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【AIOライト 59日目 10:07 (4/6・晴れ) 鉱山街・ケイカ】
「まったく。まるで給料日のATMだったな」
「えーてぃーえむ?」
「えーと、現実にある少額のお金をやり取りするための機械だったかな。僕は殆ど見た事が無いから、よく分からないや」
俺たちは錬金をするために倉庫ボックスで手持ちのアイテムの調整をした。
したのだが……時間はかなりかかった。
と言うのも、倉庫ボックスの数自体は五つに増量されていたが、それ以上に利用するプレイヤーの数が増えており、行列が出来てしまっていたのだ。
人数としては……十数人は確実に並んでいただろう。
「シュヴァリエ。そう言う発言は周りに居ない時だけにしておけよ。身バレに繋がる」
「ん?うん、まあ、師匠がそう言うなら」
しかも、これが現実のATMのようにお金の出し入れをするだけならばともかく、使っているのは倉庫ボックス。
何を取り出し、何を預けるのかを一つ一つ操作しなければいけないのだから、時間がかかるのも当然と言えるだろう。
まあ、それでも何とか一時間以内には俺もシュヴァリエもアイテムの出し入れを終えて、こうして地下部分へと戻って来れたのだから、良しとしよう。
「さて、それでシュヴァリエはどうする?俺は今日、普通の錬金しかしないぞ」
「あ、PM錬金はしないんですか」
「あ、師匠。今日は普通なんだ」
「……。まあ、したくても繋がりが見えないからな。アレなしじゃ、俺には無理だ」
「マスターが言っても微妙に説得力が……」
「繋がりねぇ……それでも一緒のエリアでやって、横で見させてもらうよ」
「そうか。まあ、好きにすればいいんじゃないか」
俺たちは他のプレイヤーが使っていない衝立で囲まれたエリアを見つけると、そこに錬金中の看板を提げておく。
これでよほどの長時間でなければ、問題はないだろう。
「じゃ、早速始めるか」
「はい、マスター」
「だね。僕も始めるよ」
と言うわけで錬金を開始する。
まずは普通の魔銀鉱石のインゴット化からだ。
『miThril s0leha hAganeyor1 tuYocu Karui maG1c kiNzokud3 alU』
「ふんふふーん」
まあ、これについてはケイカ北坑道の中でも何度かやっていたので、特に問題はない。
普通に魔力を注ぎ、普通に打ちこむだけだ。
そんなわけで出来たのがこれである。
△△△△△
回復力溢れる魔銀の鋳塊
レア度:3
種別:素材
耐久度:100/100
特性:リジェネ(回復力を強化する)
魔法銀を製錬し、扱いやすくしたインゴット。
魔法銀は軽く、強靭で、魔法の力を高める性質を持つとされる。
所謂、魔法金属の一つである。
▽▽▽▽▽
「うん、いい感じだ」
俺は出来上がった回復力溢れる魔銀の鋳塊を手に取ると、その様子を確かめる。
回復力溢れる魔銀の鋳塊は、色は銀、硬さは金属相応のそれ。
だが、重さは鉄よりも明らかに軽く、その内側には俺の魔力と反応する何か……魔法銀自体の魔力を感じ取る事が出来る。
うん、これならだいたいの物はアップグレードできる形で作れるな。
「よし、それじゃあシア。代えの服を渡すから、そっちに着替えてくれ」
「分かりました。マスター」
と言うわけで、俺はシアに服を渡し、代わりに今装備している防具一式を受け取る。
「じゃ、始めますか」
『m15uLirsenit0hA dreAmgaaLu a<motiL0n cAn0ud35uNYa』
そして錬金を開始。
胴、腕、脚の防具についてはミスリルを繊維状にして、今ある生地に織り込む形にしていく。
頭防具である髪飾りについては素材そのものをミスリルに置き換える形で錬金。
「よし出来た。シア」
「はい、マスター」
そうして無事にアップグレードされる形で出来上がったアイテムを俺はシアに渡し、装備してもらう。
「感じはどうだ?」
「感触や重さに変わりは感じないですね。でもそれって……」
「ああ、感触や重さに変わりがないなら大成功だ。それなら防御力の上昇に付加効果が付いた分だけ性能が上がっている事になるからな」
俺の前でシアは軽く跳んだり、回ったりするが、その動きに淀みのような物は感じられない。
ボンピュクスさんの優れたデザインについても、少しミスリルの銀が加わっただけなので、崩れていないと思う。
デザイン方面については俺の能力などたかが知れているので、確信を持っていう事は出来ないが。
「こうしてみると、ミスリルって本当に凄いんですね。ちゃんと金属の防御力を持っているのに、布や革で出来た装備品と重さが変わらないんですから」
「そうだな。明らかに今までの素材とはレベルが違う。たぶんだが、今後の後衛や遊撃のプレイヤーとホムンクルスにとっては装備の基本素材になるんじゃないか?それだけのスペックは持っているだろうし」
「そう考えると、採れる場所が混み合う前に回収出来た私たちはかなりお得ですね」
「まあ、それが先行者の特権でもあるしな。なんにせよ、シアが喜んでくれているなら何よりだ」
「はい、ありがとうございます。マスター」
シアは笑顔で俺に向かってそう言ってくれる。
うん、これだけでも作った甲斐があるというものだ。
「ようし、それじゃあ、残りの装備品もとっとと作るか」
だが、喜んで呆けている時間は適度にするべきだ。
なにせ、まだネクタールの武器と俺の防具にミスリルを入れなければならないからな。
と言うわけで、俺は少し気合を入れ直すと、作業を再開した。




