315:61-5-S5
「ビュロウ!ビュッロウ!」
「……」
『結界石の守護者』との戦いが始まって早三時間。
戦いの場は既にこちらが照明を用意する必要など無いような状況になっていた。
「ビュロロロオオォォウ!!」
「マスター、大丈夫ですか?」
「まだまだ問題ないから安心しろ」
何故ならば、『結界石の守護者』が広場に無数の火球を生成し、それらを俺に向かって放って来ているからである。
その数は常時20以上、全方位取り囲まれている事もあって、それなりに威圧感はある。
が、多くても三つほどしか同時に来ない火球によるダメージは俺の自然回復でどうとでもなる量。
はっきり言って気にする必要はない。
「ビュ……ロウッ!」
「っつ!?」
と、ここで俺は火球の隙間を縫うように『結界石の守護者』の蔓が伸びて来るのを視認。
僅かに頭を動かし、来る衝撃に対しての心構えを付ける。
そして蔓は俺の額を激しく打つが……ダメージはともかく、状態異常:スタンが入る事は無かった。
だがやはり避けたり防ぐ事は出来ず、厄介な攻撃には変わりなかった。
「ビュロロロオオウ!」
「回復します」
「頼む」
蔓の攻撃に続けて『結界石の守護者』本体が俺に突っ込んでくる。
なので俺は周囲の火球の迎撃をネクタールに、HPの回復をシアに任せ、『結界石の守護者』の攻撃を捌く。
右手の蔓が伸びれば五寸鬼瓦で弾き、左手の蔓が振るわれれば斧を盾のようにすることで防ぐ。
硬い頭による頭突きは避けて、反撃として殴ったり、リジェネシルバークリスを突き刺したりする。
これが一番ありがたい行動で、十分に接近してくれるおかげで、こちらも相手のHPを削る事が出来ている。
「ビュロウ!」
「っつ!?フェイント!?」
「ーーー!」
だが油断は出来ない。
多くのプレイヤーから賢いと評価されただけあって、『結界石の守護者』の攻め手は少しずつ巧みさを増している。
現に今も自分の手による攻撃をフェイントとし、こちらの反撃を誘い、そこに大型の火球を当ててこようとした。
幸いにしてネクタールが反応し、槍で先んじて突いてくれたおかげでこちらが一方的に攻撃できたが、攻撃を受けた勢いを利用されて、距離は取られている。
「戦闘中の学習による進化。特性:アブンを思い出すな」
「そうですね。でも、その割には……」
「まあ、そこら辺はAIとしての縛りなんだろうさ」
俺たちから距離を取った『結界石の守護者』はこちらの様子を窺いつつ、広間の中を高速で移動。
そして、ランダムな感覚で火球を生み出すと、後からそれに指示を与えることでこちらに向かって射出してくる。
が、ゼロ距離状態ならばともかく、距離があるこの状況で、その指示の瞬間を見ることが出来る俺にとって火球の迎撃は難しくはなかった。
多少の軌道変化を交えようが、複数同時に打ちこまれようが、撃たれる度に打ち落とすだけである。
そうしている間にも再び『結界石の守護者』は俺たちに接近をし、攻撃を仕掛けてくる。
恐らくはこれがAIの限界、あるいは縛り。
一定時間ごとに接近し、攻撃をしなければならないというルーチン……いや、ルールだ。
「ふんっ!」
「ビュロウ!?」
だから俺はそれを利用する。
利用して『結界石の守護者』を攻撃する。
そして今の攻撃で『結界石の守護者』の残りHPは5%を切った。
これならば次で決められる。
俺がそう思った瞬間だった。
「ビュ、ビュ……」
距離を取った『結界石の守護者』はバリアを展開した状態で全身を丸める。
「ビュッロオオオオォォォウウウウゥゥゥ!!」
そして大きな叫び声を上げると共に全身から炎を噴き上げ……
「足掻きにしては盛大過ぎるだろう……」
「なっ……」
「ーーー!?」
広場の端の壁が見えなくなるような量と大きさの火球を一斉に生み出す。
その総数は明らかに100を超えている。
「ビュロウ!」
「シア!」
「『カースウッドキング・フォースハウル』!」
『結界石の守護者』が指示を発すると同時に、火球のおよそ三分の一が俺たちに向かって突っ込んでくる。
対する俺たちは今までネクタールに包まれて姿を隠していたシアが表に出て、『カースウッドキング・フォースハウル』を発動。
シアを中心点として無数に生じた木の根によって火球を迎撃、爆破させることで凌いで見せる。
「ビュロウ!!」
「次は俺たちだ!」
「ーーーーー!」
シアの生み出した木の根が消えると同時に、次の火球が、総数の三分の一程が俺たちに向かって迫り始める。
なので俺はシアをネクタールで包んで安全を確保しつつ、斧とリジェネシルバークリス、そしてネクタールの槍で大きな火球を迎撃し、残りは受け止めることによって、残りのHPが最大値の30%を切りつつも、これを凌ぐ。
「ビュウウゥゥロウッ!」
「掴まれ!」
「はいっ!」
最後の三分の一が俺たちに向かって突っ込んでくる。
だから俺はシアを背中に乗せると、真っ直ぐに、既に周囲の暗闇の中に逃げ込みつつある『結界石の守護者』に向かって突っ込んでいく。
「トドメを……」
進路を邪魔する火球にはリジェネシルバークリスを投擲することで破壊。
暗闇は俺たちの背後の地面に着弾しようとする火球の進路を『結界石の守護者』が変えようとしてくれているおかげで繋がりが生じ、その繋がりから『結界石の守護者』の位置を見れる俺には関係なかった。
「刺してやる……」
「ビュロ!?」
俺は暗闇の中に潜む『結界石の守護者』の前に立つ。
そして左手に五寸鬼瓦を填めたままの状態で、両手で八尺円棍を、右手と八尺円棍の間に一里吼札を持ち、振りかぶる。
「行くぞ……」
手の内で一里吼札が燃え上がり始め、その効果によって『結界石の守護者』が俺に向けるヘイトが著しく強くなる。
強くなったヘイトを八尺円棍が吸い上げ、その重量と硬度を一気に増大させようとする。
そんな八尺円棍の力を五寸鬼瓦が吸収し、俺の力として体内に取り込む。
そして俺自身は体内に取り込んだ力を魔力に精製、赤黒いまるで炎のようになった魔力を八尺円棍の先へと集めていく。
「ビュ……」
それはまるで巨大な斧のように見える魔力の刃であり、この光景に対して俺は自然と一つの名が頭の中に思い浮かんでいた。
「『フォボス』」
だから、その名を紡ぎながら俺は振り下ろした。
「ビュ……ロオオオォォォ……」
そうしてもはや爆発音としか思えない音と共に南瓜型の頭部を打ち砕かれた『結界石の守護者』のHPバーは尽き、その場で倒れた。
04/01誤字訂正




