227:47-1-E1
【AIOライト 47日目 08:25 (4/6・雨) 青葉の間】
「さて、まずは再登録だな」
「そうですね。備えは必要だと思います」
「ーーーーー」
翌日。
俺たちは錬金術師ギルドの転移機能を使って青葉の間にやって来ていた。
で、この移動で一時登録は消えてしまったので、青葉の間に置かれている天秤を調べる事で万が一に備えた再登録をしておく。
「ボソッ……(おい、アレって『狂い斧』だよな)」
「ボソッ……(ああ、微妙に装備は変わってるけど間違いないな)」
「ボソッ……(此処に来たって事は『青葉の根張り』に挑むつもりなのか)」
「ボソッ……(これで勝たれたら攻略組は涙目だな……)」
青葉の間には俺以外のプレイヤーもそれなりに居る。
顔見知りは居ないが、この内何人が『赤紐の楔打ち』を倒しているプレイヤーなのかは分からないが、まあ、何人かは居るだろう。
俺が初めて『青葉の根張り』に挑んでから今日で四日目だしな。
まあ、他のプレイヤーについてはこれ以上は特に気にしなくてもいいか。
「で、アイテムの方も大丈夫だよな?」
「はい、大丈夫です。回復アイテムも攻撃アイテムも万全です」
俺とシアは改めて手持ちのアイテムを確認する。
俺はネクタールに喰わせる素材と、緊急用の回復アイテムを持っている。
シアは回復アイテムと攻撃アイテム、両方ともそれなりの数で持ち込んでいる。
食事については勿論既にとってある。
うん、問題なさそうだな。
「ところでマスター」
「ん?」
「特別な準備と言うか、対策の類はしてませんけど、それでいいんですか?」
「ああそれか。まあ、特別な対策は今はまだしなくてもいいと思うぞ」
「今はまだ、ですか」
「流石にもう一度負けたら対策は考えるけどな」
アイテムと状態の確認が終わったところで、俺たちは話をしながら碧玉の板に向かって移動し始める。
シアが言う『青葉の根張り』対策については……うん、今回負けたらでいいな。
今出ている情報で考えるなら、ステータスの光属性や抗魔力を上げる装備品や消費アイテムを作って使うというのが妥当な対策ではあるが、それをするためには相応の時間とお金をかける必要があるからな。
出来れば勘弁願いたい。
「よし、それじゃあ触れるぞ」
「はい、マスター」
「ーーーーー!」
そうして話し合うべき事も話し終えたところで、俺は碧玉の板に触れた。
■■■■■
『我は左角の主、碧玉の領域にて秘奥を用いり、資格の一つを得た者を阻むもの』
『資格とはそれ即ち我が秘奥も連なる錬金の術を修め、十に到達する事であり、右角の主を下せし事』
『資格ある者よ。我は汝らが先達にして道標、そして壁である。我を打ち倒し、皆々阻む壁の鍵が片割れを手にし、完成させるがいい』
『我は輪廻を得ている。されどそれはまやかしにして仮初の輪廻である。しかし、我が輪廻すらも破れぬ者に歩める道はない。よく知るのだ』
『願わくば、汝ら後進が我らを超え、正しき真理に至らんことを願う』
■■■■■
「……」
碧玉の板に触れた俺たちは、前回と同じように暗闇に包まれた。
そして前回と同じようにノイズ混じりの女性の声が聞こえてきた。
だが、最後の方に幾らかの付け足しがあった。
詳細な条件は検証班に任せるとして、もしかしたら錬金レベル辺りによって聞こえてくる文章の長さが変わるのかもしれない。
「雨が降ってますね」
「そうだな」
やがて暗闇が晴れる。
前回から周囲の風景に大きな変化はない。
巨木が立ち並ぶ森の中で、一部の樹に青い芽が付いていると言う風景だ。
ただ、前回と違って外の天候が雨であるためなのか、森の中は前回以上に暗く、時折であるが雨粒が落ちていくのが見えた。
「……。もしかしたらこの雨はこちらの有利に働くかもな」
「そうなんですか?」
「俺の想像通りなら……ね」
視界が悪くなる雨と言う天候。
だが俺はとある要素と言うか、推論から、何となくこの雨がいいものではないかと思えた。
まあ、この推論が正しいかはすぐに分かる事だろう。
と言うのもだ。
『侵入者のようね』
木々の間から『青葉の根張り』が姿を現す。
『どうやら再挑戦のようね』
「「「……」」」
流石はイベントボスとでもいうべきなのだろうか。
こちらが二度目の挑戦である事をしっかりと把握しているらしい。
『ふふふ、けれど私のやる事は変わらないわ。資格無き者には一時の死を、資格ある者に先へ進む鍵を』
「シア」
「『癒しをもたらせ』『大地の恩寵をその身に』」
「ーーーーー」
『青葉の根張り』の言葉に合わせる形で、俺たちは準備を整え、身構える。
それこそ最初からテレポート能力を使われてもいいぐらいの気持ちで。
『さあ、どの程度実力が上がったのか、見せて頂戴!』
そして『青葉の根張り』の両手に暴力的な光を伴う球体が生成された瞬間。
「退避っ!」
「了解!」
俺とシアは別々の方向に向かって全力で逃げ出す。
『消し飛びなさい!』
それと同時に、俺たちが居た場所に光球が落ちて爆発した。




