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【AIOライト 63日目 00:00 (4/6・雨) 鉱山街・ケイカ】
【2021年 9月 1日 00:00(水曜日・晴れ) 日本】
日付が変わった瞬間。
全員が動き出す。
「……!」
まず俺が目を開けた。
「我ガ名ハ、エクナック・フォ・エフィル」
その時には既にエファスによく似た姿を持つミアゾーイの反存在の一つ、『人生の好機』が青白い炎で燃え盛る爪を振り下ろしつつある状態で、ベッドで眠る俺に向かって飛びかかっていた。
「今コソ宿願ヲ果タス好機!」
俺が現実に戻って来てから、まだ十分の一秒も経ってはいない。
だが、不思議とエクナックの声はよく聞こえた。
きっとこれについては、危機的状況下において主観的な時間が圧縮されるアレか、魔力の働きによるものだろう。
で、恐らくだが今回は後者によるものだろう。
と言うのもだ。
「そう上手くいかせる気はないよ!」
「!?」
レースや宝石をふんだんに取り入れた、見るからに魔法少女といった姿の水色髪に紫色の目をした少女が、これまた見るからに魔法少女が持っていそうな杖をエクナックに向け、虹色の怪光線を発射。
エクナックを壁にまで吹き飛ばしたからだ。
「何モ……」
状況はまだ終わっていない。
「ブッ潰れるのニャ」
「ノッ!?」
壁に叩きつけられたエクナックの上に赤い魔法陣が、下に青い魔法陣が生じる。
直後、GMの声と共にエクナックが居る場所に光にすら影響を及ぼすような何かが発生し、エクナックをほぼ完全にその場で拘束する。
「チェックメイトだ」
「!?」
そして何処から現れたのか、水色の髪に紫色の目になり、口には煙草を咥えた海月報さんがエクナックのこめかみ部分に拳銃のような物を押し当て、引き金を引き、乾いた発砲音と共に、エクナックの銃を押し当てられているのと逆側のこめかみから赤い破片のような物が弾け飛ぶ。
「っつ!?」
で、俺はと言えば目の前で起こる状況にようやく体が追いつき始めていた。
つまりは襲い掛かるエクナックの攻撃を避けるように、横に転がると同時に跳びつつ、右手に持っていた何かをエクナックの胸に向けて投擲。
幸いにして投擲したそれ……リジェネシルバークリスによく似た、波打った刃を持つ短剣状の魔力は俺の意思に沿って動き、エクナックの胸に深々と突き刺さる。
「これで仕事完了かな」
「やれやれ、まさか本当に襲い掛かって来るとは」
「ニャハハハハ、来る事が分かっていればこんな物なのニャ」
強力な力で全身を圧せられている状態で、頭部を破壊され、心臓に短剣が突き刺さったエクナックは俺たちの前でゆっくりと倒れ始める。
その姿を見た海月さんも見知らぬ魔法少女も、声だけではあるがGMですらも、これでエクナックを仕留めたと思ったのか、ほんの僅かにだが気を緩め、安心した様子を見せている。
「我ハ……人生ノ好機ヲ奪ワレタ者タチノ怨嗟。我ハ好機ヲ奪イニ来タ。ソノ我ハ知ッテイル。今コソガ、今コノ時コソガ、厄災ノ錬金術師ゾッタヲ、大罪ノ主デアル藤守粟太ヲ、確実ニ殺セル好機デアルト!」
だがエクナックはその身が崩れ落ちつつも俺の事を見続けていた。
そして未だに宙を舞い続けている俺は、エクナックから俺にだけ放たれる明確な殺意を感じていた。
「死ヌガイイ!!」
崩れ落ちるエクナックの喉から青白い何かが放たれる。
「へっ?」
「なっ!?」
「んニャ!?」
それは一瞬にも満たないであろう三人の意識の間隙を縫うようにして放たれていた。
放たれたそれは正確に俺の胸に向かって、誰にも止められることが無い軌道で以って、向かってきていた。
「っつ!!」
それが、俺の胸に、突き刺さる。
「生キ延ビル……」
突き刺さったそれは服を破り、皮膚を破り、肉を破り、骨と骨、血管と血管の隙間を縫って、俺の心臓へと到達する。
そして響き渡り始める。
『何で!ねえ、何で!?何であの子だけが選ばれるの!?』
『乗せてよ!私も乗せてよおおぉぉ!』
『薬が、薬さえあれば……薬さえあればアアァァ!』
『機会を!せめて機会をおおぉぉ!』
『ひもじいよう……まずしいよう……』
機会を奪われた者たちの声が。
生きるか死ぬかと言う状況において、死ぬという選択肢しか与えられなかった者たちの声が。
目の前で機会を与えられて生き延びていく者たちが居る中で、自分だけが死んでいく者たちの声が。
「好機ナド無ク……」
俺の中で、心臓の鼓動に合わせて響き渡り始める。
『何が、何処が、間違えたというんだ!』
『私は悪くない!私は悪くないの!あの子が勝手に……』
『主よ!何故我を見捨てたもうた!』
『待ってくれ!私が、私が犠牲になるから……』
『嫌だああぁぁ!こんな結末は嫌だああぁぁ!!』
選択を間違えるように仕向けられた者たちの声が。
助かるはずだった者たちを助からなかった悲しみの声が。
所有者にとって都合のいい人生を送らせるミアゾーイの犠牲になった人々の声が。
ミアゾーイが無くなってから生れ落ち、その負債を押し付けられた者たちの声が。
「逝クガイイ!」
血管を通じて全身を巡り、巡ったその先で選択を間違えて巡り、巡り巡り巡りめぐりめぐりめぐりメグリメグリメグリ巡り巡り巡りめぐりめぐりめぐりメグリメグリメグリ巡り巡り巡りめぐりめぐりめぐりメグリメグリメグリ巡り巡り巡りめぐりめぐりめぐりメグリメグリメグリ巡り巡り巡りめぐりめぐりめぐりメグリメグリメグリ。
やがて、俺の身体は……
「!?」
内側から全てが吹き飛ぼうとした。
まだ10秒も経っていません




