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AIOライト  作者: 栗木下
7章:マイホーム

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371/621

371:70-1-D19

本日は二話更新になります。

こちらは二話目です。

【AIOライト 70日目 07:00 (半月・雨) 『防御する天空の農場』】


「よし、行くぞ」

「はい、マスター」

「ーーー!」

 翌朝。

 朝食を食べた俺たちは準備を整えると、白い靄の境界を越えてボス部屋に突入した。


「まずは岬を急いで抜けるぞ」

「はいっ!」

 雨は普段よりも激しく降っており、夜のような視界の中では『防御する幻惑蟲の王』の姿は勿論の事、昨日は部屋の入り口から見えていた木の姿すらも見えない。

 風も強く吹いていて、油断すれば身体が煽られそうなほどだった。

 だから俺もシアも岬部分を駆け抜けて、浮島の範囲に急いで入る。


「ハルウウゥゥ……」

 俺たちの存在に気付いたのだろう。

 雨のカーテンの向こうから『防御する幻惑蟲の王』の声が聞こえ始める。


「支援を開始します!『癒しをもたらせ』『大地の恩寵をその身に』!」

「ネクタール!」

「ーーーーー!」

 それを受けて、シアがその場で足を止め、状態異常:パニックが罹っていない事を確認した上で俺に魔法をかけ始める。

 ネクタールもヘイトコントロールを開始し、『防御する幻惑蟲の王』の注意を俺に向け、攻撃の矛先がシアに向かないようにする。

 そして、二人の支援と同時に、俺も特性:バーサークを発動させつつ、インベントリから一つのアイテムを取り出す。


「ふんっ!」

 アイテムの名前はリジェネチャクラム、特性はリジェネとバーサーク。

 俺は取り出したそれを走りながら、声の出元に向けて勢いよく投擲する。


「キギャ!?」

 どうやらリジェネチャクラムが命中したらしい。

 『防御する幻惑蟲の王』の鳴き声が聞こえると共に、HPバーが表示され、それに合わせるように電光も発せられ始める。

 だが、反撃が飛んでくるような事はない。


「もう一発!」

「ギニャ!?」

 続けて俺はカースチャクラム、特性はカースとハイドが入ったそれを走りながら投擲する。

 こちらも命中。

 先程の一撃と合わせて、『防御する幻惑蟲の王』のHPバーがほんの僅かにだが減る。

 それと同時に特性:オトガが反応したのか、『防御する幻惑蟲の王』の背中から電撃が放たれる。

 が、これは距離があるためなのか俺の下にまで辿り着かず、途中で霧散。

 これに伴って『防御する幻惑蟲の王』の背中の棘の電光も治まる。


「見えた!くら……っつ!?」

 と、此処で俺の視界に『防御する幻惑蟲の王』の姿が見えてくる。

 なので俺はインベントリから取り出したリジェネミスリルクリスを投擲する。

 が、投げ切る瞬間に状態異常:パニックが表示され、狙いを乱されたリジェネミスリルクリスは暗闇の向こうへと消え去っていく。


「だがまあいい。距離は詰められた」

 俺は状態異常:パニックが治るまでの時間を利用して、斧と五寸鬼瓦を構える。

 『防御する幻惑蟲の王』にあの雷撃を使ってくる気配はない。

 俺と『防御する幻惑蟲の王』の間にある距離はほんの数メートルで、こちらは何時でも動ける体勢。

 この状況ならば、隙の大きい雷撃を使う暇は恐らくないだろう。


「ハルキイイィィ!」

「うおっ!」

 そんな俺の考えを察してかは分からないが、『防御する幻惑蟲の王』が背中の棘に電光を帯びつつ、俺に向かって駆け寄り、鞭のようにしならせた頭で噛み付こうとしてくる。

 対する俺は昨日と同じように、五寸鬼瓦でそれを弾き、防御。

 同時に『防御する幻惑蟲の王』を攻撃できるだけの隙を造り出す。


「ふんっ!」

 だが、ここで斧を振るって直接攻撃したら、昨日と同じである。

 だから俺は斜め後ろに飛び退きつつ、インベントリから取り出したバーサークチャクラムを投擲。

 特性:バーサークによって他のチャクラムよりも大きなダメージを与えつつ、特性:カースの効果によって状態異常:カースを付与する。


「ギニャ!?」

「よしっ」

 そして特性:オトガによる自動反撃の雷撃は、俺の真横を通り抜けていく。

 『防御する幻惑蟲の王』の背中の棘から出ていた電光もなくなる。

 この時点で俺は理解する。

 『防御する幻惑蟲の王』の特性:オトガによる自動反撃には幾つかの法則がある。

 その法則の一つは、攻撃した時点で攻撃者が居る場所に向けて雷撃は放たれると言う事。

 もう一つは、自動反撃を行うためには『防御する幻惑蟲の王』の背中の棘に電気を貯める必要があり、電気を貯める為には『防御する幻惑蟲の王』が被弾するか行動する必要があると言う事。

 もしかしたら他にも細かい条件があるのかもしれないが、少なくともこの二つについては確実だった。


「つまり今っ!」

「ギャアァァ!?」

 故に俺は『防御する幻惑蟲の王』に接近し、駆け寄る勢いも利用して全力の一撃を叩き込んだ。

 それだけで『防御する幻惑蟲の王』のHPバーが2%ほど削れると共によろめく。

 そして俺の予想通り、『防御する幻惑蟲の王』の背中の棘に電光が灯る事はあっても、反撃が飛んでくる事はなかった。


「これならいけ……っ!?」

「ハルキイイィィ!」

 これならいける。

 そう思った俺は投擲による攻撃を行おうと、『防御する幻惑蟲の王』から少しだけ離れようとする。

 だがその瞬間に、状態異常:パニックが発生。

 俺は少しだけ身体をよろめかせる。

 それに合わせるように、よろめきから立ち直った『防御する幻惑蟲の王』が鉤爪を振るい、俺のHPを一気に10%ほど削ってくる。


「マスター!」

「大丈夫だ!直ぐに治る!」

「ハルッ!ハルッ!」

 正に油断大敵と言うべきか。

 考えるまでもなく当たり前の事だった。

 『防御する幻惑蟲の王』のレベルは30で、しかも今明らかになったのは自動反撃の部分だけ、状態異常:パニックの付与条件については依然分からないままなのだ。

 一瞬でも油断すれば、そのまま戦闘不能にまで持って行かれかねない。

 改めてそう認識すると、状態異常:パニックが治った俺は『防御する幻惑蟲の王』の鉤爪による連続攻撃を捌きつつ、緩んだ自分の緊張感をしっかりと締め直す。


「相手は格上。一瞬の油断が命取り。奥の手だって絶対にある。倒すその時まで……絶対に気を抜くなっ!」

「ーーーーー!!」

「ギニャ!?」

 そして再び投擲によって自動反撃を無駄打ちさせつつ、ネクタールと共に攻撃を仕掛けた。

05/20 誤字訂正

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