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本日二話目となります。
一話目がまだの方はご注意ください。
『『『死ね死ねっ!死ネッ!!』』』
俺の身体が弾け飛ぶ。
その未来については、既に避けようのない未来と化している。
身体の内に入り込んだ怨嗟たちが道を間違えるという形で暴れまわり続け、血管の一つ一つ、神経の一つ一つ、細胞の一つ一つが今正に切り離されようとしているのだから。
「お前たちに一つだけ聞きたい事がある」
だがそんな状況だからこそだろうか。
俺の頭は不思議と冴えわたっていて、自分の中に入り込んできている怨嗟たちの一つ一つに問いかけを行えるだけの冷静さがあった。
だから俺は自然に問いかけていた。
「お前たちは機が訪れるまでに何をしていた?」
怨嗟の声の主たちの怒りを買うような言葉でもって。
『『『!?』』』
そして俺の予想通りに、俺の言葉を聞いた怨嗟たちが暴れまわる勢いは増した。
その勢いは凄まじく、少しずつ膨らみ上がり始めている俺に対して何かをしようとしている海月さんたちの行動が確実に間に合わない事を俺に理解させた。
だが同時にもう一つ理解した事もあった。
「そうか、お前たちは何もしなかった。あるいはその機が訪れるまでにしてはならない事をしたな」
既に俺の神経はずたずたに引き裂かれ、脳は思考を行えない状態にある。
俺の血管も無数の穴が開き、血は既に皮膚から飛び出そうとしている。
細胞もその境界を壊されて、中身を弾け飛ばそうとしている。
それでもなお、俺の言葉は止まらないし、止める必要はなかった。
『『『ーーーーー!!』』』
「一ついい事を教えてやる。ミアゾーイが与える人生の中において、他者にもたらされる不幸と言うのは極々最低限のものだ。理由は単純、他人の不幸と言う物は往々にして、所有者も含めた周囲の者を不幸にするからだ」
そして、言葉を紡ぐと同時に、俺はこの後の為の備えを始める。
「ではなぜ、お前たちの機は奪われたか。これもまた単純な話だ。お前たちはミアゾーイの所有者の人生にとって害にしかならないと判断された。だからお前たちの機は奪われた。いや、そもそもとして……ミアゾーイが奪うまでもなくお前たちに機など無かった。お前たち自身の行動を原因として、な」
俺は自分の周囲に魔力を展開する。
それと同時に、幾千、幾万の破片に分解されつつある自分の身体の中に繋がりを形成する。
「ハハハハハッ!弾ケ飛ベ!!」
『『『ーーーーー!!』』』
「まあ、理解はしなくていいし、出来ないだろう。自分に原因など無いと思い込んで、俺への復讐に走るような連中には、な。だから……」
エクナックの嘲笑が響き渡る中、図星を突かれて怒り狂う怨嗟たちが襲い掛かり、俺の身体が弾け飛ぶ。
肉が、骨が、目が、内蔵が、血が、脳が、俺の身体を構築する何もかもが激痛と共にバラバラに弾け飛ぶ。
それは俺と言う人間の死を意味する現象。
それと同時に……
「遠慮なく奪わせてもらうとしよう」
俺の魂が肉体と言う枷から開放される好機が訪れた事も意味する。
『『『ーーーーー!?』』』
「コレデ……」
だから俺は吸い込み始める。
まるで呼吸でもするように、極自然に、魂だけになった状態で吸い込み始める。
「オワ……リ……」
『たす、たすけ……!?』
『なん、だ。これは……』
『ひ、ひいやああぁぁぁぁ!?』
『嘘だ!?こんな……』
『おぼっ、あぶっ……』
俺の身体を傷つけ喜ぶ怨嗟たちを。
俺の身体が弾け飛ぶと同時に開放されようとしていた怨嗟たちを。
俺の身体を破壊して目的を達したと思っていた怨嗟たちを。
吸い込む。
「ハハッ」
逃げる事も許さず、嘆くことも許さず、底なし沼に足を踏み入れた愚か者を沼の底へと沈めていくように、俺の魂の中へと吸い込んでいく。
「ハハハハハッ」
奪い取る。
その力を、知識を、罪を、純粋なる魂になるのに不用なもの全てを。
混沌とした黒から白が生まれるような程に。
「アハハハハハッ!」
それから変換する。
俺自身の力へと、弾け飛んだ俺の肉体を材料に新たな肉体を構築するのに必要なエネルギーへと。
『AIOライト』の中でやっていたように、敵意を魔力へと変換するように。
「ハ?」
「んなっ……」
「うそーん……」
「やりやがったのニャ……」
「はははっ、危ない危ない」
そうして予め張っておいたと魔力と繋がりを通じて再構築する。
俺と言う人間の魂が器とする肉体を、暴風と共にその場に生み落す。
両の脚でしっかりと病室の床を踏みしめるように、両の手で様々な物を掴めるように、生命維持にかかせぬ臓器を含んだ胴を背筋を立たせて堂々となるように、それらを統括する脳を無事に収められるように。
弾け飛ぶ前と寸分たがわぬ肉体を、生物と言う自然が幾億年とかけて作り上げた芸術品を、人工的に造り上げる。
「ぷはああああぁぁぁぁ……ああ、まったく、本当にギリギリだった」
「馬鹿……ナ……」
やがて、無事に肉体を再構築し終わった俺は呼気と共に怨嗟だった者たちを吐き出す。
それは本当に真っ白な光の輝きであり、完全なる無垢であった。
これならば、次の機を見逃すようなことはないだろう、たぶん。
「確カニ……確カニ貴様ヲ殺ス好機ダッタハズナノダゾ……」
「ああそうだな。確かに好機ではあった。実際、俺の肉体は一度間違いなく死んだ」
で、俺は海月さんたちが呆然とする中、何故かトーガのようになった病院着を赤黒い風でなびかせつつ、GMの魔法陣によって床に押し付けられているエクナックに近づく。
頭を打ち抜かれ、心臓を貫かれてもなお、生きているエクナックの始末をつけるべく。。
「さてエクナック・フォ・エフィル、あるいは『人生の好機』よ。お前に一ついい事を教えてやろう」
「ア、ア、ア……」
俺は怯えるエクナックの事をしっかりと見つめつつ、大きく、ゆっくりと、肉体を再構築してなお余った魔力を込めつつ、片足を上げる。
「好機と言う物はそれを生かせる者の下に有って始めて好機と言うんだ。つまり……お前は間違えた」
「アビュッ!?」
そして脚を振り下ろし、踏み潰す形で砕く。
エクナックの頭部も、喉に仕込まれていた赤い石も、エクナックの身に残っていた怨嗟も、全てまとめて。
「狙うなら、俺の肉体じゃなくて魂を狙うべきだったと言う事だ」
「「「……」」」
そうして核を打ち砕かれたエクナックの身体は数回痙攣を起こした後、青白い炎によって灰も残らず焼き尽くされた。
後に残っていたのは、頭に填まっていた黒い輪だけだった。




