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【AIOライト 64日目 15:45 (半月・晴れ) 『呑気な湿地の巣』】
「これは今日中に攻略完了してもいいかもな……」
「かもではなく、していいと思います」
『呑気な湿地の巣』第二階層。
そこには既に生きているモンスターの姿は無かった。
「そう思うか?」
「そう思いますね」
「ーーーーー……」
どうしてこうなったか、その理由は極々単純。
第一階層と同じく階段を下りて入った直後に、周囲を第一階層と同じ面子のモンスターに囲われていたからシアが『カースウッドキング・フォースハウル』を撃った。
そうしたらほぼ全てのモンスターが消し飛び、残りの僅かなモンスターも俺とネクタールで少し小突いたら終わった。
ただそれだけの話である。
「とりあえずアイテムを剥ぎ取れるだけ剥ぎ取って、適当に錬金、枠を圧縮だな」
「さっきと同じですね」
いずれにしても倒したなら剥ぎ取りはすべき。
と言うわけで俺たちは討伐にかけた時間の数十倍の時間を使ってアイテムを回収、携帯錬金炉を使って別のアイテムにしていく。
なお、その際には、まず同じアイテム同士を組み合わせることでレア度:1からレア度:2に強化しておく。
こうすれば一つのアイテムを作るのに必要なアイテムの数を増やす事が出来ると同時に、多少は有用な素材にする事が出来るからだ。
で、そうして造り上げたアイテムの一例がこれである。
△△△△△
レイシュアリザードマンパウダー
レア度:2
種別:道具-薬
耐久度:100/100
特性:レイシュア(行動がとても遅い)
レイシュアリザードマンの素材を粉末状にしたもの。
どのような効果を持っているかは分からない。
服用、あるいは塗布することによって効果を発揮する。
※使い捨て
▽▽▽▽▽
「特性:レイシュアの粉末……これを吸い込んだモンスターの動きが鈍ったりはしないんですかね?」
「それはないと思うぞ。もしもそうなら、特性:レイシュアは回収し易いのに効果がきわめて高い特性として、今頃最重要特性の一つだ」
「まあ、そうですよね」
俺はシアの言葉に応えつつ、出来上がったレイシュアリザードマンパウダーと言う名前の青い粉末の様子を観察する。
が、目に見えておかしな点は勿論の事、繋がりも見えない。
となれば後は使うか売るかだが……使った時の効果が分からないというのは困るな。
特性:レイシュアの効果を考えると、使っても即時に効果が出ず、しばらく時間が経ってから効果が発揮される気もするが……うーん。
「とりあえず使ってみるか」
まあ、物は試しである。
と言うわけで、同様の方法で作ったレイシュアリザードマンパウダー、レイシュアサーペントパウダー、レイシュアベロストパウダーの中から、俺はレイシュアリザードマンパウダーを服用する。
「マスター、これからボス戦なんですけど……」
「まあ大丈夫だろ。とりあえず俺の動きは遅くなっていないしな」
シアが呆れている横で、俺は自分のステータスを確認する。
が、特性:レイシュアの効果によって効果が即座に発揮されなくなっているのだろう。
俺のステータスに変化は見られない。
ただ……うん、こうして効果が発揮されるまで時間がかかるのであれば、特性:レイシュアは案外使える特性なのかもしれないな。
入念な調整と調査は必要になるが、ちょっと面白い事が出来るかもしれない。
「さて、シア。MPは大丈夫か?」
「はい、大丈夫です」
俺たちは準備を整えると、第三階層に繋がる下り階段の前に立つ。
なぜこの場で準備を整えたかと言えば、巣と言うダンジョンのパターンを考慮してだ。
なにせ第一階層からして、突入した直後に大量のモンスターに囲まれていた。
第二階層もそれは同様だった。
となれば……第三階層に突入した直後にボスとの戦闘があっても何らおかしくはないだろう。
「よし、行くぞ」
「はい」
「ーーー」
そして俺たちは下り階段を降り始めた。
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【AIOライト 64日目 16:32 (半月・晴れ) 『呑気な湿地の巣』】
「……」
「何が来ますかね……」
「ーーー……」
第三階層の基本的な構造はそれまでの階層とほぼ同じだった。
地面はぬかるんでいて、時折ではあるが沼地がある。
広さは俺たちの背後にある上り階段を中心として直径100メートルほどで、壁は岩製。
高さは地面から岩の天井までおおよそ5メートルほどと高め。
柱の類はなく、人間が身を隠せる場所はない。
そして俺たちの正面には……他の沼地より一回り大きな、大型のモンスターでも隠れられそうな沼地がある。
まず間違いなくあそこに何かしらのボスが潜んでいるだろう。
だから俺たちは戦闘の構えを取る。
「来るな……」
やがてゆっくりと、特性:レイシュアの名に相応しい遅さで沼地の中から何かが現れ始める。
「フシュ……」
まず現れたのは蛇に似た、けれど俺たちの上半身ほどもある、黒い鱗を持った巨大な頭。
この時点で俺はボスが蛇系の何かと判断する。
問題は……
「「「ルル……」」」
現れた頭の数が計四つであると言う事。
「「「ルルウゥ」」」
そして、その四つの頭と首が胴体の部分で繋がり、一本の巨大な丸太のような蛇身を持っているという事。
「マスターこれって……」
「ちょっと気合を入れ直した方がいいな。これは」
頭の数は合わないが、そんな特徴を持っている神話上の存在に俺は心当たりがある。
そしてボスでなければ、恐らくはその名が付けられているであろう事も想像に難くなかった。
そう、俺たちの前に現れたボスの名前は……
「「「ヒュドラアアアァァァ!」」」
「「「!?」」」
『呑気な多頭蛇の王』Lv.10。
場合によってはドラゴンの一種にも分類されるヒュドラ種のボス個体である。




