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【AIOライト 64日目 09:27 (半月・晴れ) 北の湿地】
「北の湿地も久しぶりですね」
「だな。まあ、用事が無ければ訪れることが無い場所だから当然と言えば当然なんだが」
北の湿地を訪れた俺たちは適水粉を使用すると、真っ直ぐに赤土の沼に向かって湿地帯を歩き始める。
「敵は……勝手に逃げていきますね」
「レベル差が20も有れば、そりゃあ、戦いたくはないだろうさ」
敵が襲ってくる事はない。
プレントードやプレンサーペントといったモンスターの姿そのものは見掛けるが、こちらがその存在に気付くと同時に一目散に逃げ出してしまうからだ。
まあ、俺たちだってレベル差が20もあるモンスターに遭遇したら逃げるのだし、当然の反応だろう。
「となると気を付けるべきは底なし沼だけですかね?」
「そうだな。他は特に気を付けなくてもいいと思う。まあ、その底なし沼についても……」
「ーーーーー」
「ですね」
底なし沼についてもネクタールが槍で俺たちの進む先を突く事で調べているので、引っかかる事はまず無い。
おまけにだ。
「しかし、こうしてみるとレベルによるステータスの上昇もあるってのが良く分かるな」
「前回よりも明らかに進むペースが早いですもんね」
今の俺たちはかつて普通の赤い沼の泥を回収しに来た時よりも明らかに早いペースで進んでいた。
勿論、俺とシアの瞬発力や持久力に当時からの変化は見られない。
にも関わらず、以前との差が明確に分かるとなれば、こう言った細かい面にまで戦闘レベルが影響している事は明白だろう。
「んー……こうなると向こうに着くまでは結構暇かもな……」
正に盤石の体制と言ってよかった。
盤石過ぎて、暇になりそうなほどだった。
「シア、ネクタール。周囲の警戒は幾らか頼む」
「マスターは?」
「歩ける範囲でこなせる雑事をこなそうと思う」
「分かりました。気を付けてくださいね」
と言うわけで、俺はメッセージ、フレンドリスト、掲示板の確認を周囲への警戒が疎かになり過ぎない程度にやる事にした。
「まずメッセージは……ああ、グランギニョルから来てるな」
「ギニョールから?」
「内容は……一里吼札を使った件についてのお叱りだな」
「叱られるのはマスターの自業自得だと思います」
「あっはっは」
まずグランギニョルからのメッセージ。
どうやら、俺が一里吼札を使って全てのプレイヤーにメッセージを伝えた事に気づいたのはグランギニョルとシュヴァリエの二人だけだったらしく、少なくとも二人の周囲で声の主が俺だと気づいたプレイヤーはいなかったそうだ。
これはもしかしなくてもGMの干渉によって、俺の声音が変わっていた可能性があるな。
まあ、変なのに絡まれても困るので、ありがたい話である。
「フレンドリストは……全員居るな」
「皆さん、残ってくれたんですね」
「みたいだな」
フレンドリストに欠けはない。
トロヘル、クリームブラン、マンダリン、ジャックさん、ボンピュクスさんと全員揃っている。
で、そうやって改めて見て気づいたのだが……
「そう言えば俺、シュヴァリエの事フレンドリストに登録してなかったな」
シュヴァリエは未登録だった。
「……。言われてみればそうでしたね」
「しょうがない。現実での一件についてはグランギニョル経由で伝えてもらうか」
「それはちょっとどうかと……」
「ほい、送信っと」
「ああ、もう遅いですね」
とりあえず現実でシュヴァリエの父親が俺の病室に押し掛けてきた事に文句を言うメッセージをグランギニョルに送る。
先程のメッセージからして二人は一緒にいるようだし、ドウの地に移動していなければ、これで伝わるだろう。
「おっ、返信が来た」
と、思っていたらすぐに返信が来た。
と言うわけで、俺は直ぐにそのメッセージを開く。
「内容は?」
「えーと、グランギニョルから俺への罵倒は無視するとして……」
「それは罵倒じゃなくて真っ当な抗議だと思います。マスター」
「ああ、本文が有ったな」
メッセージの内容は前半と後半に分かれている。
前半は人をポストか郵便のように使うなと言うグランギニョルが書いたものなのでスルー。
で、肝心の後半だが、こんな事が書いてあった。
『ごめんなさい師匠。お父様と話をしている間に思わず師匠の名前を……その、師匠に比べたらお父様なんて全く怖くないです。と言う形で出してしまって、それでお父様がそちらに行ってしまったんだと思います。私にはGMの守護があって、手も出せませんでしたから。本当にごめんなさい』
「俺の方が怖いって……いやまあ、俺が睨んだだけで倒れるようなオッサンと俺自身を比べたらそうなってもおかしくはないだろうが……」
「とても妥当な評価だと思います」
「そうか?」
「そうです」
何故だか今日はシアが辛辣な気がする。
シュヴァリエの件については……まあ、謝ってくれているからこれ以上は気にしないでおくとしよう。
「あ、こんな機能もあったんだな」
「こんな機能?」
「メッセージに特定プレイヤーへのフレンド申請を行うためのボタンを付ける機能」
「便利ですね」
「本当だな」
とりあえずメッセージの最後にシュヴァリエにフレンド申請を行うためのボタンが有ったので、俺はそれを押した。
すると当然の流れではあるが、シュヴァリエによってこちらのフレンド申請は簡単に受理された。




