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本日は二話更新です。
こちらは一話目です。
【AIOライト 70日目 07:31 (半月・雨) 『防御する天空の農場』】
「ハルゥ!」
「ぐっ……」
戦闘開始からおおよそ三十分。
状況は少しずつ進んできている。
「うらぁ!」
「ギニャ!?」
基本の戦術は『防御する幻惑蟲の王』の攻撃を防いでから、投擲攻撃からの直接攻撃で自動反撃を防ぎつつダメージを与えるというもの。
これで現状は戦線を維持できていて、俺のHPバーは80%前後を行き来し、『防御する幻惑蟲の王』のHPバーは少しずつ減っていて、現在はおおよそ最大値の60%と言う所である。
「『癒しをもたらせ』!」
「助かる!」
「ハルキゲェ!」
「おっと」
と、ここでシアの『癒しをもたらせ』が俺に当たって、回復力が強化される。
『防御する幻惑蟲の王』の攻撃も飛んでくるが、これは斧で防ぐことに成功する。
これでまた暫くは大丈夫だろう。
「投擲行くぞ!」
「ーーーーー!」
さて、こうやって戦っている間に『防御する幻惑蟲の王』について幾つか分かった事がある。
まずは自動反撃及び雷撃の使用条件。
「ゲニャア!」
「ぐっ……だがそれならそれで!」
『防御する幻惑蟲の王』の特性:オトガによる自動反撃は、背中の棘に電気が貯まっていなければ使えない。
それは既に分かっている。
だがこの電気の放電による反撃、実は大きな穴があり、自発的な放電……つまりは雷撃を行うためにも電気を貯める必要があり、自動反撃をしてしまうと、そのチャージまで発散されてしまうのである。
そして、電気が貯まっていない状態での雷撃は、避けることこそ難しくとも、ダメージは俺のHPバーを2%削るかどうかの威力に一瞬の硬直をもたらすだけ。
そう分かっていれば出来る行動もある。
「うらぁ!」
「ーーーーー!」
「ギニャ!?」
だから俺は投擲による攻撃を取りやめて『防御する幻惑蟲の王』に接近すると、ネクタールと同時に武器を振るい、『防御する幻惑蟲の王』のHPバーを3%ほど削る。
『防御する幻惑蟲の王』の背中の棘に電気が貯まるが、これは取りやめた投擲で発散させればいい。
「ふんっ!おらっ!」
「ハルッ!?」
なので俺は斜め後ろに飛び退きつつカースチャクラムを投擲する。
だが、投げる直前に『防御する幻惑蟲の王』をしっかりと見つめてしまったためか、状態異常:パニックが発動し、チャクラムはあらぬ方向に飛んでいてしまう。
だから俺は即座に二つ目のチャクラムを投擲し、無理矢理にでも『防御する幻惑蟲の王』の電気を消費させる。
「ハルウゥゥ……」
「ふううぅぅ……」
「『大地の恩寵をその身に』!」
俺と『防御する幻惑蟲の王』は睨み合い、俺の背後からはシアが支援の魔法を正確にかける。
そう、分かった事と言えば状態異常:パニックの発生条件についても分かった。
発生条件は『防御する幻惑蟲の王』の姿を認識する事。
時間なのか確率なのかまでは分からないが、そこまでは確実である。
だから『防御する幻惑蟲の王』に肉薄して戦う俺とネクタールには時折状態異常:パニックが発生しているが、位置の関係で俺の出す特性:バーサークのオーラと『防御する幻惑蟲の王』の出す電気しか見えていないシアには戦闘開始から今まで一度も状態異常:パニックは発生していない。
「ハルキィ!」
「喰らうか!」
「ゲニャア!」
「甘い!」
『防御する幻惑蟲の王』は格上である。
それは間違いない。
だが特性:オトガを逆に利用し、雨と言う天候の助けもあって、今の俺たちは戦えているし、このまま行けば削り切れるはずである。
しかし、懸念もある。
「とうて……」
「ゲニャアァァ!」
「ぐぎっ……!?」
それは『防御する幻惑蟲の王』がこちらの攻撃を学びつつあるという事。
現に今も、投擲攻撃をしようとした俺に先んじて雷撃を放つ事で、こちらの狙い通りに事が運ばないようしてきている。
シアにヘイトを向ける余裕は与えていないが、それも何時まで持つかどうかと言う気配がある。
「うおらぁ!」
「ーーー!」
「ギニャ!?」
だが先ほども言ったように、それならそれでこちらも相手の攻撃に合わせて対応するのみ。
俺はネクタールに持たせた槍を投擲し、投擲した槍が『防御する幻惑蟲の王』に刺さったところで、槍を伝って『防御する幻惑蟲の王』に密着したネクタールがさらに槍を突き出す。
そうすることで、『防御する幻惑蟲の王』のHPバーを2%ほど削りつつ、大きく怯ませる。
「ふんっ!」
「ハルッ!?」
此処が攻めどころ。
そう判断した俺は斜め前に飛び出しつつリジェネミスリルクリスを投擲。
俺の横の空間を自動反撃の雷撃が飛んでいくのを確認した上でさらに接近。
「うおらぁ!」
「ゲ……ニャ!?」
斧を振る途中で八尺円棍に変更しつつ攻撃。
金属に似た音を響かせつつ、『防御する幻惑蟲の王』のHPバーを最大値の半分以下にまで減らしつつ、更に怯ませる。
「よし、このまま……」
このまま一気に攻めて、大ダメージを狙う。
俺がそう思った瞬間だった。
「ハルキニャアアアァァァァ!!」
『防御する幻惑蟲の王』が大量の電光を発しながら叫び声を上げる。
「っつ!?」
「ーーーーー!?」
俺とネクタールの身体を無数の雷光が襲い、一気に80%以上あったHPバーが50%以下になると同時に、状態異常:パニック、パライズ、そしてアムネジアと言う見知らぬ状態異常が表示される。
「キャア!?」
そして雷撃は離れた場所に居たはずのシアも襲い、俺たちのものよりも少なめのダメージと同様の状態異常が付与される。
「ハルウウゥゥゥ……」
「ぐっ……」
何が起きたのか。
それは目の前で大量の稲光を纏い、七対の脚を巧みに使いながらゆっくりとこちらに近づいてきている『防御する幻惑蟲の王』の姿とHPバーを見れば分かった。
恐らくはHPが最大値の50%を切った事に伴う特殊行動。
その内容は電気を限界までチャージしつつ、広範囲に対して行う攻撃。
流石はレア度:3の自動生成ダンジョンのボスと言う他ない。
今までのボスとは段違いである。
「まずは自動反撃を撃たせ……」
だがそれでも壊滅はしなかった。
だから俺は3秒ほど経過して状態異常:パライズが解除されるのと同時に、『防御する幻惑蟲の王』の貯めた電気を放出させるべく、インベントリからチャクラムを取り出そうとした。
「っつ!?」
しかしチャクラムは取り出せなかった。
それどころか、八尺円棍を斧に戻す事も出来なかった。
そう、状態異常:アムネジアの効果はアイテムの……より正確に言えばインベントリの使用不可。
それは『AIOライト』において、最も危険な状態異常と言える状態異常だった。




