313:61-3-S3
「「「……」」」
俺の想像した通り、戦いは長期戦の様相を呈している。
つまり、基本的に俺たちの側は待ちに徹し、『結界石の守護者』が放ってくる火球の散弾は耐え、火球に合わせて接近攻撃を仕掛けてきた所で反撃を行うという形だ。
「ビュロロロオォウ!」
「ふんぬっ!」
「『アブソーブ』!」
そして今もそうだった。
火球の散弾が俺に着弾するのに合わせて暗闇の中から『結界石の守護者』が鳴き声以外の音もなく飛来。
俺に攻撃を仕掛け、それに合わせて俺とシアも攻撃をする。
「ふんっ……」
「ビュロ……」
そしてこのやり取りの結果、俺が受けたダメージは火球の分を合わせても最大HPの10%にも満たない。
『結界石の守護者』が受けたダメージは最大HPの5%未満。
このダメージ量なら俺のHPは容易く自然回復するが、既に暗闇の中に引く姿勢を見せている『結界石の守護者』のHPも次の攻撃までにはまた幾らか回復しているだろう。
「毎回ただ逃がすと思うな!」
「ビュッ!?」
だから状況を動かすための一手として、暗闇の中に引いていく『結界石の守護者』に向けて俺は魔力を込めたリジェネシルバークリスを投擲、命中させる。
『結界石の守護者』のモデル元であるパンプキン種の能力によって与えたダメージこそ微々たるものだったが、特性:リジェネの効果によって回復力低下のデバフをかけることには成功する。
「よしっ」
「これで少しは効率が良くなりますね」
「だなっ……っと!」
回復力が低下すれば、HP、MP、スタミナ、状態異常全ての自然回復速度が落ちることになる。
それはつまりこちらが与えたダメージが回復するのに時間がかかるようになるだけではなく、一度に行える攻撃の量や質が落ちることにもつながると言う事である。
「大丈夫ですか?」
「ああ、問題ない。それと明らかに数が減ってる」
故に、今までと同じように攻撃を行おうと『結界石の守護者』が考えるならば、火球の数を減らしたり、移動のスピードを落としたりする必要がある。
攻撃力や抗魔力の低下程の劇的な効果はないが、回復力低下も中々にエグイ状態異常ではあるのだ。
尤も、俺のリジェネシルバークリス程度では発生率含めて効果は微妙なようだが。
「ビュ……」
「すぅ……」
と、再び『結界石の守護者』が暗闇の中から姿を現す。
「ロッバァ!」
「せいやっ!」
そして、再びお互いに攻撃を打ちこみ合う。
俺のHPは問題ない。
『結界石の守護者』のHPは……これでようやく80%と言う所か。
「ビュ……」
「ん?」
お互いの攻撃が終わり、幾らかの距離が出来た所で『結界石の守護者』は今までに見せた事のない構えを……自らの身を屈めるようにしつつ、両腕を自分の胸のあたりで交差するポーズを取る。
そのため、俺も相手がどんな攻撃をしてきてもいいように身構え、シアとネクタールも相手の攻撃に備える。
「ロオオォォン!」
「うげっ……」
「これってまさか……」
「ーーーーー……」
『結界石の守護者』が両腕を開く。
それと同時に『結界石の守護者』を囲むように、半透明の青い膜のようなエフェクトが表示される。
事前情報にも有った『結界石の守護者』の固有能力、何かしらのダメージ無効化である。
「ビュロロロォォウ!」
「上手くいってくれよ!」
『結界石の守護者』が俺に向かって突っ込んでくる。
対する俺は五寸鬼瓦を填めた左腕を軽く引く。
「ふんっ!」
「ビュロウ!」
攻撃はほぼ同時。
お互いの腕を交差させるクロスカウンターに近い形で、俺と『結界石の守護者』は相手の顔面を殴り付ける。
「ぬぐっ……」
「ビュロ……」
ダメージはお互いない。
だが『結界石の守護者』の周囲にあったエフェクトは消滅している。
どうやら上手くいったらしい。
「ビュロロロォォウ!」
「はぁっ……」
『結界石の守護者』は暗闇の中に退散していく。
対する俺も、武器を構え直す。
「マスター、今の結果からして……」
「ああ、そうじゃないかとは思っていたが、五寸鬼瓦で吸えたなら間違いない。アレはバフの一種、特性:ディスペル関係で剥せる」
再びこちらに向かって牽制と削りを兼ねた火球が飛び始める。
対する俺たちは火球を迎撃しつつ、先程のクロスカウンターに関しての認識を共有する。
そう、先程のクロスカウンターは、僅かではあるが俺の方が相手に触れるのが早かった。
だから、五寸鬼瓦の効果で『結界石の守護者』の張った何かは吸収され、俺に吸収された何かは『結界石の守護者』の攻撃によって解除されたのだった。
「後の問題は防ぐのが回数なのか量なのかって所だが……」
「量の方が妥当だと思います。回数だと五寸鬼瓦での攻撃とは言え、一回で剥がれるのは少々どうかと思いますから」
「ま、そうだよな」
何か……敢えて仮称を付けるならばバリアとでも言うべきものの詳細は分からない。
確かなのは受けるダメージを減らす、あるいは無効化してくるという事。
本来ならばパンプキン種の堅固さも相まって、解除には相当の苦労を有しそうな物だが、五寸鬼瓦とポイズンボーンダートがある俺たちならばそこまで気にする必要は無さそうである。
「ビュロロ……」
「マスター。地道に行きましょう。今のが一度だけとは限りませんから」
「そうだな。地道に行くとしよう」
既に想定通りの長期戦にはなっている。
ならば後は如何にこちらのペースを崩さず、相手を削るかである。
俺たちはそう判断すると、再び『結界石の守護者』が姿を現すのを待つ事にする。




