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AIOライト  作者: 栗木下
7章:マイホーム

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368/621

368:69-6-D16

「ゲニャア!」

「ふんっ!」

 駆け寄ってきた『防御する幻惑蟲の王』は首を振って反動をつけると、鞭のようにしならせた頭で俺に噛み付こうとしてくる。

 対する俺は五寸鬼瓦で迎撃、『防御する幻惑蟲の王』の頭を弾く。

 彼我のダメージは『防御する幻惑蟲の王』はHPバーに変化が見えないレベルで、俺の方も2%以下、直ぐに回復するレベルである。


「おらぁ!」

「ハルッ!?」

 俺は斧で『防御する幻惑蟲の王』の胴体を切りつける。

 与えたダメージは最大HPの2%程度、少なく見えるが、俺が普通に殴ってこのダメージと言う事は、『防御する幻惑蟲の王』はその見た目通りに防御力が低いらしい。

 では、特性:オトガによる行動は?

 俺がそこまで考えた時だった。


「ゲニャ!」

「いっ!?」

「ーーー!?」

「マスター!?」

 全身に電気が走った。

 比喩でもなんでもなく文字通りの意味で。

 『防御する幻惑蟲の王』の背中の棘から放たれた雷が、俺の身体を打ち据えていた。

 受けたダメージは俺の最大HPの5%程。

 だが、電撃による痺れの為なのか、俺の身体は完全に硬直していた。


「ハルキイ……」

 『防御する幻惑蟲の王』が後ろ四対の脚で体を支える形で上半身を持ち上げ、前三対の脚に付いている鉤爪を俺に向かって振り下ろそうとする。


「させません!『ブート』!」

 俺が動けない事を察したシアが、『ブート』による攻撃で『防御する幻惑蟲の王』の動きを遅らせようとする。

 だがシアの杖から放たれた魔法弾は……


「ぐっ!?」

「ーー!?」

「えっ!?」

 何故か俺の背中を直撃。

 俺のHPバーを削ると同時に、拘束を長引かせていた。


「ギニャ!」

「ぬぐっ!?」

 そして当然のように『防御する幻惑蟲の王』の鉤爪は俺に直撃。

 俺の残りHPを一気に削り取り、残りは60%ほどになる。

 この時点で俺は撤退するべきだと判断した。


「シア!退くぞ!」

「は、はい!」

 何故ならば、シアは『防御する幻惑蟲の王』の攻撃を受けていないどころか、注意を向けられてすらいない。

 にも関わらず今のシアには一つの状態異常が発生していた。

 その名はパニック、精神系の状態異常で、何かしらの行動をする際に一定の確率で誤作動を起こす事になるという状態異常である。

 何時、何故シアに状態異常:パニックが付与されたのかは分からない。

 分からないが、これだけでも『防御する幻惑蟲の王』は対策が必須のボスであると俺に認識させるのには十分だった。


「ハルキイィィ!」

「喰らうか!」

「ーーー!」

 『防御する幻惑蟲の王』が再び鉤爪を振るう。

 それを俺とネクタールは斧と槍でガードして、ダメージを抑える。

 その間に、シアは微妙にふらついた足取りで岬を戻っていく。


「ゲニャア!」

「ふぐっ!?」

 そして俺も退こうとするが、『防御する幻惑蟲の王』が頭を振って噛み付いてくる。

 俺はそれを五寸鬼瓦で防ごうとするが、僅かに狙いが逸れ、直撃を喰らってしまう。

 これで俺の残りHPは50%を切る。

 狙いが逸れた理由は……ほんの一瞬だがステータス画面に表示された状態異常:パニックだろう。

 本当に何時の間にと言う感じである。

 明らかに『防御する幻惑蟲の王』の鉤爪を受けた事以外に原因があるタイミングで表示された。


「くそっ、何なんだコイツは」

「ハルッ!ハルッ!ハルウゥキイイィィ!!」

 だがそれでも俺は少しずつ後退。

 岬の部分にまで辿り着く。


「ハルッ……ッ!?」

「はぁはぁ、なるほどな」

 すると、それまでは積極的に前進し、鉤爪を振るってきた『防御する幻惑蟲の王』の攻撃が止み、こちらの事をじっくりと見つめ始める。

 どうやら落下死を警戒してか、『防御する幻惑蟲の王』が岬にまで踏み込んでくる事はないらしい。

 だから俺は慎重に、状態異常:パニックが時折表示されては直ぐに消えるのを確認しつつ、岬の上を農機具小屋に向かって後退していく。


「ハルウウウゥゥゥ……」

「ヤバいな……」

 そんな俺の前で『防御する幻惑蟲の王』が唸り声のような物を上げる。

 すると『防御する幻惑蟲の王』の背中の棘に集まっている電気の光量と火花の散り方が、目に見えて増していく。

 誰がどう見ても、『防御する幻惑蟲の王』は充電をしている。

 そしてこんな状況で充電をするとなれば……


「ゲニャアアアアァァァァ!?」

 『防御する幻惑蟲の王』の背中が光り輝き、天に向かって光の柱が立ち昇る。


「いぎっ!?」

「ーーー!?」

「マスタアアァァァ!」

 次の瞬間。

 俺とネクタールの全身は光の柱に包まれ、全身を電気が駆け巡り、激しく痙攣をする。

 それと同時に俺のHPは大きく減り、一気に残り20%以下にまで削られる。

 そこまで来て、俺の脳は『防御する幻惑蟲の王』が雷を放ったのだと、理解する事が出来た。


「ハルウウゥゥゥ……」

「ぐっ……」

 そして俺の硬直が解けた時。

 既に『防御する幻惑蟲の王』は次の雷の準備を始めていた。

 農機具小屋までの距離は後3メートルほど。

 『防御する幻惑蟲の王』が再び雷を放ち、俺を殺すには十分すぎる距離だった。


「マスター走ってください!」

「分かった!」

 もはや一刻の猶予もなかった。

 俺は『防御する幻惑蟲の王』に背を向けて、全力で走る。

 幸いな事に、状態異常:パニックが付与される事は無かった。


「ギニャアアアァァァ!!」

 だが、農機具小屋に辿り着くよりも一瞬早く『防御する幻惑蟲の王』の咆哮が響き渡る。


「くそっ……」

 そして天から雷が落ちる瞬間。


「『守護を与えん』!!」

「ぐぎっ……」

 シアの『守護を与えん』が発動し、俺の周囲に水色の障壁が現れる。

 その障壁は俺の残りHPを削り切るはずだった『防御する幻惑蟲の王』雷の威力を大きく減少させ、俺の残りHPを最大値の5%程だが残す事に成功する。


「はぁはぁ……助……かった」

「逃げ……られ……ましたね」

「ーーーーー……ーーー……」

 直後、俺たちは農機具小屋の中に入り、ボス部屋から撤退することにも成功したのだった。

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