↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
AIOライト  作者: 栗木下
5章:首架け橋

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

270/621

270:54-7

「居る……あれ?」

「どうした?シア」

 制裁用NPCが姿を消すと同時に、世界は元の色と共に早さを取り戻す。

 で、俺はと言えば、世界が元に戻る前にシアの横に移動していた。


「え?あれ?」

 当たり前と言えば当たり前の事だが、シアの目には今の状況がよく分からない物、訳が分からない物として映っているらしい。


「あのマスター、さっきまであっちに……」

「居たな。けどすぐにシアの横に戻ったぞ?」

「え?でも……あれ?」

 シアの視点から俺の動きを見た場合、どう見えていたのか。

 これは想像でしかないが、シアから見た場合、俺が過程を見せない形で行ったり来たりしているように見えていたのではないのだろうか。

 つまり、所謂テレポーテションが発生していたようにシアの目には見えていたのではないかと思う。


「あのマスター。黒い輪っかみたいな物を持っていませんでしたか?」

「ん?何の事だ?」

 GMからも注意されているので、エファス・フォ・エフィルの黒輪については黙っておく。

 実際、話したところで百害あって一利無しだろうしな。


「いやー、しかし急にラグくなるとは。こういう事もあるんだなぁ」

「は?ラグ?」

 さて、この件については何も言わずに有耶無耶にしてしまうより、適当なカバーストーリーでも話して誤魔化した方が色々と都合がいいだろう。

 と言うわけで、俺は咄嗟に考えたカバーストーリーを話し始める。


「そう、ラグだ。怖いぞー、ラグは。移動中にテレポったりリバったりするぐらいならまだいいけれど、戦闘中に見えない一撃とか伸びる一撃とかされると本当にツラいんだよなぁ。ああ、一世代前のFPSだと相打ちになったりもしたな」

「は、はあ……」

 俺はシアからネクタールを受け取り、装備し直しつつ、畳み掛けるようにラグについて話す。

 なおネクタールについては……たぶん、俺との繋がりもあるから色々と気づいている。

 だから俺はネクタールに何も喋るな……ああいや、表現するなと言った方が正しいか。

 とにかく口止めを命じて大人しくさせておく。

 たぶん、ネクタールについては次から俺と一緒に狙われるだろうしな。


「と言うわけだ。ラグの恐ろしさはよく分かったな。シア」

「は、はい……何とか」

「ならばよろしい」

 そうして畳み掛け続けること暫く。

 シアはラグと言うものの恐ろしさを理解し、俺が有り得ない移動をした事に納得をしてくれたようだ。

 うん、これでこの件については問題ないな。


「さて、もう日も暮れてしまったしな。とっとと街の中に入るとしよう」

「そうですね。そうしましょうか」

 では、話も終わったところで、あの城壁のようなものの向こうに行くとしよう。

 幸いにして城門も開いているようだしな。

 今晩はきっと安全な場所で眠れるだろう。



----------



【AIOライト 54日目 18:16 (1/6・晴れ) 鉱山街・ケイカ】


「「……」」

 今晩は安全な場所で眠れる。

 そう思っている時期が俺にも有りました。


「あのマスター……」

「あー、まあ、世界の守護は無いとか言っていたしな。これぐらいは想定しておくべきだったかもしれない」

 俺たちが辿り着いた場所の名前は鉱山街・ケイカ。

 山と山の間に作られ、石造りの建物が立ち並び、山には坑道の入り口と思しき穴が幾つも開いている街だ。

 いや、より正確に言えば……街だった、と言うべきだろう。

 と言うのもだ。


「「「ガア、ガア」」」

「キキューイファファファ」

「キュコーン」

「「「グルルルル……」」」

「「フシュルルル……」」

「ブンモッフ、ブンモッフ」

 街の中を大量のモンスターが徘徊し、自動生成ダンジョンの入り口である白磁の扉が幾つも見えており、それに合わせるように住民の影が一切無かったからだ。

 うん、これはもう街ではない。

 街だったものだ。


「どうします?」

「幸いにして見つからずに移動することは難しくないしな。今日は出来るだけ安全そうな場所のダンジョンに入って……」

 いずれにしても今日はもう寝床を探す時間。

 と言うわけで、俺とシアはネクタールに隠れつつ周囲の様子を探る。

 そうして調べている内に気づく。

 幾つかの建物から妙な気配がする事を。

 そして、その建物の存在にモンスターたちがまるで気付いている様子が無い事を。


「マスター?」

「どうやら最低限の機能は生きているらしいな」

「へ?」

「こっちだ」

 俺はシアを連れて妙な気配がする建物の一つの扉の前まで移動。

 ゆっくりとその扉を開ける。

 扉の向こうに待っていたのは?


「いらっしゃいませ。こちらは錬金術師(アルケミスト)ギルド・ケイカ支部です」

 出迎えてくれたのは各部にフリルやリボン、スカートといった何処か女性的な要素を飾りつけた全身鎧の何者か。

 その声は機械的な音声であり、性別を窺い知る事は出来ない。

 が、少なくともこちらにとって友好的な存在である事だけは間違いないと言い切れる声音をしていた。


「まあ、正確に言えば元錬金術師ギルド・ケイカ支部。機能の大部分は機能不全を起こしており、使えない。そんな壊れかけの安全圏です。それでもよろしいのでありましたら、どうぞご自由にお使いくださいませ。道具として生み出された以上、どんな形であっても使っていただけるのは最大の幸福でございますから」

 そう言い終えると、全身鎧のNPCは静かに一礼した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。