280:56-4-S8
「周囲を警戒しろ。シア、ネクタール」
「はい、マスター」
「ーーー」
プレンバットは無事に倒した。
が、戦闘でかなり大きな音が出てしまった。
なので俺たちは音に反応したモンスターたちがこちらに近寄って来る事を考え、プレンバットの剥ぎ取りも行わずに周囲を警戒する。
「「「……」」」
暫く待ってみたが、周囲に物音や妙な気配の類はない。
どうやら敵を惹き付けてしまうようなことは無かったらしい。
「大丈夫……みたいですね」
「よし、剥ぎ取りをしよう」
俺たちはある程度周囲を警戒したまま、倒したプレンバットの死体を剥ぎ取り用ナイフで突き、剥ぎ取りを行う。
手に入ったのは……プレンバットの牙が一つに翼が二つか。
ちょっと牙について詳細を見てみるか。
△△△△△
プレンバットの牙
レア度:3
種別:素材
耐久度:100/100
特性:プレン(特別な効果を持たない)
プレンバットの口の中に在る牙。
切れ味は鋭く、細い溝が脇に存在しており、血を吸い上げられるようになっている。
▽▽▽▽▽
「ふむ……」
やはりと言うべきか、蝙蝠らしく吸血能力があるらしい。
つまり、これを武器に使えば吸収能力付きの装備が作れるのだろう。
まあ、今は装備が足りているので、特にそう言う物は作る必要はないだろうが。
「それじゃあマスター」
「ああ、奥に急ごう」
さて、剥ぎ取ったアイテムの詳細の確認も終わった。
そして、周囲に新たな敵影もない。
俺たちは安全を確認すると、再び坑道の奥に向かって移動を始めた。
----------
【AIOライト 56日目 10:43 (1/6・雨) ケイカ北坑道】
「もうすぐ例の場所ですね」
「だな」
敵を警戒し、時には戦い、倒し、採取ポイントを見つけては採取をしながら進むことおおよそ二時間。
俺たちは目標である地図に記されていた怪しい場所の近くにまでやって来ていた。
「案外時間がかかったな……」
「モンスターも罠もあった上に、道自体が複雑でしたから」
此処までに遭遇したモンスターはプレンバットの他、プレンアント、プレンスネーク、プレンモスといったところで、どれも本体の戦闘能力はそれほどでもなかったが、暗闇の中と言う環境をものともしなかったため、本来の実力以上に厄介に感じるモンスターではあった。
「罠か……まあ、あれは罠だよな」
「罠です。天然ものですけど」
罠もあった。
正確に言えば罠と言うよりはガスだまりと言った方が正しいものだが、他の場所よりも少し位置が低くなった坑道にガスが溜まり、通った生物のHPを減らす領域が出来上がっていたのだ。
なお、俺がガスだまりと判断したのは、その領域にある程度近づいたら松明の灯が途端に不安定になったからであり、シアが読み解いた地図にもその場所にはしっかりとドクロマークが記されていた。
やはりと言うべきか、ドクロマークは危険である事を示すマークであるらしい。
「帰り道は大丈夫だよな?」
「はい、大丈夫です。しっかりと確認してあります」
道の複雑さについては言うまでもない。
坑道内の構造を表した地図は、シアに読み方を教えてもらってもなお俺には読み解けない物であったし、しかも幾つかの道は落盤事故によって通る事が出来なくなっていた。
幸いにしてどの落盤事故も起きたのはだいぶ昔のようだったが、それでももしも自分たちの上で起きたらと思ったら身震いはせざるを得ない物だった。
「さて、それじゃあ目標の様子はっと……」
だが成果は有った。
採取を行い続けた結果、リジェネシルバークリスは1スタック……99本出来、魔銀鉱石も前日までの入手分合わせて4つ手に入った。
どうにかして、この魔銀鉱石は持ち帰りたい所である。
「……」
「どうしました?マスター」
さて、後は結界石が持ち帰れるかどうかだが……どうやらそう簡単にはいかないようだった。
「扉……ですか」
「シア、これ以上は近寄らないでおけ。強制的にイベントが進んでも面倒だ」
「はい、マスター」
俺たちの持つ灯りに照らされた先には、太い鎖と錠前によって厳重にロックされた金属製の扉が、坑道とその先の空間を隔てるように設置されていた。
「たぶんボス……ですよね」
「だろうな。こうして前に立っているだけでも、何かしらの気配は感じる」
扉に触れればまず間違いなくイベントが始まり、それに合わせて戦闘の方も始まるだろう。
なにせ扉の先からは明らかに嫌な気配が漂ってきているし、そもそもとして扉の意匠それ自体が自動生成ダンジョンのボス前の扉を思わせるものになっている。
むしろこれだけ要素が揃っているのに、ボスが居なかったら拍子抜けなぐらいだ。
「どうしましょうか?」
「流石に魔銀鉱石を失うリスクは冒したくないな。まだ4個しか手に入っていないし、錬金したい物の量を考えるとこの4個も失いたくはない」
「なるほど。それじゃあ……」
坑道で魔銀鉱石を手に入れるまでは死に戻り覚悟で挑んでもいいと思っていた。
が、魔銀鉱石の希少性と有用性を考えたら、死に戻りは避けたいと言う考えにならざるを得なかった。
「ああ、撤退しよう。今は挑むべきときじゃない」
「分かりました。それじゃあ帰りましょうか」
「ーーー」
そうして俺たちはシアが読み解いた地図を基に移動を開始。
無事にケイカ北坑道の入口にまで戻ったのだった。




