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AIOライト  作者: 栗木下
7章:マイホーム

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329/621

329:63-10-R10

【2021年 9月 1日 19:42(水曜日・晴れ) 日本】


「んー……だいぶ分かって来たな」

 母さんが帰った後も特に妙な事態は起こらず、夕食を食べ終えた俺たちは病室でゆったりとしていた。

 勿論、魔力制御の訓練はしていたし、ネクタールを生み出す時に使った俺の肋骨がきちんと消えている事を確かめたりもしたが、逆に言えば俺がやった事と言えばそれくらいだった。


『魔力の扱いが、ですか』

「ああ、とりあえずこれなら睨んだだけで人が倒れることは無いと思う」

 だがその成果は有ったと言えるだろう。

 自分で感じ取れる範囲と言う但し書きつきではあるが、だいたいの魔力は抑えられるようになったのだから。

 これでとりあえずではあるが、不意の事故は防げるようになるだろう。


「後、やるべき事は……」

『そう言えばマスター。レア度:PMのアイテムを実体化するのに必要なC2Pと言うポイントについてはどうなったんですか?』

「ん?ああ、そう言えばまるで確かめてなかったな」

 シアの指摘に俺はC2Pの存在を思い出し、それが現在どうなっているのかを確かめる。

 すると俺の所持ポイントは……0のままだった。


『マスター、どうしました?』

「いや、ポイントなんだが……」

 何故ポイントが増えていないのか。

 単純に考えれば、ポイントが増えるための条件を俺が満たしていないからだろう。

 元々、その詳細が一切分からないポイントであるし、そう言う事があっても何もおかしくはない。

 が、どうやら真実は少々異なるようだった。


「ん?」

『マスター?』

「GMからのメッセージだな。ちょっと待ってくれ」

 まるでタイミングを計ったかのように、スマホではなく俺自身の方へとGMからのメッセージが飛んでくる。

 いや、実際タイミングは計っていたのだろうし、俺以外に見せるわけにはいかない案件なのだろう。

 タイトルに俺と海月さん以外には見せないようにと但し書きが付けられているし、恐らくだが見えないように設定もされている。


「……」

『えーと、なんて書いてありました?』

 肝心のメッセージの内容だが……わざと長ったらしく書いてある部分や、慇懃無礼な前口上部分、専門用語を多用することで理解が追いつかないように仕向けてある部分などを読み飛ばして要約するとこんな感じになる。


『エクナック・フォ・エフィルの黒輪は実装してあげたよ。けど、その対価として必要な量のC2Pは貰ったよ。とりあえずメンテナンス中のゲームに干渉するんじゃない。私の胃とか頭とか腕とかが死ぬ』


「ふーん。まあ、大したことは書いてないな」

『C2P関係についてもですか?』

「そっちについてはポイントが欲しければもっと頑張れとしか書いてないな」

 GMの苦労は半分くらいは自業自得なのでどうでもいいとしてだ。

 エクナック・フォ・エフィルの黒輪がちゃんと『AIOライト』の中にも入ったのはいい話だな。

 どうせ普段は能力を制限されているだろうが、反ミアゾーイの連中への対抗策が増える方が重要だ。

 そしてアイツ等関係である以上はシアには何も話せない、と。


「まあ、正直なところ。C2Pによる実体化に拘る必要はないのかもな」

『と言いますと?』

「副案と言うか代案と言うか、とにかく別の方法をちょっと思いついてな。しかもそっちの方法の方が上手くいく可能性は高いかもしれない」

 そう、エクナックとの一件で俺の身体を錬金術によって再構築したように、材料とエネルギーさえ十分に有れば、肉体を生み出す事は出来るのだ。

 そして魂についても、エファスの黒輪の力を使えばどうとでもなる可能性がある。

 そう考えていけば……C2Pによる実体化ではない方法で、GMに妙な物を仕込まれる可能性のない実体化も可能ではないか、俺は今そう考えている。


『マスター。聞いておきますけど、それはマスターを危険に晒す方法じゃないですよね』

「んー、その点についてはたぶん大丈夫だ」

『本当ですね?』

「本当だとも、ただまあ、今はまだ方法を思いついただけの話だし、実際に出来るのは当分と言うかかなり先の話だろうな」

『具体的には?』

「んー、ゲームをクリアする少し前か、ゲームをクリアしてからか。まあ、そんな所じゃないか」

『なるほど』

 尤も、シアにも言ったように、これはまだ机上ですら穴だらけの案。

 実行に移すのであれば、最低でも反ミアゾーイの連中との件を終わらせた上に、現実世界でシアを受け入れる為の準備をきちんと終わらせてからになるのは確定。

 しかも失敗は決して許されないのだから……まあ、相応の年月がかかるのは覚悟しておくべきだろう。


『『AIOライト』の中に戻ったらどうしますか?』

「んー、結界石から工房を作るための準備を進めることにはなるな」

『となるとまずは手ごろな自動生成ダンジョンを探すところから、ですか』

「そうだな。何事もなく済めば、それでいいと思う」

『何事もなく済めば?』

「ああ、何事もなく済めば、だ」

 さて、もうしばらくしたら、再び『AIOライト』の中である。

 俺としては戻ったらすぐにでも活動を再開したい所なのだが……恐らく最初に一つだけやらなければいけない事があるだろう。

 正直、後発組の有象無象の連中がどうなろうといいのだが、その影響がこちらにまで飛び火してくる状況になるのは避けたいからな。


「さて、そろそろ何時メンテナンスが開けてもいいようにしておくか。シア、ネクタール」

『はい、マスター』

『ーーーーー!』

 火は小さい内に消すに限る、だ。

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