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【AIOライト 61日目 13:02 (満月・晴れ) ケイカ北坑道】
「ふぅぅ……」
戦闘開始から一時間ほど。
『結界石の守護者』との戦いはまだ続いていたし、決着がつくのもだいぶ先になりそうだった。
「ビュ……」
「試すか」
と、ここで残りHPが最大値の60%を切った『結界石の守護者』がバリアを張る構えを見せる。
その為、俺もインベントリから取り出したポイズンボーンダートを投擲する構えを見せる。
「ロオオォォン!」
「ふんっ!」
そして『結界石の守護者』がバリアを張ると同時に、俺もポイズンボーンダートを投擲。
動きを止めていた『結界石の守護者』には難なく着弾し、展開された半透明の青い膜は1秒にも満たない時間で割れるようなエフェクトと共に解除される。
「ビュ!?ビュロロロオオォォ!」
「来るぞ!」
「はいっ!」
「ーーー!」
バリアを即座に解除された事に流石の『結界石の守護者』も驚きを見せる。
が、即座にこちらに攻撃を加えるべく、突っ込んでくる。
なので俺たちもそれに対して反撃。
ネクタールが槍で相手の攻撃を牽制している間に、俺の魔力を込めた斧とシアの『アブソーブ』を打ちこみ、『結界石の守護者』にダメージを与える。
「ビュロー!」
「逃がすか!」
やがて『結界石の守護者』はスタミナを回復させるべく、牽制の火球を放ちつつ、暗闇の中に退こうとする。
対する俺は追いかけはせず、魔力を込めたリジェネシルバークリスを投擲、命中させる。
それはダメージではなく回復力低下のデバフを入れる事を目的としたものだったが……
「ちっ、流石に入らなくなってきたか」
「免疫……ですね」
「ああ、そうだ」
『結界石の守護者』に状態異常が入る事は無かった。
どうやら同じ状態異常を何度も続けていれると、やがてそれを受ける側に耐性がついて、状態異常が入りづらくなる現象……最近のプレイヤー間で俗に『免疫』と呼ばれる現象が『結界石の守護者』に起きてしまったらしい。
この仕様自体はプレイヤー側も恩恵を受けているのでありがたいものだが……今の状況だと辛いな。
「ビュロロロ……」
「さて、どれくらい回復されるか……」
「与えたダメージの半分は覚悟していいと思います」
「まあ、そうなるか」
今の『結界石の守護者』の残りHPは最大値の60%ほど。
此処まで削るのに一時間。
単純計算ならば残りのHPを削るのに一時間半ほどかかる……が、実際の所はそれ以上にかかるだろう。
なにせ少しずつではあるが相手のHPは回復しているのだから。
つまり二時間かそれ以上はかかると見ていい。
「バリアを気にしなくていいのが幸いだな」
「ポイズンボーンダートで解除できたという事はそう言う事ですよね」
「ああ、普通のバフって事だ」
『結界石の守護者』が張るバリアについては気にしなくてもいい。
今の攻防でレア度:PMである五寸鬼瓦は勿論の事、レア度:2であるポイズンボーンダートが持つ特性:ディスペルで解除できると分かったのだから。
そして次に張ってくるタイミングについても、残りHPが最大HPの80%、60%で張って来たのだから、だいたい読める。
つまり、普通に行けば後2回で、どんなに多く見積もっても後5回と言う所だろう。
「ビュロロロ!」
「さて、そろそろ来るぞ……」
「はい、マスター」
暗闇の中から『結界石の守護者』の声と共に無数の火球がこちらに向かって飛んでくる。
なので俺はシアを自身の陰に隠しつつ、火球に合わせて突っ込んでくるであろう『結界石の守護者』に備える。
「ビュ……」
「き……」
そうして火球が俺に当たる直前。
「ロヴッ!」
「っ!?」
火球の間を縫って迫ってきた何かが俺の額を打つ。
「マス……」
「な……」
何かは……礫と呼ばれるような小石を繋げて作られた鞭のようなもの、つまりは『結界石の守護者』の身体である蔓の一本。
「に……」
予想外の一撃であったためなのか、俺の受けたダメージは大きく、さっきまで90%以上残っていたHPが残り60%近くにまで減っている。
おまけに俺の残りHPを示すバーの下には、気絶を現す表示が出ている。
加えて……『結界石の守護者』が放った火球はまだ俺に着弾しておらず、『結界石の守護者』本体が俺の方に向かって来ているのが、暗くなっていく視界の中で見えていた。
つまり、このまま完全に気絶してしまえば、後は為す術もなく蹂躙されるという事であり……早い話が絶体絶命のピンチと言う事だった。
「タア……」
そう、絶体絶命のピンチだ。
状態異常:スタンはノイズやペインと違って、俺自身の精神ではなく肉体の方を封じに来ている。
それはつまりシステムで縛られていない精神ではなく、システムに縛られている肉体への拘束。
気合や根性で無視することが不可能な拘束と言う事だ。
「ビュ……」
だから落ち着く事にした。
「あ……」
落ち着いて、目の前の脅威など存在しないと思い込んで、この場が自宅の寝床であるように思って、それだけに集中することで特性:バーサークを全開にする。
そう、システムに従って状態異常:スタンを解除するために、回復力による自然回復速度のブーストが最大になるように。
一秒にも満たないこの時を一夜と言う長さの時に感じるように。
ただ、落ち着いて、安らぐ。
「ロ……」
そうして無事に状態異常:スタンが解除されたところで……
「つお……」
意識を、感じる時の流れを、元の戦いへと戻す。
戻して特性:バーサークを戦いの方面に向けて抗魔力を高め、火球の全てを万全の心構えと体勢で受け切る。
そして受け切ると同時に右手の斧を『結界石の守護者』に向けて突き出し始め……
「らああああぁぁぁぁ!!」
途中で乗せられるだけの魔力を乗せた八尺円棍に武器を変更。
巨大な刃のようになった魔力の矛先で以って真正面から『結界石の守護者』の頭部を刺し貫こうとする。
「ロバアアアアァァァ!?」
「あ?」
「ちっ」
が、流石はボスと言うべきか、パンプキン種モチーフと言うべきか。
完全なカウンターかつ不意討ちだったにも関わらず、削れたHPは最大値の5%程で、おまけに刺し貫く事は出来ず、暗闇の中に吹き飛んだだけだった。
「気合を入れろよ。シア、ネクタール。どうにもここからが本番みたいだからな」
「は、はい!マスター!」
「ー、ーーーー!」
まあいい、一度凌げれば、そう言うのがあると分かっていれば幾らでも対処は出来る。
だから俺は再び構える。
次はその頭をカチ割ってやると言う意思を滲ませながら。




