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AIOライト  作者: 栗木下
4章:左角山

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210/621

210:43-7

【AIOライト 43日目 12:42 (新月・晴れ) 始まりの街・ヒタイ】


「……」

 気が付けばそこはヒタイの錬金術師(アルケミスト)ギルド『巌の開拓者(ノーム)』のヒタイ本部だった。

 隣には呆然とした表情のシアがへたり込んでおり、逆側には気絶して制御能力を失っているのか斑模様かつ様々な質感が入り混じった状態のネクタールが広がっていた。


「マスター、あの……」

「あー……負けたみたいだな……」

 自分で口に出した事でようやく実感がわいてくる。

 俺たちは『青葉の根張り』に負けた。

 あっさりと、何も出来ずに、ただ負けたのだ。


「ボソッ(おいアレって、狂い斧だよな)」

「ボソッ(死に戻りしたみたいだな。いったいどんなモンスターにやられたんだ?)」

「ボソッ(数日見てなかったし、例の双角の主関係の何かじゃないか?)」

「ボソッ(ははっ、イイ様だ。イカレ野郎め)」

 周囲のプレイヤーたちから俺たちに向けられる視線は色々だ。

 好奇や疑念、哀れみと言った視線もあるが、中には俺たちの状況を喜んでいるような、正直に言って気持ちのいいものでは無い視線も混じっている。

 まあ、最後のについてはどうでもいいか。

 俺如きにそう言う視線を向けている時点で実力は高が知れているしな。


「シア、とりあえず部屋に行こう。何を失ったのか確認する必要がある」

「あ、はい。分かりました」

 と言うわけで、俺はネクタールを拾って適当に身体に巻き付けると、レンタルしている部屋に向かった。



----------



「さて、これで確認は完了か」

「そう……ですね」

 部屋に戻った俺たちは、直ぐに自分たちのインベントリを検めた。

 と言っても、元々倉庫ボックスに必要のないもの、失いたくない物は預けた上で『青葉の根張り』には挑んでいたので、大したものは失っていない。


「俺はネクタールに食わせるつもりだった素材が幾つかに、リジェネメディパウダーが一つ、それにバーサークスチールタバルジンだな」

 素材は元々消費物。

 リジェネメディパウダーも緊急時の自己回復用。

 バーサークスチールタバルジンを失ったのは痛いが……まあ、受け止められた上に刃を握り潰されていたからな。

 仮に戦いに勝っていても、返って来る事は無かっただろう。


「……」

「そうだな、ネクタールはそもそも失う物を持ってなかった」

 ネクタールは被害なし。

 元々装備品しか持てないので、当然の結果である。


「マスター……私の方はちょっと妙な事になってます」

「妙な事?」

「はい」

 最後にシアだが……先程から深刻そうな表情を浮かべている。

 それで話を聞いてみたところ、どうやら持たせておいたリジェネメディブックが幾つか無くなった以外にも、奇妙な変化が生じているらしい。

 その変化がこれだ。



△△△△△

ミアゾーイ・ミメシス

レア度:EX

種別:装飾品-指輪

耐久度:100/100

特性:リジェネ(回復力を強化する)

   ガード(防御力を強化する)

   キルデッド(不死者に対して強い力を持つ)


エメラルドの填められた金色の指輪。

ミメシスの名が示す通り、オリジナルではなく模倣品である。

回復力+1

撃魔力+2

状態異常耐性:戦闘不能・イモータル・ハイド・デコイ

▽▽▽▽▽



「これは……」

 シアの付けていたレア度:PMの指輪、ミアゾーイがミアゾーイ・ミメシスと言う別のアイテムに変わってしまっていた。

 そして名が変わった事に気づいた上でシアの指にはまっているそれをよく見れば、確かに俺が作ったミアゾーイとは微妙に違う気がする。

 何が違うのか具体的に問われると困るが、敢えて言うなれば雰囲気あるいは周囲に纏う空気のようなものが変わった感じがしていた。


「一体どういう事なんでしょうか、マスター。もしかして私は何か拙い事を……」

「いや待て、シアのせいじゃなさそうだ」

 と、ここでメッセージが届いたことを知らせる音が流れる。

 メッセージの差出人はGM。

 タイトルは『不具合についての重要なお知らせ』……か。


「ちょっと待ってくれ」

「はい」

 俺はメニュー画面を誰にでも見えるようにした上で、GMからのメッセージを読む。

 その内容は要約してしまえばこんな所だ。


『予期せぬ不具合で、アンブロシアの装備していたミアゾーイのデータが破損しちゃったから、とりあえず同じスペックの指輪を送っておくよ。それとお詫びの品として、10,000Gも送っておくよ』

 との事だ。

 うん、助走をつけてぶん殴ってやりたくなるな。

 何でかって?

 どう考えてもおかしいからだ。


「あのマスター、これって……」

「たぶん、俺たちが気付いていなかっただけで、ミアゾーイには何かがあったんだろうな。GMにとって不都合な何かが」

 この『AIOライト』と言うゲームの出来で、対象がレア度:PMのアイテムと言えども、アイテム破損などと言うごく単純なバグが発生するとは思えなかった。

 それにあのGMなら、ミアゾーイそのものを復旧させることなど造作もなかったはずだ。

 なのにわざわざミアゾーイ・ミメシスなどと言う別のアイテムに変えて元通りにしてきたという事は……ミアゾーイそのものにGMにとって不都合な何かが含まれていたとしか思えなかった。


「まあ、この件については今は置いておこう。今はそれよりも、考えるべき事は山ほどある」

「ミアゾーイ・ミメシスについてはどうします?」

「んー……、ゲーム上のスペックは変わってないし、そのまま着けていてもいいと思う。ただ違和感が在ったら遠慮せずに言う事。いいな」

「はい、分かりました」

 これ以上は考えても仕方がない。

 俺はそう考えると、今後の事についてシアと話し合い始めた。

何故かミアゾーイは消滅させられました。

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