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【AIOライト 56日目 13:52 (1/6・雨) 鉱山街・ケイカ】
「んー、あっさり脱出できたな」
「ちゃんと地図を読んで、最短ルートで抜けましたから」
ケイカ北坑道からの脱出はとても簡単な物だった。
まあ、シアがちゃんと地図を読んでくれた事を考えれば、当然の結果なのだが。
なお、俺たちが外に出た場所は、俺たちがケイカ北坑道に入った場所とはまた別の位置に作られた入り口であり、様々な物の関係で行きには気づかなかったが、一番街との行き来がしやすい入り口でもあった。
この入口を知っていれば、今後の坑道での鉱石回収もだいぶ楽になるだろう。
「と、色々来たな」
「あ、通信が復活したんですね」
と、ここでメッセージの着信を知らせる音が鳴り響く。
どうやら坑道の外に出たおかげで、通信機能が復活したらしい。
「誰からでした?」
「えーと、トロヘルに番茶さんに……グランギニョルからも来ているな」
「多くないですか?」
「たぶん、俺からの返信が無かったせいだろうな。幾らか間をおいて三つのメッセージが送られてきているし」
俺は周囲に敵影が無い事を確認すると、送られてきたメッセージの内容に目を通す。
「……」
「内容は?」
「簡単に纏めてしまえば、トロヘルたちは昨日の内に無事にケイカまで辿り着き、俺が掲示板に上げた情報から、全身鎧のNPCが居る建物に入る事は出来たらしい」
「ふむふむ」
「それで今朝になってだが……あー、例のメンテナンスの件で揉め始めたみたいだな」
トロヘルからのメッセージは無事にケイカへ辿り着いたことを示すもの。
番茶さんからのメッセージはトロヘルのメッセージを補足するように、誰が居るのかや今何処に居るのかを感謝の言葉とともに伝えるもの。
そしてグランギニョルからのメッセージは……今朝届いたGMからのメンテナンスのお知らせ、その内容によってアライアンス内で揉め事が発生している事を伝えるものだった。
「マスター、私は……」
「情報交換もあるから、番茶さんたちとは一度会う。だからその時に話をする機会はある。ただ、状況がどうなっているかはシア自身の目で確かめて、何をするかはその場で決めてくれ」
「はい」
グランギニョルのメッセージには揉め事が起きている以上の言葉は何も無い。
助けて欲しいとも、誰が強情だのとも、来ないでほしいとも書いていない。
当然、グランギニョル自身が次のメンテナンスについてどう考えているのかについてもだ。
だから俺もシアには何も伝えない。
何となくグランギニョルがどうなのかは分かっているが。
「これでよし、と」
とりあえず俺は三人にメッセージの返信を行っておく。
内容は返信が遅れた事への詫びに、坑道内では情報の送受信が出来ないという情報、それと今から三人が居る錬金術師ギルドのケイカ支部へと向かう事。
「それじゃあ、向かうぞ」
「はい、マスター」
「ーーーーー」
そうして俺たちは、ネクタールに隠れる事で街中を徘徊するモンスターたちの目を逃れつつ、ケイカ支部へと向かった。
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【AIOライト 56日目 18:02 (1/6・雨) 鉱山街・ケイカ】
「着きましたね」
「着いたな」
日が暮れた直後。
俺たちはケイカ支部の前に辿り着いた。
道中、多少はモンスターに絡まれたが、ネクタールの能力とシャーク種の習性を利用することによってほぼ被害なしで移動も出来ている。
これならば明日また鉱山に行くとしても比較的楽に移動できるだろう。
「じゃ、入るぞ」
「はい、マスター」
俺たちは周囲に敵影が無い事を確認すると、ケイカ支部の扉を開けて、素早く中に入る。
そして……
「「「……」」」
「「……」」
「お帰りなさいませ。こちらは錬金術師ギルド・ケイカ支部です」
ケイカ支部の中に立ちこめる澱んだ空気に俺は眉を顰めた。
「はぁ……かなり空気が悪いな」
俺は眉を戻しつつ、多少呆れた雰囲気を出す。
で、それと同時にこの場に居るプレイヤーとホムンクルスたちの様子を観察する。
「空気が悪い……か。否定は出来ねえな」
「『狂い斧』……」
見た感じでは建物内に居るプレイヤーは大きく分けて二つのグループになっている。
一つはトロヘルや番茶さんたちが所属するグループで、もう一つは俺の知り合いと言えるほど親しいプレイヤーは居ないグループ。
そして、グランギニョルとシュヴァリエは……どうやらどちらにも属さず、それぞれ一人で居るようだ。
「ま、何にしても、無事にケイカに到着できたようで何よりだ」
俺は適当に入り口横の座椅子に腰掛ける。
俺のこの行動に暗い視線を向けてくるのは……まあ、当然のように後者のグループか。
これでだいたい見えたな。
番茶さんたちはメンテナンス後も残り続けるつもりであるグループで、もう一つの集まりは脱出を望んでいるグループ。
グランギニョルはこの諍い自体を下らないと感じており、シュヴァリエは……たぶん悩んでいる。
「そう言うゾッタ君は北の坑道に行っていたとの事だが、何か成果は有ったのかな?」
「とりあえず結界石があるであろうボス部屋っぽい所とミスリル鉱石は見つけたな。上々の成果と言っていいと思う」
「「「おお……」」」
番茶さんの質問に返した俺の言葉によって、トロヘルたちの側にざわめきが起きる。
まあ、結界石はケイカで手に入る最重要アイテムで、ミスリルは少しでもファンタジーに詳しい奴なら必ず知っているであろう強力な素材だからな。
これぐらいの反応は当然だろう。
「ふんっ、何がミスリルだ。そんなもの脱出できれば、もう要らない物だろうが」
対するもう一つのグループからは……まるで唾でも吐き捨てるかのような言葉と共に、剣を腰に提げた黒髪の男性プレイヤーが出てくる。
どうやら、彼がもう一つのグループの代表者なようだ。
「ああ、そうだな。脱出を望み、攻略をここで止めようというお前たちには関係はない。だから……」
ではそろそろ、俺の意見を述べさせてもらうとしよう。
「黙ってろよ。引退プレイヤーさん」
「「「!?」」」
「はぁ、だと思ったわ」
「ですよねー」
ぶっちゃけ、お前らなんてどうでもいいと言う俺の意見を。




