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AIOライト  作者: 栗木下
7章:マイホーム

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331/621

331:64-2

【AIOライト 64日目 06:35 (半月・晴れ) 始まりの街・ヒタイ】


「さ、言いたい事も言ったしな。とっとと部屋に引っ込むぞ」

「は、はい!?」

「ーーー!」

 一里吼札の効果が切れた直後。

 俺は手近な錬金術師(アルケミスト)ギルド『巌の開拓者(ノーム)』の支部に入ると、そのまま自室に移動した。

 理由は二つ。

 一つは単純に一里吼札の効果から復帰したプレイヤーに絡まれるのが面倒だったから。

 もう一つはインベントリと倉庫ボックスの中身を見て、確認したい事があったからだ。


「えーと……それでこれからどうするんですか?マスター」

「まずは倉庫ボックスの確認だな。アレがあるかだけ確かめたい」

 俺は倉庫ボックスを探りつつ、自分の左手の小指に填まっているそれの詳細を確認する。



△△△△△

エクナック・フォ・エフィルの黒輪

レア度:EX

種別:その他

耐久度:100/100

特性:ヌル(存在しないはずの物質)


Ecnahc fo efil. この文章の意味が分からない者は所有するべきでない。

機会を操る力は人の身には過ぎたる物であり、必要な時以外に開放されるべきではない。

これは本来ならば在ってはならない物質である。

※デスペナルティの対象にならない

※入手者以外の所持不可能

※特殊インベントリ格納可

※売却、破棄不可能

▽▽▽▽▽



「ふむ」

 うん、ちゃんとエクナック・フォ・エフィルの黒輪は実装されているな。

 今の俺にはC2Pを使ってレア度:PMを実体化する気はないから、非常にありがたい。


「えーと、一体何を探しているんですか?」

「ん?ああ、これだよこれ」

 と、シアに怪しまれない為にも早いところ出してしまうべきだな。

 と言うわけで俺はインベントリから二つのアイテム……普通の白い潮の花と普通のガンカ湖の水を取り出す。


「これって……携帯錬金炉の材料ですよね。もしかしてマスター」

 俺が取り出した二つのアイテムを見たシアは直ぐにその意味に気づいたのだろう。

 俺に疑問の視線を投げかけてくる。


「ああ、そのまさかだ。俺は結界石を作った工房の作成に新しい携帯錬金炉を使うつもりでいる」

 だから俺もそれに答える。

 シアの考えている通りだと。


「えーと、携帯錬金炉って複数個所有出来るんですか?」

「出来ないとはどこにも書いてないな」

「今あるのを使わない理由は?工房と言うくらいですし、造れば中に錬金をするための施設はあると思いますよ」

「これはただの勘だが……場所によっては工房を展開できない場所とかある気がするんだよな。だから、それ対策で普通の携帯錬金炉も持っておいた方がいい気がするんだ」

「勘ですか」

「勘だな」

 なお、この勘だがそう大きく外れるものではないと思っている。

 なにせ、現時点でもケイカの坑道と言う、プレイヤー全員が所持している機能の一部が制限されるエリアが存在しているのだ。

 今後似たような制限が来ない保証など、何処にもない。

 と言うか、俺がGMなら高難易度の自動生成ダンジョン辺りにそう言う物は設置する。


「まあ、そう言うわけで二つ目の携帯錬金炉を作りたいんだが……」

「材料不足、ですか」

「ああ、普通の赤い沼の泥が倉庫ボックスの中を探ってみても見つからない」

 だが作成にあたって何も問題が無いわけではない。

 と言うのも、普通の白い潮の花と普通のガンカ湖の水は以前に二つ回収した覚えがあったし、実際に倉庫ボックスから二つとも出て来てくれたのだが、普通の赤い沼の泥が見つからないのだ。

 なので当時の自分の記憶を探ってみたのだが……もしかしたら普通の赤い沼の泥だけは一つしか回収していなかったかもしれない。

 なお、他二つの材料は時間が止まっている倉庫ボックスの中に入っていたので、問題なく素材として利用可能である。


「インベントリに入っていたりはしないんですよね」

「入ってない。と言うより耐久度から考えて、入っていても使えない」

 俺はシアに言われて、念のために自分のインベントリを検める。

 が、めぼしい物と言うか、妙な物は一つしかなかった。


「強いて変な物と言えば……これぐらいか」

「「!?」」

 何も見せないよりかはという気持ちで、俺はそれを取り出すと、詳細が見える形にした上でシアとネクタールに見せる。



△△△△△

リジェネミスリルクリス

レア度:PM

種別:道具-投擲

攻撃力:335

耐久度:100/100

特性:リジェネ(回復力を強化する)


通常の銀に長時間高濃度の魔力を注ぎ込むことによって人工的に造られた魔法銀(ミスリル)製のナイフ。

分類上は魔法銀となっているが、その性質は注ぎ込まれた魔力の影響を色濃く受けており、本質的には全く異なるものである。

波打った刃による傷口は深く、広く、心身に刻み込まれる。

ヘイト集中+3

状態異常:回復力低下

※同名・同レア度・同攻撃力・同特性ならば、99本まで一枠で所有可能。

※使い捨て

▽▽▽▽▽



「マ、マスターこれは……」

 リジェネミスリルクリス。

 見た目としてはリジェネシルバークリスを赤黒く塗装すると同時に、刃の波をよりエグイ感じにしたものである。

 何故こんな見た目になったのかについてはGMを小一時間ほど問い詰めたい所だが……まあ、GMに聞いてもはぐらかされるだけだろう。


「たぶん、メンテナンス前に俺が魔力を注ぎ込んでいたリジェネシルバークリスが変質したものだとは思うんだけどな。気が付いたらインベントリに入っていた」

「え、えー……」

 それにしても、メンテナンス前のアレは、反ミアゾーイの連中に備えるべく、俺の魔力にリジェネシルバークリスの感触を覚え込ませるための行為だったのだが……想定外の代物が出来てしまった感じがあるな。

 シアも信じられないという表情をしているし。

 しかもだ。


「ついでに言うと、コイツと他の素材の間で繋がりみたいなものが見えているんだよな」

 レア度:PMの携帯錬金炉の素材にもなるようだった。


「まあ、そんなわけだから、今日はまず泥の回収だな。準備を整えたら行くとしよう」

「……。あ、はい。もうなんか色々と諦めがつきました」

「ーーー……」

 そうして俺たちはリジェネミスリルクリスを含む必要のないものを倉庫ボックスに預け、北の湿地の為に必要なアイテム類を取り出すという準備を整えると、久しぶりに北の湿地に向かう事にした。

04/16誤字訂正

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