209:43-6-E2
「はぁはぁ……大丈夫か。シア」
「私の方は何ともありません。マスター」
『青葉の根張り』が放った光球……いや、爆弾からの光が止む。
適当な樹の陰に入る事で難を逃れた俺とシアは、直ぐにお互いの状況を確認。
シアのHPは殆ど減っていない。
余波によってかすり傷程度のダメージが生じているだけだ。
「でもマスター。マスターのHPは……」
「まあ……な」
俺のHPは20%近く減っている。
勿論直撃はしていなかった。
受けたのは爆弾の爆風、その極一部だけだ。
だがそれでもこの減り様……ネクタールとHPを共有しているのにこれと言う事は、まず間違いなくそう言う事だろうな。
『さて、何処に逃げたのかしらね?』
『青葉の根張り』は既に次の爆弾を生み出しており、何時でも投擲できる体勢に入っている。
とりあえず確かな事として、あの爆弾の直撃を俺が受けたら良くて瀕死、最悪即死まで有り得るだろう。
となれば、勝つためには普段のように攻め続けるのではなく、相手の隙を窺って、一撃離脱を繰り返すしかないだろう。
『そこかしら……ねっ!』
「っつ!?」
「マスター!」
『青葉の根張り』が爆弾を投げてくる。
それも正確に俺が隠れている場所に向けて。
なので俺は慌ててその場から離脱。
直後に着弾、爆発し、俺にダメージが入る。
「ぐっ……」
ネクタールの状態を調整することで爆風によるダメージを少しでも抑えたが、それでも無視できない量だな。
既に俺のHPは三分の一も削れている。
だがどういう攻撃が来るか分かっていたから、観察できる程度の余裕は出来ている。
『外したわね』
『青葉の根張り』と周囲の木々に生えている青い芽の間にある青い根の様な繋がりが動く。
まるで何かを吸い上げるように、繋がりの中を何かが通り、『青葉の根張り』に力が満ちていく。
なるほど、MP消費による弾切れは狙うべきではないと言う事か。
芽を全て潰す余裕なんてないしな。
『さて次は……』
『青部の根張り』の掌の上に再び光球が生じる。
そして、それを見た『青葉の根張り』は一瞬訝しげな顔をした後に、笑顔を浮かべる。
『なるほど。どうやらかなり偏りある育ち方をしているらしいわね。これだけしか出ないなんて』
「ちっ、そう言う事か……」
『青葉の根張り』のその言葉に、俺は相手の能力がどのようなものかを悟る。
恐らくだが、『青葉の根張り』はこちらのステータスの一部を参照して、相手の弱点を突けるように発動する魔法が自動選択されるようになっているのだろう。
そこには多少の揺らぎもあるが……俺のように抗魔力も光属性も7では揺らぐ事はない。
発動するのは必ず光属性の魔法攻撃になるようだ。
「まあ、何時かは来ると思っていたが……まさか、此処でとはな……」
以前から危惧していた光属性の魔法攻撃。
それをまさかイベントボスがやって来るとは……いや、『青葉の根張り』の能力の性質上、弱点があれば弱点を突くように攻撃は来るのだ。
GMの悪意は確かに有るが、俺一人に向けられた悪意ではない。
だから余計な思考はこのぐらいにしておいて、奴を倒す事に思考を集中させるべきだろう。
『そこね』
『青葉の根張り』が再び爆弾を二つとも投擲してくる。
狙いはやはり正確で、俺が居る場所を確実に狙ってきている。
これはもう、そう言う探知能力を持っていると考えた方がいいかもしれないな。
「うおらああぁぁ!」
『出てきたか。その意気や……』
俺はそう判断すると、樹の影から飛び出し、爆弾の下をくぐるように走って『青葉の根張り』に駆け寄る。
俺のその動きに『青葉の根張り』は笑みを浮かべつつ、再び爆弾を生み出そうとする。
「『ブート』!」
『ぐっ!?』
だがそれよりも速くシアの魔法が『青葉の根張り』の背後に直撃。
仰け反らせることで、魔法の発動を遅延させる。
そしてそれ以上に目を惹くのは与えたダメージ。
シアの『ブート』の威力はミアゾーイの補助込みでもそれほど高くはない。
なのに『青葉の根張り』のHPは目に見えて減っていた。
どうやら、『青葉の根張り』は攻撃に特化した分だけ、防御関係は控えめであるらしい。
「ぶった切る!」
つまり、この攻撃が決まれば、それだけで戦闘の流れは大きくこちらに傾く。
背後に爆弾の爆風を受けて、ダメージを受けつつも、俺はそう判断すると大きく斧を振り上げる。
『舐めないで』
「なっ!?」
だが、俺が全力で斧を振り下ろした時。
既に『青葉の根張り』はその場には居なかった。
青い根の様な繋がりを通って、俺たちから離れた場所……青い芽が生えている場所に移動してしまっていた。
まさかの被ダメージに伴う瞬間移動。
事前の調査では、まったく出てこなかった能力だった。
そして俺は何処に相手が行ったのかは見えていても、全力で斧を振り下ろしたために、動きが完全に止まっていた。
『消し飛びなさい』
俺の視線の先では『青葉の根張り』の手には光り輝く槍が握られていた。
「ぐっ……!?」
「マスター!」
『ふんっ!』
反射的に俺は斧を投げてしまっていた。
そして斧とすれ違うように光り輝く槍が飛んできた。
僅かに身体の中心からずれた部分に光り輝く槍が突き刺さる。
『効かないわね』
「くそっ……」
俺が投げた斧を『青葉の根張り』はあっさりと掴んでおり、刃の部分を握り潰す事で消滅させる。
その間に俺自身は身体を貫かれる不快感を感じた。
その後に槍はその光を一層強くし……
「くそおおぉぉぉ!」
爆発と共に俺のHPバーはあっさり底を突いた。
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