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【AIOライト 53日目 17:47 (2/6・晴れ) 首架け橋】
「ようやく……ですね」
「ああ、ようやくだな……」
歩き続けること丸一日。
プレンブロッサムとの戦闘後も時折モンスターと遭遇し、その一部と戦いつつも俺たちは先に進み続けた。
そうして日も直に暮れるという頃、俺たちは遂にその場に辿り着いた。
「本当にようやく終点だ」
俺たちの目の前には石畳が敷かれた橋ではなく、赤土の地面が広がり始めている。
今居る場所が崖の上のような場所であり、先の方は白い霧のような物に包まれているのでよく分からないが、一つ確かな事がある。
そう、俺たちはようやく首架け橋の終点に辿り着いたのだった。
が、問題が無いわけではない。
「で、マスターの目には何か見えているんですね」
「まあな……」
シアたちには見えていないようだが、首架け橋と新たな大地の間には黒い糸の様な繋がり……いや、これは違うな。
どちらかと言えば、此処までずっと続いていた繋がりが、この場所を境に切れている感じがする。
その切れ目が黒い糸のような何かとして見え、まるで崖際に立っているように俺に感じさせているのだろう。
まあ、何にしてもだ。
「結局の所進むしかない。ここ以外に道なんて無いんだからな」
「そうですね。私もそう思います」
「ーーーーー!」
進むしかない。
ここで待っていても何も変わらないのだから。
そうして俺たちは首架け橋から新たな大地へと一歩踏み出した。
■■■■■
『此処より先はドウの地。導無き大地』
『世界の守護はなく、悪意と敵意が蔓延る地』
『されど恐れる事はない。赤紐と青葉の試練を超え、偽金の妨害を退けた汝ならば、この地においても歩みを止めず、手を止めず、汝が望むがままに振る舞う事が出来るだろう』
『さあ行くがいい。汝が望むままに』
■■■■■
【AIOライト 53日目 17:49 (2/6・晴れ) ドウの地・西の荒野】
「マスター今のって……」
「此処から先は色々と違うって事だろうな。それにしてもだ……」
唐突に入ったイベントの後。
俺たちの目の前に広がる光景は一変していると言ってよかった。
俺たちが居る場所は確かに崖の上だった。
そして崖の下、先程まで白い霧に覆われていた場所は霧が晴れて、代わりに見渡す限りの峡谷と荒野が広がっていた。
現実の世界でこれに近い光景を上げるならば……そう、アメリカのデスバレー、アレが近いのではないかと思う。
「「「……」」」
何処までも続くように思える目の前の光景に、俺もシアもネクタールもしばしの間無言となり、ただ風に吹かれる。
日が落ちて、少し涼しくなった風は歩き続けて熱くなった俺たちの身体を程よく冷ましてくれる。
「好きに進めばいいって言うが……どの方向に進めばいいんだろうな」
「目印になるような物もありませんからねぇ……」
で、うん、正直に言って現実逃避をしたくなるが、これからどうするかを考えないとな。
日が落ちて詳しい地形が把握できないとはいえ、この場から見た限りでは目印になるような物は何も無い。
つまり、何処に進めばいいのか分からないという事だ。
「とりあえず掲示板に……マジか」
「どうしました?」
「掲示板が使えなくなってる」
「え……!?」
で、俺たちの状況を他のプレイヤーに伝えるべく掲示板に書き込みを行おうと思ったのだが……掲示板は使えなくなっていた。
使えなくなった理由を探ってみると、どうやら首架け橋をある程度進んだ時点で、錬金術師ギルドの掲示板が使用不可になるようだ。
そして、その代わりにプレイヤー全員で共用する新しい掲示板が使えるようになったらしい。
が、その掲示板は書き込みどころかスレ立てすらもまだ行われていない本当に真っ新の掲示板だった。
「どうしましょうか?」
「……。とりあえず適当にスレを立てて、明日から移動を開始すると書き込んでおく。で、今日はもう適当な自動生成ダンジョンを見つけて休む。明日からについては……まあ、まずは真っ直ぐ東に向かってみよう。ここの地名はドウの地・西の荒野だしな」
「分かりました」
やれるだけのことはやるべきだろう。
俺はそう判断すると、自分でスレを立てて書き込みを行っておく。
これで、後から来たプレイヤーたちが俺の後を追ってくるならば東に向かうだろうし、別の道を行こうと思っているなら、北と南に向かう事が出来るはずだ。
「よし、書き込み完了。自動生成ダンジョンを探すぞ」
「はい、マスター」
書き込みを終えた俺はシアを連れて、崖から落ちないよう気を付けつつ周囲の探索を始める。
勿論、出来る限り東に向かうようにしつつだ。
「本当に何処までもという感じですね……」
「だなー……」
導の無い大地。
構造物らしい構造物の無い世界。
か細い月明かりが降り注ぐ中、俺とシアは歩き続ける。
「グルオオオオオォォォ!」
「ドラゴン……でいいんだろうな」
「見つかっては……いないみたいですね」
悪意と敵意が蔓延る地。
月が浮かぶ空から響いてくるのは巨大な獣の咆哮であり、夜空にはシルエットだけで西洋竜……所謂ドラゴンと言い切れる影が浮かんでいた。
その力強さは、遠くから眺めただけでも圧倒的な物だった。
「大丈夫……ですよね」
「たぶんな。ま、なるようにしかならないさ」
不安が無いわけではない。
が、それでも俺たちは進み続けるのだった。




