟲の王』の死への繋がりを、最も危険で危機に繋がっている未来を、そこに待ち構えるアレを。
見出して、斧の刃をより鋭く、重く、『防御する幻惑蟲の王』をアレに至らせるに相応しい形にする。
「『フォボス』!」
「ーーー!?」
そうして周囲の空間ごと吹き飛ばすような勢いでもって振り抜く。
振り抜いて『防御する幻惑蟲の王』のHPバーを抉り取り、大きく吹き飛ばす。
それと同時に雷撃のダメージと『フォボス』の反動で、俺のHPバーも減っていく。
「ハル……」
「はぁはぁ……」
そして『防御する幻惑蟲の王』と俺のHPバーは減り続け……お互い、ほんの僅かに残る。
「キゲ……」
「マス……」
「間に……」
俺はインベントリに在った物を適当に取り出すと、『防御する幻惑蟲の王』に向かって投げつける。
投げつけたそれはヌル・オトガナッツサーベルだった。
投げつけられたヌル・オトガナッツサーベルは、不思議な事に赤黒い魔力を大量に纏っており、この風雨の中だというのに、真っ直ぐに、まるで最初からそう飛ぶことが定められていたかのように綺麗に飛んでいく。
「ニ……」
「合え!」
そして『防御する幻惑蟲の王』が雷撃を放とうとする直前。
「ニャア!?」
『防御する幻惑蟲の王』の額にヌル・オトガナッツサーベルは刃の根本まで入るほどに深く突き刺さり、そのHPバーをゼロにする。
それと同時に『防御する幻惑蟲の王』の背中の棘に貯まっていた電気はあらぬ方向に放たれ、そのまま霧散した。
05/21誤字訂正




