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【AIOライト 59日目 12:15 (4/6・晴れ) 鉱山街・ケイカ】
「それでマスター。昼食後はどうするつもりですか?」
「んー?」
一通り装備を作り終った後、時間も丁度いいと言う事で、俺たちはそのまま昼食に移行していた。
勿論、シュヴァリエも俺たちと一緒に食事をとっている。
「そうだなぁ……」
俺は衝立の向こうへと軽く意識を向ける。
するとどうにも、この時間殆どのプレイヤーは午後に向けての話し合いをしているか、攻略の為に外に出払っているかのようで、ケイカ支部の地下部分はかなり静かだった。
時折、携帯錬金炉で錬金をしている音や話し合いをしている声が漏れ聞こえてくるくらいだ。
で、シアの質問に対する答えとしては……
「一応、ダマスカスの方を確認しておきたいという気持ちはあるな」
「一応、ですか」
「ああ、一応だ。性能についてはだいたい予想がつくしな」
「予想がつく……ですか」
こういう事になる。
実際、番茶さんの情報によれば、木目鉱石ことダマスカスは鉄の純粋強化に近い代物。
それがミスリルと対を為すのであれば、付加効果として考えられるのは攻撃力や防御力の強化となる。
では、一つしか入れられない付加効果を、今の俺の装備に入れる隙間はあるだろうか?
答えは単純明快。
そんな隙間はない、だ。
で、その辺りを説明してみたところ、シアは不思議そうな顔をする。
「あの、それってわざわざ取りに行く必要があるんですか?」
「だから一応と言っている。人伝手で聞いただけじゃ分からない事があるかもしれないし、例の繋がりが見える可能性もあるからな。はっきり言って、無いよりは有った方がと言う感じだな」
「なるほど」
実際、手に入らなければ、それはそれで構わないのだ。
どの道、木目鉱石を手に入れるまでに少なくない数の戦闘はこなす事になるし、戦闘を行い、勝利すれば、戦闘レベルへの経験値と何かしらの素材が手に入る。
それは十分、得に行く価値のあるものであると言えるだろう。
「となるとケイカ南坑道に移動。新しい松明と、松明代わりになる照明を確保。その後、ケイカ南坑道の探索を開始。と言う事になりますか?」
「そうだな。だいたいそんな感じになると思う」
と言うわけで、この後の行動についてはこんな感じで決定である。
後は、だ。
「それで、シュヴァリエはどうするんだ?」
「ん?僕?」
シュヴァリエがどうするかである。
「既に丸二日半一緒に行動しているからな。見たい物はだいたい見れたと思っているんだが?それに装備も整っているだろう」
「まあ、確かにPM錬金みたいな例外を除けば、だいたい見たい物は見れたかな。装備の方についても確かにそうだね」
「キュイ」
「カァ」
俺は改めてシュヴァリエたちの装備を見る。
俺の横で、俺と同様にミスリルを使った錬金をしていたシュヴァリエの装備は、全体的に銀色に輝いており、それまでの防具に比べると、見た目からして防御力が高まっている感じがある。
そしてミスリルの性質から考えるに、シュヴァリエの売りである俊敏性は一切損なっていないだろう。
また、シュヴァリエのホムンクルスであるヴィオとバルも銀色の装飾品を身に着けており、それが具体的にどのような効果を示すのかは分からないが、戦力の向上に繋がっている事だけは間違いないだろう。
これならば、立ち回りにさえ気を付ければ、この辺りでも単独行動は可能なはずだ。
「つまり、お前が俺に付いて来る理由は既にない。俺としてはそう判断しているんだが、どうなんだ?」
と言うわけで、後はシュヴァリエの意思次第という事になる。
「うーん、そうだね。確かに付いて行く意味はもうないかもね。ただ……」
ただ……この時の俺はシュヴァリエの渾名を忘れていた。
「一度師匠と戦ってみたい。と言うのは有るかな」
「えっ!?」
「キュイ!?」
「カアッ!?」
「……」
そう、『決闘厨』と言うシュヴァリエの渾名を。
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【AIOライト 59日目 12:58 (4/6・晴れ) 鉱山街・ケイカ】
「はぁ……」
幸い……と言っていいのかは分からないが、決闘をするための場所は簡単に確保できた。
と言うのも、俺たちが錬金作業をしている間にケイカ支部に辿り着いたプレイヤーの数がまた一定数を超えたのだろう。
気が付けば地上部分から地下部分に繋がる階段の数が二つに増えると共に、その階段の陰に隠れる形で更なる地下部分に通じる階段が生じていた。
そして、その先には地下闘技場とでも言えばいいのだろうか、観客席となっている周りより一段低くなった、直径が50メートル程の地面が剥き出しのフィールドが用意されていたのである。
だから、準備を整えた俺たちはそこを利用することに決めた。
「全くなんでこんな物が……ああいや、それ以上にだ……」
まあ、どうしてこんな物があるのかは分かる。
単純に新しい装備の素振りをする際に、安全に振れる場所としてもこういう場所は必要であるし、揉め事が起きた際に、殴り合いで決着をつけてしまった方が後々の都合がいい揉め事と言うのも有るからだ。
だから用意されていること自体は分かる。
「お前、どっちに賭けるよ」
「シュヴァリエ」
「シュヴァリエちゃん」
「決闘厨」
「ゾッタ負けろ」
「実力的にはゾッタ一択だけど賭けたくはない」
「何でこんなに暇人がいるんだ……」
だが、流石に俺とシュヴァリエの決闘を見に来るプレイヤーとホムンクルスが合わせて百人以上いるのは予想外だった。
どうにも賭けの対象にもされているようだし……正直、声を大にしてこう言いたい。
『お前ら、攻略はどうした!?』
と。
03/14誤字訂正




