第15話 黒潮の衝突
南港区の七隻は、湾の外へと出た。
帆が風を掴み、船体が波を切る。
小型船団。
だが船長たちの顔に迷いはない。
前方には黒潮同盟の三十隻。
数では圧倒的な差だ。
海の中央で、二つの船団がゆっくり接近していく。
黒潮旗艦の甲板。
提督カイロンは腕を組み、その光景を眺めていた。
「来たか」
部下が言う。
「港の船団です」
カイロンは笑った。
「いいな」
「逃げない」
彼は望遠鏡を覗く。
小さな船。
だが帆の張り方がいい。
素人ではない。
「自由圏の船長は腕がいい」
彼は低く呟く。
「だから面白い」
黒潮船団が速度を上げた。
黒い帆が膨らむ。
海が震える。
一方、南港区の船団。
老船長が舵を握っていた。
「まだだ」
彼は言う。
「まだ撃つな」
砲手たちが息を呑む。
距離は縮まっている。
砲撃可能距離まであと少し。
だが老船長は首を振る。
「もっと引き込む」
背後には湾の入口。
浅瀬。
黒潮の大型船が入れば動きにくい。
ダリオの船が横を走る。
「いい」
彼は笑う。
「誘え」
黒潮船団は追ってくる。
提督カイロンは気づいていた。
「浅瀬か」
部下が言う。
「避けますか」
カイロンは首を振る。
「いや」
彼は笑った。
「行く」
「多少の浅瀬で止まる船じゃない」
黒潮船団は進路を変えない。
そのまま湾へ入る。
距離が詰まる。
老船長が叫んだ。
「今だ!」
南港区の船団が一斉に旋回する。
砲門が開く。
火花。
轟音。
砲弾が海を裂いた。
黒潮船団の先頭船に命中。
爆発。
帆柱が折れる。
だが黒潮船団は止まらない。
反撃。
砲撃が飛ぶ。
水柱が上がる。
一隻の港船が直撃を受けた。
船体が傾く。
だが沈まない。
仲間の船がすぐ横につく。
曳航。
都市の船は互いを見捨てない。
カイロンは笑う。
「いい戦いだ」
彼は旗を振る。
黒潮船団が広がる。
包囲陣形。
老船長が舵を切る。
「湾の奥へ!」
船団はさらに浅瀬へ誘導する。
その瞬間。
鈍い衝撃音が響いた。
黒潮の大型船の一隻が岩礁に乗り上げた。
船体が止まる。
砲門が空を向く。
港の船がそこへ集中砲撃。
爆発。
黒帆が炎に包まれる。
ダリオが笑う。
「いいぞ!」
だが次の瞬間。
黒潮船団の別の艦が突進してきた。
速度が違う。
南港区の船へ体当たり。
木材が砕ける。
帆が裂ける。
海は混乱に包まれる。
遠くの海。
白い帆船団。
連合哨戒艦隊は動かない。
ただ見ている。
これは自由圏の戦い。
そして海の中央で。
黒潮と自由の船が、真正面からぶつかった。
秤は、まだ決まらない。
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