第28話 選ばれない都市
南港区から東へ二日の航路。
小さな港があった。
名を、リューデル。
外洋契約にも、黒潮契約にも乗らなかった港。
いや――
乗れなかった港。
桟橋は古く、船も少ない。
交易量も小さい。
投資対象としての価値が低い。
つまり――
選ばれなかった。
港には静けさが漂っている。
だがそれは平穏ではない。
停滞だ。
掲示塔にはほとんど数字が動かない。
資金流入 低
信用指数 停滞
交易量 減少
船長が呟く。
「南港は儲かってるらしいな」
別の男が言う。
「エルディアは黒潮にやられた」
「じゃあここはどうなる」
誰も答えない。
答えは分かっている。
何も起きない。
それが一番遅い崩壊。
その時、一隻の船が港に入ってきた。
黒潮の小型船。
警戒が走る。
だが船は攻撃してこない。
静かに接岸する。
降りてきた男が言う。
「提案だ」
低い声。
「防衛契約を結べ」
港の人々が顔を見合わせる。
「税は?」
「二割だ」
南港より低い。
だが条件がある。
「航路の管理は我々が行う」
つまり――
支配。
港の代表が言う。
「拒否したら」
男は肩をすくめる。
「好きにしろ」
「ただし守らない」
選択。
自由。
だが現実。
港の人々は黙る。
選択肢はある。
だが実質的にはない。
その頃、南港区。
セリアが掲示塔を見ていた。
「流れてる」
「何が」
アレクシスが聞く。
「資本よ」
彼女は言う。
「小さな港から、大きな港へ」
数字が示している。
資金が集まる場所。
資金が逃げる場所。
「リューデルが危ない」
リシェルが言う。
「知っているのか」
「演算塔に出てる」
予測結果。
『リューデル港 崩壊確率 高』
アレクシスは眉をひそめる。
「支援は」
セリアが即答する。
「来ない」
「なぜ」
「利益がないから」
静かな言葉。
だが残酷。
自由圏では、価値がすべて。
リシェルが言う。
「これが選択の結果です」
「全員は救えない」
アレクシスは海を見た。
南港は成功した。
だが他の港は。
取り残される。
連合なら、救う。
だがここは違う。
ダリオが言う。
「それでも自由だ」
その声は少しだけ重かった。
セリアが小さく言う。
「市場は公平じゃない」
「ただ正直なだけ」
遠くの海。
見えない港。
そこでも選択が行われている。
そして結果が出る。
秤は揺れている。
今度は都市ごとに。
そしてその揺れは――
止まることはない。
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