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婚約破棄?結構です。では国家運営は自己責任で ~辺境が黒字化したら王都が困り始めました~  作者: 雪乃フィオナ
第2部 無王の海

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第18話 市場の戦場

 南港区の広場は、戦場とは思えないほど静かだった。


 遠くの海では、まだ砲声が響いている。


 黒潮船団と港の艦隊が撃ち合っている。


 だが広場では、別の戦いが始まっていた。


 数字の戦いだ。


 掲示塔に、新しい契約が次々と表示される。


『南港区港湾株式』


『第一次発行』


『ヴェルデ海上銀行 保証』


 港の人々が息を呑む。


 都市を株にする。


 誰も考えたことのない仕組みだった。


 セリアは掲示塔の前に立ち、淡々と説明する。


「港の価値を分割する」


「株として売る」


「資金を集める」


 彼女は計算板を叩いた。


 数字が掲示塔に表示される。


『調達資金 初期目標 800万金貨』


 広場がざわめく。


 港一つの予算に匹敵する額。


 ダリオが笑った。


「そんな金が集まるか?」


 セリアは即答した。


「集まる」


「利益が出るなら」


 アレクシスは静かに聞く。


「利益?」


「ええ」


 セリアは港を指した。


「交易港は金を生む」


「航路は金を生む」


「だから投資される」


 リシェルが言う。


「だが今は戦争中」


 セリアは微笑んだ。


「だから安いの」


 広場が静まり返る。


 彼女は続ける。


「危機の時は資産が安い」


「だから買う」


 冷たい言葉。


 だが合理的だった。


 掲示塔の数字が動く。


 最初の投資。


『外洋銀行団 出資』


 200万金貨。


 広場がどよめく。


 さらに数字が増える。


『航路商会 出資』


『北洋交易組合』


『遠洋保険組合』


 資金が流れ込む。


 港の価値を買う者がいる。


 その時、海から轟音が響いた。


 黒潮船団の一隻が爆発する。


 南港区の砲撃が命中した。


 だが別の船が突進する。


 戦いは続いている。


 セリアは海を一瞬だけ見た。


 そして言う。


「急ぎましょう」


 掲示塔の契約が更新される。


『黒潮船団 戦争保険』


 アレクシスが目を細める。


「敵に保険を?」


「そうよ」


 セリアは言う。


「彼らの船を保険に入れる」


「沈めば保険会社が払う」


「だから沈めたくなくなる」


 ダリオが笑う。


「敵を守るのか?」


「違う」


 セリアは冷静に言う。


「市場を守るの」


 広場の数字が跳ね上がる。


 株式発行額。


 600万金貨。


 あと少し。


 港の価値が市場に吸い上げられる。


 その時、沖の黒潮旗艦で動きがあった。


 提督カイロンが通信旗を上げる。


 港の見張りが叫ぶ。


「黒潮旗艦、通信!」


 通訳が旗を読む。


『ヴェルデ銀行へ』


 広場が静まる。


 セリアは笑った。


「来たわね」


 次の旗が上がる。


『保険料はいくらだ』


 ダリオが吹き出す。


「交渉か!」


 セリアは計算板を叩く。


 数字が出る。


「三隻あたり年利六パーセント」


 アレクシスは呆れる。


「戦争中だぞ」


 セリアは肩をすくめた。


「だから高いの」


 そして海を見る。


 黒潮旗艦。


 提督カイロン。


 遠くからでも分かる。


 彼は笑っていた。


 戦争が変わった。


 砲撃だけではない。


 市場が戦場になった。


 海の秤は、さらに大きく揺れ始めていた。

本話もお読みいただき、ありがとうございました!


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