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AIOライト  作者: 栗木下
5章:首架け橋

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269/621

269:54-6-X5

【AIOライト 54日目 17:58 (1/6・晴れ) ドウの地・西の荒野】


「マ、マスター!?どうしてそんな場所に!?」

 恐らくシアの目には俺が瞬間移動したように見えているのだろう。

 俺がエファスと戦っていた時間は、シアの主観だと1秒あるかどうかのようだしな。


「あー、それなんだが……やっぱり来たか」

 で、俺個人としては直ぐにでもシアの下に帰れた事を喜び合いたいのだが……どうやら、先にやるべき事があるらしい。

 周囲の空間が再びモノトーンに変化し、ネクタールを拾い上げようとしていたシアの動きが中途半端な姿勢で止まる。


「さて、どうして今の状況になっているのかについては理解できていますね」

 俺は背後から声をかけられ、そちらの方を向く。

 するとそこには以前のストーカー六兄弟の件でも見た角の生えた制裁用NPCの姿があった。


「そりゃあな。と言うよりGMとして対応しない方がおかしい」

「話が早そうで何よりです」

 GM入りの制裁用NPCはゆっくりこちらに近づいてくる。

 それにしても……うん、やっぱりエファスが使ったのと同系統の技術をGMも持っていたか。

 俺個人の為にゲーム全体を止めるなんて無駄の極みだしな。


「まずは謝罪を。ゲーム外からの侵入を許し、お客様の身を危険に晒した事について深くお詫びさせていただきます。今後はこのような事が無いように尽力させていただきます」

「……」

 尽力するのは本音だが、謝罪については表面上の物って感じがするな。

 まあ、これについてもエファスがどういう存在なのかを理解していれば、そう言う対応になるのも仕方がないとは思えるな。


「では、話を進めましょう」

「分かった」

 と言うわけで、此処でごねる意味はないので、とっとと話を進めるとしよう。


「まず今回貴方が手に入れたそれについては、アイテム化して所有することは認めます」

「いいのか?」

「このゲームはイレギュラーが発生する可能性を予め勘定して進行させているゲームです。でなければレア度:PMなど存在させられませんから」

「まあ、それはそうだが」

「ただし。アイテムの効果そのものについては制限させていただきます」

 そう言うと制裁用NPCは指を鳴らす。

 それだけで俺が握っていたエファスの黒い輪に一瞬だけノイズが現れ、その後は物質として安定化した気配を見せる。

 と言うわけで、俺は念のためにアイテムの詳細を見てみる。



△△△△△

エファス・フォ・エフィルの黒輪

レア度:EX

種別:その他

耐久度:100/100

特性:ヌル(存在しないはずの物質)


Efas fo efil. この文章の意味が分からない者は所有するべきでない。

時空を操る力は人の身には過ぎたる物であり、必要な時以外に開放されるべきではない。

これは本来ならば在ってはならない物質である。

※デスペナルティの対象にならない

※入手者以外の所持不可能

※特殊インベントリ格納可

※売却、破棄不可能

▽▽▽▽▽



「制限ね。てっきり取り上げられる物と思っていたんだが」

「敵が残っていないならば取り上げたでしょうね。けれど今後も同様の事例が発生するのであれば必要でしょう?」

「再発の防止に徹底するんじゃなかったのか?」

「一度こちらの守りを抜かれた以上、今以上の守りを敷いても突破される可能性は否定できません。なら、セーフティネットとして別に策を講じるのは当然の義務です」

 俺はエファス・フォ・エフィルの黒輪と言う名前になったそれを指にかけ、魔力を流し込みつつ軽く回してみる。

 が、何の反応もない。

 どうやらきちんと封印されているらしい。

 と言うわけで、俺はサイズを縮小した上で、左手のバーサークオーヴリングを着けている指とは別の指に着けておく。

 特殊なアイテムなのでこれでも持っていられるし、無くす心配もないだろう。


「当たり前の様にサイズを縮小しますか」

「あのサイズじゃ邪魔だろう?」

「そう言う事を言っているわけではないのですが……まあいいでしょう。貴方がイレギュラーなのは今更です」

 制裁用NPCは何故か溜め息のような物を吐いている。

 俺はそんなにおかしなことをしただろうか?


「念のために聞いておきますが。アレが何なのかは分かっていますね」

「勿論分かっているとも。そっちが把握してるのは……俺の記憶でも読んだか」

「その点については黙秘させていただきます」

「まあ、そうだろうな」

 まあ、GMもこの件についてはとやかく言う気はないようなので、話を進めるとしよう。


「話を戻しますが、アレが何なのかを把握できているなら貴方がするべき事は分かっていますね」

「自分のケツは自分でふけって事だろ?一部は何処かのGMさんが安易な処理をしたせいだと思うけどな」

「そもそも貴方があんな物を作らなければ、こんな事態にはなっていませんでしたよ」

「それを言うなら、そっちが『AIOライト』を作らなければ、生まれなかったアイテムでもあるな」

 俺たちは互いに憎まれ口を叩く。


「……。止めましょう。これは無駄な話です」

「……。全くだな」

 が、直ぐに止める。

 実際、この言い合いは不毛な結果に終わるだけだしな。


「最後にこれだけは伝えておきます。今回の件はトップシークレット。友人知人は勿論の事、アンブロシアにも話すべきではありません。ターゲットが貴方以外に移る可能性が生まれますから」

「分かった。話さないでおく」

「では、今後も『AIOライト』の御愛好、よろしくお願いいたします」

 そうして忠告を残して、GMの入った制裁用NPCは姿を消した。

02/13 誤字訂正

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