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「アグラッ!」
「ふんっ!」
オトガアングラーが牙を剥き出しにした状態で突進してくる。
対するこちらは最初と同じように武器を構え、真正面から受け止めて勢いを殺す。
「おらぁ!」
「アグッ!?」
俺はオトガアングラーの勢いが完全に死んだところで勢いよく弾き、仰け反らせる。
そして見えたのは白い、見るからに柔らかそうな腹の部分だ。
「ネクタール!」
「ーーー!」
「ア!?」
ネクタールが三本の槍を突き出し、オトガアングラーにダメージを与えると共に仰け反りをほんの僅かにだが長くさせる。
「『ブート』!」
「グラ!?」
続けてシアが『ブート』によって攻撃し、ダメージと怯みをさらに加える。
「うおらぁ!」
「ラアァァ!?」
最後にオトガアングラーを弾いた勢いから復帰した俺が斧を振り下ろし、五寸鬼瓦による裏拳も叩き込み、オトガアングラーを大きく後退させる。
「ア、ア……」
今の一連の流れで与えたダメージはオトガアングラーの最大HPの5%から10%と言う所。
手ごたえからして、特性:オトガによる自動防御込みでも堅いという感じはしない。
つまり、この与えたダメージが少なく感じるのは、オトガアングラーのHPがその見た目通りに多いからという事になる。
「アング……」
「ん?」
「えっ?」
「ー?」
そんな事を考えていた時だった。
「ラアアアァァァ!?」
「「「!?」」」
オトガアングラーの額から伸びている疑似餌、その先端が激しく光り、俺たち全員の視界を白一色で塗りつぶすと同時に仰け反らせたのは。
「これ……は……」
その瞬間に俺は悟る。
オトガアングラーの特性:オトガによる自動防御反応は身を固めることではなく、疑似餌を発光させることによる目つぶしである、と。
その証拠に俺、シア、ネクタールのステータスには状態異常:ブライン……暗闇が表示されている。
そして状態異常:ブラインの効果は一定時間、視覚を喪失する事。
つまり、何処からどう敵が来るのかが、視覚では判断できないという事であり、オトガアングラーの不意討ち時に攻撃力が大きく増大するという能力が発動しやすくなったという事でもある。
「アング……」
「させ……」
同時に気づく。
目が見えなければ、俺の目にある繋がりを見る力もまた弱まる、と。
だが今一番に気にする事はオトガアングラーの動向。
既にオトガアングラーは、俺に向かって素早く這い寄ってきている。
あの大きな口を、牙が剥き出しになるほど大きく開けて、だ。
「るかっ!」
「ーーー!」
「ラッ!?」
正確な対応は望めなかった。
だから俺は装備に頼った。
ネクタールにオトガナッツブレードを抜かせ、特性:オトガの任せるままに振るい、切り裂かせる。
「ーーーーー!!」
「アグ、アグ、アングラァ!?」
何度も何度も、視界が戻るまでの数秒間。
オトガナッツブレードはネクタールの身体と言う骨や関節といった制限なく自由自在に動かせる身体を使って、縦横無尽に暴れまわる。
「ア、アグラ……」
「よし、視界が戻ってきた……」
「ーーー……」
やがて視界が戻る。
こちらが受けたダメージは攻撃を受け止めた反動が幾らか来ていたのか、最大HPの5%程受けている。
対するオトガアングラーのダメージも最大HPの5%程で、微妙に怯んでいる様子を見せている。
だが、俺とオトガアングラーの5%では同価値にはならないだろう。
最大HPの量に差があり過ぎるし、なによりあちらは攻める側だったのだから。
何と言うか、オトガナッツブレードが如何に暴れまわったのかがよく分かる光景である。
「うっ、マスター。大丈夫ですか?」
「ああ、問題なしだ」
シアも多少よろめきながらではあるが、状態異常:ブラインから回復して立ち上がる。
どうやら『癒しをもたらせ』を自分に使う事で、回復を早めたようだ。
こういう時には分かり易く回復力特化がありがたく感じるな。
「そんなわけで一気に攻めるぞ!」
「はい、マスター!『ブート』!」
「アングラァ!?」
俺はオトガアングラーに近づいて攻撃を行い、シアも魔法による支援を再開する。
「おらっ!おらっ!おらあっ!」
「アグ、アグ、アングラ……」
何度も斧を振るい、拳を叩き込み、ネクタールに槍を突き出させ、オトガアングラーのHPを削っていく。
対するオトガアングラーも牙による攻撃だけでなく、体当たりや、その場で回転することで尾びれを叩きつける攻撃を仕掛けてくる。
が、それらの攻撃で受けるダメージは、俺の自然回復スピードを上回るような物ではなかった。
「アングラアァァ!」
そしてオトガアングラーが再び特性:オトガによる閃光攻撃を行おうとした瞬間。
「ネクタール!」
「ーーー!」
俺はネクタールを自分の前面に素早く展開し、後方に居るシアも含めて、閃光が当たらないようにする。
「アグ……」
「ーーー!」
「言われなくても!」
結果、状態異常:ブラインにかかったのはネクタールのみ。
そしてネクタールのサイズを戻した俺の眼前には、隙を生むことなど気にせずに力を貯めて、俺に飛びかかろうとするオトガアングラーの姿が有った。
当然、そんな隙を逃す意味などない。
「うおらぁ!」
「ラガッ!?」
俺はいつものように振りの途中で変えつつ、八尺円棍を振り下ろす。
すると不意討ち判定が入ったのだろう。
オトガアングラーのHPが大きく減り、一気に残り75%程になる。
それと同時に、大きな怯みも見せる。
「このまま押し切る!」
「はい!」
「ーーー!」
そこからは一方的な展開と言ってよかった。
だがそれも当然の事だろう。
既にオトガアングラーの行動は未知ではなく、既知になっているのだから。
閃光攻撃にさえ気を付けていれば、状況を一変させるほどの能力など他にないのだから。
「トドメ!」
「アグラァ……」
そうして俺の一撃によって、あっけなくオトガアングラーは力尽きた。




