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【AIOライト 58日目 17:32 (半月・晴れ) 鉱山街・ケイカ】
「ふうん、どうやら三人ともだいたいのメッセージは同じものだったみたいね」
「みたいだな」
「違うのは……まあ、個人的な繋がりからのメッセージだし、この場では特に言わなくてもよさそうだね」
メッセージの確認は無事に終わった。
で、結論から言ってしまうと、殆どのメッセージは情報の集積場になっている番茶さんからの、各プレイヤーが得た情報をまとめた物だった。
「じゃ、とりあえず番茶さんには私からメッセージを送っておくとして……そうね。シアの為にも番茶さんからのメッセージ内容を一つずつ確認していきましょうか」
「分かった」
「だね、それでいいと思う」
「よろしくお願いします」
と言うわけで、俺たちはシアが作ってくれた夕食を食べつつ、情報の共有とすり合わせを始めることとする。
「まず第一にケイカの地理について」
「番茶さんが自分で集めた情報だね」
情報その1、ケイカの地理。
ケイカは北と南に大規模な鉱山を持つ街で、東西には高い城壁が聳え立っている。
街の中にはモンスターが大量に居るが、錬金術師ギルド・ケイカ支部を筆頭に、安全地帯として活用できる建物が幾つか存在する。
ここまでは俺たちも知っている情報だ。
「で、東の城壁だけれど……どうやら門、それに穴の類は無いみたいね」
「つまり、周りの山の急さ……と言うか崖になっている事を考えると、ケイカから東に向かって、ドウの地の中心部に行くことは出来ない。と言う事みたいだね」
「となると、何処からか回り込む必要があるという事ですね」
「そうなるわね。だから、城壁の向こうについては当分気にしなくても大丈夫だと思うわ」
新しい情報はここから。
ケイカの東にある城壁の向こう側に行く方法は分からない。
番茶さん曰く、壁には門や穴どころか、ヒビの一つすら見つからなかったそうだ。
ただ、距離が近づくにつれて、情報規制のような物が剥がれたのか、城壁の向こうで噴煙のような物が上がっているのと、点のような大きさではあったが、ドラゴンのように見える影が複数確認できたらしい。
つまり……まあ、城壁の向こうに行くのなら色々と覚悟をして行くように、という事なのだろう。
「第二にケイカ南坑道について」
「その名前の通り、ケイカの南にある鉱山だね」
情報その2、ケイカ南坑道。
俺たちが先刻まで潜っていたケイカ北坑道と対を為す場所だ。
情報提供者であるローエンと言うプレイヤーは……たぶん、あの剣を提げたプレイヤーの事だろう。
なお、ケイカ南坑道の深部にも北坑道と同じような扉があったらしい。
「ケイカ南坑道も基本的な構造みたいなものはケイカ北坑道と変わりないみたいね」
「違うのは採取出来るアイテムみたいだね」
ケイカ南坑道で採取できる鉱石は銅、鉄、金、そして木目鉱石ことダマスカス鉱石。
ダマスカスと言えば……確か現実にも存在している金属で、強力な金属でもあるはずの物質だ。
となれば、南北の坑道が対を為している事と合わせて考えると、ミスリル並の性能は持っていると考えていいはずである。
うん、ちょっと気になりはするな。
「興味がありそうですね。マスター」
「モグモグ……ゴクン。まあ、ミスリルとはまた別に有名で強力な金属だからな。気にならない方がおかしい」
なお、性能までミスリルと対を為すと考えた場合、ミスリルが軽くて魔法に関わる素材なのだから、ダマスカスは物理性能に秀でた素材であると考えられる。
となれば、武器についてはダマスカスの方がミスリルよりも適した素材である可能性は高い。
うん、これは明日辺り回収に向かうのも手かもしれないな。
「第三にケイカ北坑道の深部にあった扉について」
情報その3、俺たちが見つけ、トロヘルたちが調べに行った扉について。
この情報は重要だ。
だが同時に、この先の道の困難さもよく示していた。
「まず、扉に触れると、大方の予想通り、ボス戦に突入するわ。ただし、アライアンスは解体され、強制的にPT単位で挑むことになるみたい」
ボス戦は強制PT戦。
つまりアライアンスによる数の暴力は許されない。
まあ、PTと言っても『AIOライト』だとプレイヤー6人にホムンクルス12人までは普通に入るからな。
戦闘を行う場所のスペースを考えたら、それぐらいのが丁度いいのかもしれない。
「フィールドは真っ暗闇で灯りは必須。円形で、段差の類は特になし。だって」
「となると灯りの類は最低限あれば十分な感じですか?」
「そうね。灯りの重要性はそこまでではないわ」
灯りは……まあ、最悪、一番敵に肉薄して殴る物理攻撃役かタンクの誰かが持っていればどうにかなるのではないかと思う。
あくまでも基礎的なボス戦の情報を聞く限りでは、だが。
「今回のボスで厄介なのは、決まった対抗策を練れない点ね」
「対抗策を練れない?と言いますと?」
「今から説明するわ」
ボスの名前は『結界石の守護者』Lv.30。
その容姿は全身が石で出来た、所謂動く石像である。
問題は……石像のモデルになるモンスターの種類が戦闘になってみるまで全く分からないという事。
現に北坑道の守護者には既にトロヘルたち含めて三つのPTが挑んでいるが、被りは全くないようだった。
「それで結局トロヘルさんたちはどうなったんですか?」
「全員死に戻り。どうにもかなり頭が良い上に、何かしらのダメージ無効化手段を持っているみたいなのよね。それでじわじわと追いつめられて……やられたみたい。で、メッセージだと、惜しいところまではいったけど、装備を整えた方がいいだろうって事になったらしいわ」
「そうですか」
勿論、戦闘能力自体もかなり高い。
事前に練れる共通の対策が少ないこと含めて、かなり厄介な相手と言えるだろう。
「ゴクン。ま、トロヘルたちもその気なら、俺たちもまずは装備を整える方針でいいんじゃないか。特に急ぐ意味もないからな」
「そうね。それが良いと思うわ」
「まあ、そうなるよね」
そんなわけで、結論としては装備のグレードアップを進めるという事になった。
そして、装備のグレードアップを効率よく進めるためには欠かせない情報である坑道に居るプレンゴーレムのドロップ情報について、グランギニョルは番茶さんに送った。
「ところでゾッタ兄?」
「なんだ?」
「リジェネバットスープ。それで何杯目?」
「三杯目だな。心配しなくても、グランギニョルたちの分はちゃんと残ってるぞ」
「いやまあ、それなら別に構わないんだけど……」
「そう言えば、師匠あまり口を開いてなかったね……」
「マスター……」
「ん?」
なお、当たり前の事であるが、シアが作ってくれた夕食はとても美味しかった。
うん、これで明日も頑張れるな。
03/10誤字訂正




