228:47-2-E2
「威力はほぼ変わらずってところだな」
俺の背後で落ちた光球の爆発によって、僅かにだが俺のHPバーが削れる。
そして自分のHPバーを確認するのと一緒にシアのHPバーを確認するが、こちらはほぼ変化なし。
どうやら前回と同じように俺特攻とでも言うべき光属性の魔法攻撃のようだ。
『それで隠れたつもりかしら』
「おっと」
『青葉の根張り』が次の光球を構えたと判断すると同時に、俺は木の影から木の影へと移動する形で、光球の直撃を避けるように移動を続ける。
『相変わらず偏った成長のようね』
当たり前と言えば当たり前だが、攻撃特化……それもこちらの弱点を確実に突いてくる『青葉の根張り』の攻撃を真正面から受け止めるという選択肢はこちらにはない。
装備を更新して防御力が幾らか上がったとは言え、弱点を突かれる事には変わりない。
それなのに正面から受け止めたら、結果は前回と変わらないだろう。
「マスター!」
「まずは避け続けて、相手の様子を窺う!手は出すなよ!」
「はい!」
だから逃げ続ける。
逃げ続けて、『青葉の根張り』の観察をする。
『逃げ続けているだけで勝てるのかしら?』
「……」
『青葉の根張り』の動きに乱れはない。
前回、俺にトドメを刺した槍型を使う気配もない。
ひたすらに光球を両手の掌の上に生み続け、それを正確に俺の居る場所に向かって投擲してきている。
「ネクタール」
「ーーーーー」
『それで隠れているつもりなのかしら!?』
俺はネクタールに命じて、『青葉の根張り』からの視線が途切れる筈のタイミングで、自身の気配を極端に小さくする。
そしてその状態のまま移動ルートを大きく変える。
だがそれでも『青葉の根張り』は正確に俺を狙ってくる。
光球が俺の移動ルートを先読みするように落ちてくる。
直撃はしていないが、爆発によって俺のHPが幾らか削れる。
「なるほどな」
『出てきたわね』
俺は『青葉の根張り』の前に存在感を大きくした状態で出ると、再び木々の間を走り始める。
今の動きで確信した。
やはり『青葉の根張り』は何かしらの感知能力を持っている。
つまり、よほどの隠密特化でもなければ、この森の中に居る限り、『青葉の根張り』の意識の外に逃げ出す事は不可能と言っていいだろう。
尤も、前回のシアの攻撃の事を考えると、ホムンクルスに対しては上手く働かない能力であるようだが。
「シア、隙を見て攻撃を始めてくれ!」
「分かりました!」
ネクタールの能力を使って『青葉の根張り』からのヘイトをある程度稼ぎつつ、俺は森の何処かで身を潜めているシアに指示を出す。
『ちょこまかと……』
そうして逃げ続けながら『青葉の根張り』の様子を窺い続けていると、僅かではあるが、前回との違いに気づく。
「やっぱり雨はこちらにとって有利に働くか」
『まあいいわ。じっくりと攻めてあげる』
『青葉の根張り』が光球を生み出すペースが僅かずつにではあるが、落ち始めている。
加えて、『青葉の根張り』と周囲の木々に生えている青い芽の間にある青い根の様な繋がり、その繋がりの動きがどうにも鈍く感じる。
もしかしたらと言う程度だが、『青葉の根張り』のMP補充は周囲の木々の光合成に由来しているのかもしれない。
だから、今日のように天候が雨だと、MP補充に問題が発生するのかもしれない。
となれば、夜に挑めば天候関係なしに弱体化するのかもしれないが……まあ、それだと周囲が暗くなりすぎて、こちらの行動に支障を来たすか。
『吹き飛びなさい!』
「おっと」
と、ここで再びの爆発。
だが俺は姿勢を低くすることによって、直撃を回避。
ダメージを軽減する。
「『ブート』!」
『ぐっ!?』
そして攻撃を行った隙を突くようにシアが攻撃を行い、『青葉の根張り』にダメージを与えつつ、体勢を大きく崩す。
その度合いは前回以上で、装備を更新した効果はきちんと出ているようだった。
『舐めないで』
「マスター!」
「分かってる!」
で、前回と同じように『青葉の根張り』の姿が掻き消える。
さあ、問題はここからだ。
俺の目では『青葉の根張り』が青い根の様な繋がりの中を高速で移動しているのが見えている。
そして、この後に何をしようとしているのかも、その移動の方向から見えた。
だからこう指示を出す。
「シア!アレを使え!」
『消しと……』
「『カースウッドキング・フォースハウル』!」
『びあっ!?』
シアの『カースウッドキング・フォースハウル』が発動した瞬間。
存在感を出すだけで攻撃をしてこない俺を無視した『青葉の根張り』は、シアの背後にあった青い芽から外に飛び出していた。
その手に握られていたのは光り輝く槍。
だがそれが投じられるよりも早く、シアの周囲の地面から大量の根が持ち上げられ、『青葉の根張り』は槍を光の粒子に変えつつ吹き飛んでいく。
完全なカウンターの成立だ。
これだけで、たった二回の攻撃で『青葉の根張り』のHPは既に半分近くまで減っている。
『この……』
そうして再び『青葉の根張り』が姿を消そうとした瞬間。
「ネクタール!」
『っつ!?』
俺はネクタールの能力を使って、今まで以上に自身の存在をアピールしつつ、『青葉の根張り』に向かって突進を始める。
逃がすつもりはないと特性:バーサークを発動して、自分の事を無視できないようにしてやる。
『青葉の根張り』の目が俺に向き、シアはその場を離れて身を潜め、その状態で『青葉の根張り』の姿は消える。
「さあ……何処からでも来るといいさ」
これで『青葉の根張り』はシアを完全に見失ったはずである。
つまり、『青葉の根張り』は俺を狙うしかない状況になった。
だから俺は……
「完璧に対応してやるよ」
腰を少しだけ落とし、武器を構え、繋がりの中に隠れている『青葉の根張り』の姿をしっかりと認識しつつ、待つことにした。




