第14話 自由の戦い
港の鐘が鳴り続けていた。
重く、鋭い音が海へ広がる。
南港区の船が次々と出航準備を始めていた。
戦う。
それがこの港の選択だった。
仮設桟橋の上では、砲弾が運ばれている。
傭兵たちが帆船へ飛び乗る。
船大工たちは最後の補強を急いでいた。
自由を選んだ都市は、自分で守らなければならない。
ダリオが港を見渡す。
「いい光景だ」
彼は笑った。
「これが自由だ」
アレクシスは海を見ていた。
沖には黒潮同盟の三十隻。
戦闘隊形。
そのさらに外側に、白い帆船団。
連合哨戒艦隊。
彼らは動かない。
これは自由圏の決断だからだ。
リシェルが静かに言う。
「演算塔の戦術予測が出ました」
端末に数字が並ぶ。
敵戦力 三十隻
味方戦力 七隻
成功率 52%
ぎりぎりの数字。
だが勝機はある。
「港の地形を使う」
リシェルは海図を広げる。
「浅瀬に誘導できれば」
ダリオが頷く。
「大型船は動けなくなる」
黒潮船団は大きい。
速度はあるが、浅瀬に弱い。
南港区の船は小型だ。
機動力がある。
港の船長たちが集まる。
老船長が海図を指す。
「ここだ」
湾の入口。
浅い岩礁帯。
「ここに誘い込む」
傭兵隊長が言う。
「砲撃はそこで」
作戦は単純だ。
だが危険でもある。
ダリオが笑う。
「いい」
「自由にしては上出来だ」
その時、沖の黒潮旗艦から太鼓が鳴った。
低い音。
船団が動き出す。
三十隻の黒帆が一斉に風を受ける。
ゆっくりと、だが確実に港へ向かってくる。
海が黒く染まる。
アレクシスはその光景を見つめた。
大陸では、国家が戦う。
ここでは都市が戦う。
そして都市は命令で動かない。
契約で動く。
港の船が出航した。
七隻。
小さな艦隊。
だが帆はまっすぐに風を掴んでいる。
ダリオが言う。
「さあ」
「自由の値段を払う時間だ」
南港区の艦隊が、ゆっくりと港を離れる。
黒潮船団が迫る。
海の中央で、二つの船団が向かい合う。
沖の白い帆は動かない。
連合は見ているだけだ。
これは自由の戦い。
そして秤は、今――
海の上で揺れていた。
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