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【AIOライト 62日目 09:02 (5/6・晴れ) 鉱山街・ケイカ】
「さて、無事に帰還だな」
「ですねー」
「ーーーーー」
翌日。
俺たちは何事もなく錬金術師ギルド・ケイカ支部に到着。
倉庫ボックスに結界石を預けることが出来た。
「さて、錬金の方を始めるか」
「はい、マスター」
そして結界石含めてアイテムの整理を終えた俺たちはケイカ支部地下一階のフリースペースに移動した。
「じゃ、シア。杖を」
「よろしくお願いします」
俺はシアから『呪詛招く樹の王』の杖を受け取ると、昨日手に入れた『結界石の守護者』の礫蔓と携帯錬金炉をインベントリから取り出す。
で、普通に錬金を開始。
打ちこみは……
『cUtsh1ta ka80tyA, bOul nj1ru zenbUawA5t3 lenj1d3 tiN uma1n0Nya』
「んー、ちょっと長めだな」
多少長めではあったが、この程度ならば特に問題はない。
と言うわけで俺は普通にミスなく打ちこみを行う。
そしてアイテムが出来上がる。
△△△△△
『呪詛招く樹の王』の礫蔓杖
レア度:3
種別:武器-杖
攻撃力:365
耐久度:100/100
特性:カース(傷つけたものを傷つけ返す)
アブソーブ(力を奪い己の血肉とする)
『呪詛招く樹の王』の枝から作られた木製の杖に、パンプキン種モデルの『結界石の守護者』の礫蔓を組み合わせた杖。
自然物を組み合わせて作られたその杖は、見る者に自然を感じさせる。
以下の起動文を発声することで、MP消費と引き換えに魔法を発動する。
『ブート』『カース』『アブソーブ』『カースウッドキング・フォースハウル』
▽▽▽▽▽
「ふむ……」
起動文の追加は無し、か。
起動文を追加するための枠が無いのか、『結界石の守護者』の礫蔓がそう言う素材なのかは分からないが、少し残念ではあるな。
だが攻撃力が上がっているなら問題はないか。
「シア、出来たぞ」
「はい、ありがとうございます。マスター」
シアは俺から『呪詛招く樹の王』の礫蔓杖を受け取ると、早速装備すると、使い心地を確かめるべく何度かその場で振ってみる。
「……」
そうして、何度か振ったところで、まるで何かを感じ取るように、両手で杖を持ったシアは静かに目を瞑り、その場でしばらく身動きひとつせずに立ち続ける。
「マスター」
「何か見えたって感じだな」
「はい、もう少し時間はかかりそうですけど、メンテナンス後には使えると思います」
「そうか、ならよかった」
どうやらシアは新しい魔法を手にしようとしているらしい。
ただ、それが使えるのはメンテナンス後。
うーん、元々今日一日は休みにするつもりだったが、動くべきでない理由が増えた感じではあるな。
「マスター、この後はどうしますか?」
「今日はもうずっとケイカ支部に籠る。シアもギルドの外に出ないのなら、好きにしていていいぞ」
俺はインベントリからリジェネシルバークリスを一本取り出すと、その場で胡坐をかき、自分のすぐ前の床にそれを置く。
「分かりました。えーと……あ、ギニョールたちが帰って来たみたいなので、私はそっちに行っていますね」
「ああ、気を付けてな」
「はい、マスター」
そしてシアが少し微妙そうな表情を浮かべつつグランギニョルたちの下に向かって行き、無事に合流したのを確認したところで俺はそれを始めることにする。
「さて……」
俺は床に置いたリジェネシルバークリスの波打った刃の腹に右手の指を軽く乗せる。
「上手くいくといいんだがな」
心臓から腕へと、腕から手へ、手から指へ、指からリジェネシルバークリスへと。
俺はゆっくりと赤黒い魔力を流し込む。
「……」
これで上手くいくかは分からない。
そもそもとしてこんな作業をする必要があるのかどうかも分からない。
だが、このまま座して何もしないよりは良い事だけは確かである。
「ボソッ……(おい、アレって……)」
「ボソッ……(『狂い斧』だな)」
だからゆっくりと、ゆっくりと、リジェネシルバークリスに俺の魔力を注ぎ込んでいく。
「ボソッ……(何やってんだあれ?)」
「ボソッ……(さあ?けど、近寄らない方が良さそうだな)」
そして、リジェネシルバークリスが俺の身体の延長線上に存在するかのように、刃の波の一つ一つ、装飾の無い柄の細部、鋭い刃の切っ先に至るまで、魔力で丹念に触れ続け、感じ続ける。
「ボソッ……(えっ、てか何だよあのオーラ……普通にヤバくね……)」
「ボソッ……(くわばらくわばら、関わらないのが一番だ)」
呼吸も、心拍も、思考すらも最低限にし、流れる時間など気にせずにただひたすらにリジェネシルバークリスに集中し続け、繋がりを形成する。
「マスター、マスター?マスター!食事が出来ましたよ!」
「シアの声が聞こえないって本格的に駄目みたいね。しょうがない、今夜は私たちの所に来なさい」
「はぁ……そうですね。お邪魔になります」
「それにしても師匠がこんな事になるだなんて……」
シアの声は気になるが、その欲求は無理矢理抑える。
そして、深く、深く、己の一部であるかのように。
銀色の表面が赤と黒で彩られるほどに。
とにかくそれだけに集中し続ける。
「さて……」
そうして、俺が十分な量の魔力をリジェネシルバークリスに注ぎ込んだと感じたのは日付が変わる2分前だった。
既にシアは俺の隣で眠りについており、何故かグランギニョルのPTの面々にシュヴァリエも一緒のスペースで眠っていた。
まあ、特に問題が発生していないなら何も問題はない。
俺はそう判断すると、右手で先程まで魔力を注ぎ込み続けていたリジェネシルバークリスを握った状態で、現実世界に引き戻される際の肉体の差異を可能な限り少なくするべく、その場で横になり、目を瞑った。
「来るなら来い、だ」
そして……日付が変わった。




