316:61-6-S6
『かつてこの地で人々は栄華を極めた』
『栄華を極めたが故に彼らは滅びた』
『彼らは知らなかった。自分たちを守るそれにとって、不和こそ最大の毒であるという事に』
『彼らは気づかなかった。腸から濁流の如く押し寄せる悪意の波に』
『彼らは理解できなかった。自分たちの身にどうしてこのような事が起きたのかを』
『そう、彼らは栄華を極めたが故に怠惰に至ってしまった』
『そして滅びの後に世界は選んだ。力無き者に守護の力を、隔絶の力を渡さない事を』
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【AIOライト 61日目 15:21 (満月・晴れ) ケイカ北坑道】
「ふぅ……」
まるで爆炎のように広がっていった俺の魔力が『結界石の守護者』が残していった火球を爆散させる中、『結界石の守護者』を倒した事に伴うメッセージは流れていった。
なお、『結界石の守護者』の置き土産が俺たちに向かって動き続けていた事から分かるように、メッセージが流れている間はまだ戦闘中であり、俺たちの身体も自由に動かせた。
なのでまあ……油断していると、倒したと思って浮かれているところに『結界石の守護者』の置き土産が直撃して、死に戻りさせられるのだろう。
地味だが厄介なGMの悪意である。
「あの、マスター。今のは……」
「ん?ああ、今のはどうしてケイカが滅んだのかについてだな。まあ、簡単に言ってしまえば、仲違いはするなって事だな」
しかし、実に皮肉が利いたメッセージである。
普通に進めたならば、ミスリルやダマスカスの件で散々他のプレイヤーやPTとの不和が生まれたであろう状況の後に、このメッセージが流れるのだから。
「いえ、そちらではなく、マスターが最後に放った一撃の方です。『フォボス』……とか、言ってましたけど……」
「ああ、そっちの方か。『フォボス』については……」
と、どうやらシアが訊きたかったのはメッセージについてでは無かったらしい。
と言うわけで、俺は周囲に危険が無い事を確認すると、回復力溢れる灯りの札を使って光源を確保してから話す。
「簡単に言ってしまえば、シュヴァリエとの決闘の時にやったアレを魔力の刃と言う形で、攻撃力に変換したものだな。名前についてはなんか思いついたから適当に付けた」
「え、えー……」
よく見れば俺の残りHPは10%を切っていて、MPの方も残りは僅かだった。
どうやら『フォボス』で集めたヘイトが反動という形で俺の身体にもダメージを与え、大量の魔力放出がMPの消費と言う形で現れているらしい。
八尺円棍の耐久度も……うん、拙い事になっているし、安全圏に行けたら回復をした方がいいな。
「さて、この後は……」
で、ボスを倒した以上は何かしらのインフォが流れると思うのだが……
【ゾッタたちは結界石を手に入れた】
【ゾッタは『結界石の守護者』の礫蔓を手に入れた】
「ああ、手に入ったな」
うん、ちゃんと流れた。
と言うわけで、俺は手に入れた二つのアイテムの詳細を早速見てみる。
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結界石
レア度:3
種別:素材
耐久度:100/100
特性:プレン(特別な効果を持たない)
結界石と呼ばれる乳白色の石。
迷宮の深部にて手に入る菫青色の真球と錬金することによって、自らと敵対する存在が入れない領域を造り出す神秘の石。
また、携帯錬金炉を用いて前述の錬金を行う事で、携帯可能な自分だけの工房を得ることが出来る。
▽▽▽▽▽
△△△△△
『結界石の守護者』の礫蔓
レア度:3
種別:素材
耐久度:100/100
特性:プレン(特別な効果を持たない)
パンプキン種モデルの『結界石の守護者』の礫を繋げて出来た蔓。
強い守りの力が秘められており、主の意思がなくなってもなお、ただの石に戻る事はない。
▽▽▽▽▽
「ふうむ」
「良さそうな素材ですか?」
「ああ、かなり良い素材だと思う」
『結界石の守護者』の礫蔓については、シアの杖の強化に使えるだろう。
繋がりこそ見えないが、見た感じとして相性が良さそうな気配はするからな。
「たちに……携帯錬金炉に……自分だけの……ねぇ」
「マスター?」
いやはやしかしGMの悪意が此処にもにじみ出ているな。
まさか仲良くしろと言った直後に不和の種を再び投下するとは思わなかった。
なにせインフォを穿って見れば、結界石が手に入るのは1PTにつき一つ。
だがホムンクルスの核を真球で入手するためにはボスをソロで攻略しなければならない。
いや、この点についてはもしかしたらで思いつく打開策があるが……携帯錬金炉の部分については完全に狙って来ているだろう。
PTの中で拠点の主という立場にある者と、そうでない者との差を作るという方向で。
「いや、俺たちには関係ない話だ。気にしなくていい」
「は、はあ……」
尤も、俺には無関係の話である。
なにせ俺のPTに居るプレイヤーは俺だけで、俺がシアとネクタールを追い出すことなど有り得ないからだ。
【固定ダンジョンケイカ北坑道をクリアしました】
【ダンジョンの入り口に移動するための扉が設置されます。好きなタイミングで退出ください】
「ふむ」
と、此処で再びのインフォ。
どうやら脱出は好きなタイミングでしていいらしい。
そして、他にインフォはないようだった。
まあ、レベルについてはボス戦の直前に上がっていたので、当然と言えば当然だが。
「どうしましょうか?マスター」
「暫く休憩していこう。流石に此処で死に戻りは御免だ」
「分かりました」
さて、『結界石の守護者』との戦いの結果、俺のHPとMPは完全に危険域である。
と言うわけで、俺たちはしばらく休んでからこの場を後にした。




