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AIOライト  作者: 栗木下
4章:左角山

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208/621

208:43-5-E1

【AIOライト 43日目 12:35 (新月・晴れ) 青葉の間】


「さて、準備完了だな」

「そうですね」

 朝食は食べ終えた。

 消耗品の補給と装備の補修も終わった。

 インベントリの整理も大丈夫。

 HPとMPも全回復している。

 ギルドポータルの一時登録の変更も終わっている。

 うん、何処にも問題はないな。


「それじゃあ行くぞ」

「はい」

 そうして周囲のプレイヤーたちが遠巻きにこちらの事を見ている中、俺は碧玉の板に触れた。



■■■■■



『我は左角の主、碧玉の領域にて秘奥を用いり、資格の一つを得た者を阻むもの』


『資格とはそれ即ち我が秘奥も連なる錬金の術を修め、十に到達する事であり、右角の主を下せし事』


『資格ある者よ。我は汝らが先達にして道標、そして壁である。我を打ち倒し、皆々阻む壁の鍵が片割れを手にし、完成させるがいい』


『我は輪廻を得ている。されどそれはまやかしにして仮初の輪廻である。しかし、我が輪廻すらも破れぬ者に歩める道はない。よく知るのだ』


『願わくば、汝ら後進が我らを超え……』



■■■■■



「……」

 碧玉の板に触れた俺たちは、『赤紐の楔打ち』の時と同じようにしばしの間、暗闇に包まれた。

 その間に俺の耳にノイズ混じりの声が届いたのも、また同じだった。

 だが違いもある。

 文面に多少の変化が生じていたし、聞こえてくる声も恐らくは女性の物だった。

 尤も、そんな違いがあっても、俺たちのやることに違いはないのだろうが。


「さて、どう出てくるだろうな?」

「森の中ですし、奇襲の警戒ぐらいはしておいていいかと」

「……」

 暗闇が晴れた後。

 俺たちが立っているのは何処かの森の中のような空間だった。

 周囲には『呪詛招く樹の王』よりもさらに巨大な木々が立ち並び、分厚い葉の天井によって日差しが遮られ、俺たちが居る場所は薄暗かった。

 ただ、僅かな隙間から刺し込む光を見る限り、樹上に降り注ぐ日光はかなり厳しそうであるし、樹の下の方が戦闘はしやすいかもしれない。


「ーーー」

「そうだな。アレにも何かしらの仕掛けはあると思っていいと思う」

「『赤紐の楔打ち』の赤い紐と一緒ですね」

 ネクタールが樹の枝に生えた青い芽を指さす。

 敵の名前は『青葉の根張り』であるし、それを考えれば、あの青い芽にも何かしらの仕掛けがあると考えていいだろう。

 つまり、戦いを有利に進めたければ、あの芽は潰すべきなのだろう。


「ただ……」

「そうだな。数が多い」

 尤も、全てを潰すのは厳しそうだ。

 見る限りでも青い芽は30以上あるし、樹の低いところに生えているものもあるが、中には樹の天辺に近いところに生えているものもある。

 これを全て潰すぐらいならば、『青葉の根張り』自身を倒した方が早いのではないかと思える。


『侵入者のようね』

「……。来たか」

 足音も何も無かったが、いつの間にか近づかれていたらしい。

 背後から穏やかな女性の声がしたため、俺たちはそちらの方を向く。


『『赤紐の楔打ち』は打ち倒してきたようね』

「幽霊……」

「実体があるから幽霊と言っていいのか微妙な所だけどな」

 そこに居たのは身長1メートル半程度の長髪の女性。

 ただ、脚は無く、身体は半透明で、全体的に青みがかっている。

 着ている衣服が白系統のワンピースである事も含めて、やはり第一印象としては幽霊になるだろう。

 その名前は『青葉の根張り』Lv.20。


『ふふふ、何時ぶりかしらね』

 尤も、幽霊ならば掴んでいる樹の幹にヒビが入るような力で握りしめたりは出来ないだろう。

 だが、普通の人間であるならば、赤い三日月が表れるような笑顔を浮かべる事は出来ないだろう。

 そして、そのような動きを取ると同時に、周囲に生えている青い芽と『青葉の根張り』の間に青い根、あるいは茎のような繋がりが生じる。

 やはりと言うべきか、何かしらの仕掛けがあの青い芽にはあるらしい。


『私がやるべき事は資格ある者を試す事。資格無き者には一時の死を、資格ある者に先へ進む鍵を与える事よ』

「シア、ネクタール」

「はい。『癒しをもたらせ』『大地の恩寵をその身に』」

「……」

 俺、シア、ネクタールの三人が戦闘態勢を取る。

 いつものようにシアが後ろに下がって杖を構え、俺とネクタールが敵の目を惹き付けるように構えを取る。

 これで何があっても、即座に壊滅するようなことはないだろう。


『さあ……』

 対する『青葉の根張り』は樹から手を放すと、その場で両腕を軽く横に広げ、両手を上に向ける。

 見た目からは近接タイプとは思えないが、先程の握力を考えると、油断はしない方がいいだろう。

 俺は内心でそんな事を考えつつ、空気が張り詰めていくのを感じる。

 そして限界まで空気が張り詰めた瞬間。


『始めましょうか!』

「っつ!?」

「あ……」

 『青葉の根張り』の掌の上に人の頭ぐらいの大きさの光球が生じ……、


『消し飛びなさい!』

「退避いいぃぃ!」

「言われなくてもおおぉぉ!!」

「ーーーーー!?」

 次の瞬間には『青葉の根張り』がそれを投擲。

 全速力で逃げ出した俺たちが先程まで立っていた場所は暴力的な光に包まれた。

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