第27話 連合の影
南港区の沖合。
白い帆船団は、静かに隊形を保っていた。
連合哨戒艦隊。
戦闘には参加しない。
だが完全に離れることもしない。
その存在自体が、圧力だった。
旗艦の甲板。
連合士官たちが集まっている。
「報告します」
一人が言う。
「南港区は外洋契約を採用」
「黒潮同盟と限定的協定」
「銀行資本の介入あり」
沈黙。
別の士官が言う。
「混合構造です」
「極めて不安定」
その場にいる誰もが理解していた。
これは連合の想定外だ。
国家でもない。
属国でもない。
管理外の秩序。
やがて、一人の将官が口を開く。
「本部はどう判断する」
「現在審議中です」
士官が答える。
「意見は割れています」
それは当然だった。
連合内部にも思想がある。
安定派。
拡張派。
管理強化派。
その中で――
「危険です」
一人の将官が言った。
「自由圏は制御不能」
「黒潮と結び、金融が介入している」
「このまま放置すれば」
彼は言葉を区切る。
「連合秩序が侵食される」
別の士官が反論する。
「だが強制介入すれば」
「自由圏は敵対する」
「市場も離れる」
沈黙。
どちらも正しい。
それが問題だった。
将官が低く言う。
「だからこそ」
「今のうちに手を打つべきだ」
その視線が海の向こうを見ている。
南港区。
新しい秩序の実験場。
一方その頃。
港では、アレクシスが連合通信を受けていた。
端末に表示される文面。
『状況報告を求める』
『外洋契約の詳細を提出せよ』
『現地判断の理由を説明せよ』
短い文。
だが圧力がある。
アレクシスは静かにそれを読む。
そして端末を閉じた。
リシェルが聞く。
「連合ですか」
「ああ」
「何と」
「説明を求めている」
セリアが笑う。
「当然ね」
「市場に国家が負けた形だもの」
アレクシスは言う。
「負けてはいない」
「変わっただけだ」
ダリオが言う。
「連合は変わらない」
その言葉は鋭い。
アレクシスは少し黙った。
確かに。
連合は安定している。
だが変化は遅い。
そして今。
外洋では新しい構造が生まれている。
リシェルが静かに言う。
「連合は介入します」
「形を変えて」
セリアが続ける。
「資本か、規制か、軍か」
どれかで来る。
アレクシスは海を見た。
白い帆。
遠くにある。
だが確実にこちらを見ている。
秤は揺れている。
今度は外洋だけではない。
連合そのものも。
揺れ始めていた。
本話もお読みいただき、ありがとうございました!
少しでも続きが気になる、と感じていただけましたら、
ブックマーク や 評価 をお願いします。
応援が励みになります!
これからもどうぞよろしくお願いします!




