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【AIOライト 69日目 16:37 (2/6・晴れ) 『防御する天空の農場』】
「リザアアァァ……」
「ふぅ、終わったか」
昼食を挟んで探索を続けること五時間、戦闘を行うこと数回。
俺たちは辿り着いた農機具小屋の前で屯していたオトガリザードマンたちを無事に倒した。
「お疲れ様です。マスター」
「シアも支援ありがとうな」
そして剥ぎ取りを終え、俺たちは農機具小屋の中に入る。
「無事に発見か」
「ですね」
農機具小屋の中には下り階段があった。
『防御する天空の農場』の階層は5、俺たちが今居るのは第四階層。
つまり、この先にはボスが待っている事になる。
「とりあえず下に降りよう。ボスの扉の前の方が何かと安全だからな」
「分かりました。マスター」
そうして俺たちは階段を下り、第五階層に降りて行く。
「さて……」
第五階層の最初の部屋は、先程の第四階層と同じ農機具小屋。
ただし、窓は無く、外に繋がる扉はボス部屋仕様の見るからに頑丈そうな鎖と錠前が付いた物である。
「ネクタール」
「ーーーーー」
俺は念のためにボス部屋の扉以外のすべての場所にネクタールを這わせ、この部屋の中に何も潜んでいない事を確かめる。
それから階段の周囲を完全に覆うようにネクタールを展開することで、何者かが第五階層に飛び込んでくる事が出来ないようにする。
少々過剰な警戒かもしれないが……まあ、念のためにと言う奴だ。
「マスター。これからどうしますか?」
「そうだな……とりあえず装備品の修復だけしておいて……ボスの姿だけは夕食前に確認しておきたいな」
「分かりました。それじゃあ、修理の方よろしくお願いします」
「ああ、任せておけ」
俺は普通の携帯錬金炉を取り出すと、それぞれの装備品の中でも特に耐久度の減りが激しかった物を修理していく。
これで、ボス戦の途中で装備が壊れることはないだろう。
「HP、MP、ステータス、装備、いずれも問題なし、と」
「私も大丈夫です」
「ーーーーー!」
そして十分に休憩を挟んだ俺たちは、ボス部屋の扉に触れた。
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【AIOライト 69日目 17:32 (2/6・晴れ) 『防御する天空の農場』】
「「「……」」」
扉の先の風景は、『防御する天空の農場』全体で見てもなお幻想的な風景だった。
夕陽に照らされた空は何処までも赤く、何処までも続いているようだった。
少し強めの風によって眼下を素早く流れる雲海は、赤くあると同時に、明日の天気を予言するかのように黒ずんでもいた。
空気は少し薄く、風は冷たかった。
俺たちが今居る浮島以外に島は無く、この浮島も直径100メートルあるかどうかという小島であり、俺たちが出てきた農機具小屋は島の本体から数メートルだけ飛び出した岬の先端に建てられているようだった。
「少し……寂しい感じがしますね」
「そうだな。まるで何も無い」
浮島には一本の木が生えている他には、足首くらいの丈の草が生えているだけで、他には何も無かった。
それはつまり小細工をする隙間もないという事だが……夕陽も相まってシアはまず寂しさを感じたようだった。
「少し前に出るぞ」
「はい、マスター」
俺たちは岬の部分から、島本体の部分へと歩いていく。
すると、島に一本だけ生えている木の根本に何かしらの生物が寝そべっているのが見えてくる。
そして、俺たちが自身の存在に気付いたことに、向こうも気づいたのだろう。
その生物はゆっくりと立ち上がる。
「ハアアァァァ……」
「「「……」」」
その生物はとても奇妙な形状をしていた。
俺もシアもネクタールすらも一瞬思考を止めてしまう程度には。
「ルキィ……」
背中には二列に並んだ棘が無数に生えており、帯電しているのか、時折ではあるが青白い火花を放っている。
頭と思しき部分には、つぶらな瞳とワーム種の物に似た口が付いている。
尾は短く、毛のような物はなく、肌の色は赤みがかっていると同時に、粘液によって夕陽を反射している。
脚は七対で、モチーフ通りならば足の先には鉤爪が付いているはずである。
「ハアアァァァ……」
「あの、マスター。あれって……」
「一応、現実にも居た生物だ。だから、GMがモチーフに使っても何もおかしくはない」
俺の脳裏に一つの名前が浮かぶ。
その名はハルキゲニア、大昔の地球に生息していた生物であり、化石が発見された当初は上下が逆だったとか、前後が逆だったとか、とにかく研究者を困惑させた逸話を数多く持っている生物である。
「ルキィィィ……」
「そうなんですか。でもマスター」
おかしくはないが……
「ゲニアアアァァァ!!」
「あんなのでは無いですよね」
「断じて違うな」
間違っても体高が2メートル近く、体長が3メートルを超えるような巨大生物ではないし、背中の棘から大量の雷を放出するような危険生物ではないはずである。
「ハルキイイィィ!」
「来るぞ!まずは日暮れ近くまで戦ってみる!」
「分かりました。支援します!」
だが、現実との差異など気にするだけ無駄と言う物だろう。
ここは『AIOライト』の中なのだから。
そして七対の脚を巧みに使って馬並みのスピードで駆け、奇声を上げつつこちらに迫ってきているのはハルキゲニアではなく、『防御する幻惑蟲の王』Lv.30と言う、確実に強敵だと言えるモンスターなのだから。
05/18 誤字訂正




