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AIOライト  作者: 栗木下
7章:マイホーム

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326/621

326:63-7-R7

【2021年 9月 1日 08:15(水曜日・晴れ) 日本】


『マスター!起きてくださいマスター!朝ですよ!!』

「んー……」

 シアの声が、俺を起こす声が聞こえてくる。

 そして薄く目を開けて時間を確認してみれば、時刻は既に八時を過ぎていた。


「朝か……」

『マスター、海月さんが来てますよ』

「おー、分かった」

 で、俺のスマホの近くには微妙に苦笑いを浮かべている海月さんが立っている。

 どうやら何か話があるらしい。

 まあ、それはそれとしてだ。


「ナースコールで頼めば朝食とか来ますかね」

 腹が減った。

 考えてみれば、身体を再構築した……いや、そもそもとして現実の身体は寝たきりだったので、胃腸の中は空っぽである。

 そんな空っぽの胃腸で八時間も寝れば、そりゃあ腹も減るという物である。


「まあ、来るんじゃないかな。流動食に近いものになるだろうけど」

「それだとちょっと微妙ですねー」

「ほぼ二ヶ月何も食べていない身体なのだから、無理はしない方がいいと思うよ」

『私もそう思います。マスター』

「しょうがない。じゃあ、諦めますか」

 実際のところ、今の俺の肉体的には普通の食事を摂っても何の問題もない。

 が、それはシアが知らない事実であり、エクナックの件を悟らせてはいけない俺としては隠さなければいけない話でもある。

 と言うわけで、俺は普通の朝食を摂る事についてはあっさり諦めておくことにする。


「で、海月さん。俺への用事は何ですか?日付が変わった直後の話でだいたいは片付いたと思っているんですけど」

 そして、ナースコールで朝食を頼み、それが届くまでの間に俺は海月さんの話を聞く事にする。


「だいたいは片付いているよ。君の忠告についてもすでに各国上層部に届いている。今頃は……まあ、色々と練り直す事になっているだろうね。本当に色々と」

「そうですか。なら俺も言った甲斐があるという物です」

 どうやら俺の言葉はきちんと各国上層部に届いたらしい。

 流石は海月さん……いや、スパインさん、人ならざるものなだけはある。


『何の話ですか?マスター』

「んー?まあ、簡単に言えば今後は公務員として『AIOライト』に参加するって話だな」

『えーと、良い話。なんですよね』

「現状ではそうだな」

 俺は改めて自分がサインした契約の書類を見る。

 そして、その要点を脳内でまとめてみる。

 で、ちょっとした疑問が湧いたので、その辺りについて俺は海月さんに聞いてみることにする。


「そう言えば海月さん。働いているかどうかを評価するのに公式サイトを使うって書いてありますけど、これって何なんですか?」

「ああ、それかい。一週間前に『AIOライト』のメンテナンス告知を行うと同時に開かれたサイトでね。現在『AIOライト』でプレイしているプレイヤーの情報が一部ではあるけれど閲覧できるんだ」

「へー」

『ちょっと調べてみますね。マスター』

 そう言うとシアは一つのサイトを俺の目にも見える形で提示してくれる。

 なお、スマホに一緒に入っている他のレア度:PMのアイテム……ネクタールなどだが、どうやらネクタールはシアの敷物代わりになり、八尺円棍と五寸鬼瓦については一種のウイルスバスターとして活動しているようだった。

 一里吼札は……流石に数が限られているアイテムなので、ただ放置されているだけである。


「ふーん、現在のレベルにHPとMP、それに所在地ですか」

「ああ、それだけ揃っているのなら、仕事をしているかどうかの評価ぐらいは出来るだろう」

「そうですね。これなら問題はないと思います」

 さて、件のサイトだが、どうやらGMが管理運営しているサイトであるらしく、プレイヤーの実名あるいはプレイヤー名を入力すると、そのプレイヤーの情報が一部だけではあるが表示される。

 そしてこれは今現在も有効であるらしく、俺の項目には現在地:現実世界としっかり表記されていた。


「ところで藤守君。藤守君のパイライト・ドーム攻略動画が見つからないんだけど、それはどうしてなんだい?と言うか、藤守君の内部で活動してる動画が、他の攻略組に比べて明らかに少ないんだけど……」

「いや、そんなのはGMに聞いてくださいよ。俺は一切関与していないんですから」

『ボソッ……(マスターの動画が少ないのは単純に見せられないからなんじゃ……)』

「ボソッ……(見せられない……ああ、なるほど。言われてみればそうだよね……)」

 また、このサイトはプレイヤーの情報を確認できるだけでなく、一部ではあるがプレイヤーがどのように活動しているのかを動画形式で閲覧できるようになっている。

 例えば俺の場合だが、何日か前にグランギニョルたちと一緒に倒したプレンゴーレムの動画や、ネクタールが使っているガードミスリルスピアの作成風景を映した動画が上がっている。

 が、何故かグランギニョルたちの項目にあるようなパイライト・ドームの攻略風景や、だいぶ前ではあるが自動生成ダンジョンのボスを攻略する様などは映っていなかった。

 レア度:PMの作成風景については明かすかどうかはプレイヤー個人が判断することとして載せていないのだろうと思うのだが、不思議な話である。


「ふうん、それにしても。これを見ていたら……」

 それだけで一日潰せそう。

 俺がそう言おうと思った時だった。


「此処かぁ!」

「なっ!?」

 見知らぬオッサンが病室の中にいきなり入ってきて。


「ああ?」

「ゾッタとか言う糞ガキが居るの……っつ!?」

 俺に睨まれただけで卒倒したのは。

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