267:54-4-X3
「グ……ガッ……ソンナ馬鹿ナ……」
吹き飛んだエファスは、吹き飛んだ先の地面で悶絶している。
やはり俺の魔力に晒される事はエファスにとってツラい事であるらしい。
「さて、俺はお前を殺す気でいるが。お前はどうする?エファス」
俺はゆっくりと、警戒心を持ってエファスに近づく。
青白い炎についてはもはや警戒をする必要もないが、あの炎だけがエファスの武器ではないからだ。
「フザ……ケルナァ!」
エファスが立ちあがりながらこちらに向けて青白い炎を火球の形にして放ってくる。
が、ただの火球ではないな。
俺対策なのか、外装と中身で別れた二層構造になっていて、中身は有線式の何か、恐らくは爆発か何かを起こせるようなものになっている。
「今更そんな物が効くとでも?」
「ッツ!?」
だがそうと分かっていれば問題はない。
外装はそのまま受け、中身が漏れ出ようとした瞬間に俺の魔力で包み込み、呑み込む。
これだけで火球は俺を強化するという成果を残して、消滅した。
「その爪を使ってみたらどうだ!」
ある程度距離が詰まったところで、俺はエファスに向かって駆け寄る。
対するエファスにも逃げる気はないのだろう。
両手の爪に青白い炎を宿らせた上で構えを取る。
「ヌオオォォ!」
「ふんっ!」
エファスの爪が振られる。
それを避けた俺の拳がエファスの顔に向かう。
が、エファスは身を捩る事でこれを紙一重で避け、さらに後退して距離を取る。
丁度俺が一歩では踏み込めないような距離にまで。
「なるほど。安全を奪う者であるからこそ、何処が安全なのかを理解しているというわけか」
「……」
俺の言葉にエファスは何の反応も示さない。
まあ、実際のところ、そこまで確実に安全圏を見切れるわけではないのだろう。
でなければ今までの俺の攻撃が当たった理由の説明がつかないし、この見切りが攻撃面にも適用されるのならあの青白い炎による攻撃が俺には通らない事も理解していないといけないからな。
「じゃあ、こうするとしよう」
俺は斧をインベントリから取り出すと、そこに魔力を纏わせる。
そしてその状態でエファスに向かって走り始める。
「ふははははっ!」
「ヌグオオオッ!」
十分に距離が詰まったところで、お互いに攻撃を仕掛ける。
そしてエファスは俺の攻撃を避け……
「!?」
「捕まえた」
俺はエファスの攻撃を避けずに受け止め、その腕を全力で掴んでやる。
「さて……攻撃を避けるか防ぐはずと言う温い妄想のツケを払ってもらうか」
「ーーーーー!?」
腕から流し込まれる俺の魔力がエファスの身を蝕んでいるのか、エファスは俺の肩に食い込んでいる爪を引き抜こうともがきつつ、悶絶もしている。
対する俺は斧をしまうと、空いた右手をエファスの頭部に付いている黒い輪に伸ばす。
「マ……」
「待たねえよ」
「ーーーーー!?」
そして高速で回転している輪を掴むと、魔力と筋力で無理矢理に回転を止め、そのまま引っ張り始める。
「ーーーーーーーー!!?」
エファスは声にならない叫びを上げ、黒い輪からは大量の青い炎が吹き上がる。
それらは当然俺の身体に燃え移り、あらゆる怨嗟を俺へと叩き付けてくるが……やはり大したことはないな。
安全を奪われた?
逆に聞こう。
お前たちはその安全を守るために何かをしてきたのか?
その安全はお前たちが持つ前は一体誰の物だったのだ?
お前たちは自分が食べている物、身に付けている物、住んでいる物、生活をする上で欠かせない物がどうやって出来ているのか理解しているのか?
お前たちは……奪われる覚悟があって奪って来たのか?
「ま、覚悟なんてできているはずがないよな」
「ア……ゴ……ギ……」
「奪われる覚悟がある上で奪いに来ているのであれば、死んだ後にこんなみっともない未練何ぞこの世に残すはずがない」
「化ケ……物……」
もはやエファスには俺の言葉は聞こえていないだろう。
黒い輪は完全に動きを止め、青白い炎も噴き出すのを止め、真紅の頭部にはヒビが入り始めている。
聞こえてくる言葉も半ばうわごとのようなものだ。
だがここで手を抜く意味は無い。
「化け物?大いに結構。化け物になった程度で守りたいものを守れるのなら、安い買い物だ。と言うわけで……」
俺は片足をエファスの顔面に押し付ける。
「とっとと逝け」
「ーーーーーーーーーー!!?」
そして全力で黒い輪を引きつつ、脚を出し、意味の分からない叫び声を上げているエファスの頭部を完全に粉砕してやる。
「さてと……だ」
頭部を失ったエファスの身体は地面に倒れ、痙攣を起こしている。
だが、ただの反射だな。
動く気配はないし、エファスの頭があった場所に転がっている紅い小石のような物体からも妙な気配はしていない。
不気味な光景ではあるが、それだけだ。
「お前らに言っておくことがある」
それよりも今はやるべき事がある。
だから俺はその場で屈み、左手でエファスの頭部にの中に在った紅い小石を掴むと、いつの間にか俺の背後に来ていた何者かたちに見せるように掲げる。
「来るなら来い。全力で相手をしてやる」
そして、その何者かたちに見せつけるように、俺は石に魔力を流し込み、粉も残らない程に砕いた。
「……。消えたか」
それだけで何者かたちは消え、エファスの身体も砕け散った。




