第12話 白い帆
白い帆船団は、ゆっくりと南港区へ近づいていた。
連合哨戒艦隊。
その旗艦には、大陸機能連合の天秤旗が高く掲げられている。
港の空気が変わった。
ざわめきが広がる。
「連合艦隊だ…」
「助かったのか?」
「いや、まだ分からない」
誰もが海を見ていた。
沖には黒潮同盟の黒帆船団。
そして新たに現れた白い帆。
海は二つの秩序に挟まれている。
ダリオが低く言う。
「終わったな」
「どういう意味だ」
アレクシスが聞く。
「連合艦隊が入れば、黒潮は撤退する」
「港は救われる」
ダリオは肩をすくめる。
「そしてここは連合の海になる」
その言葉に、リシェルは静かに目を閉じた。
彼女は分かっている。
連合は侵略をしない。
だが秩序は広がる。
そして秩序は、境界を消す。
その時、沖の黒帆船団が動いた。
旗艦から信号旗が上がる。
港の見張りが叫ぶ。
「黒潮旗艦、進路変更!」
船団は隊形を整えた。
戦闘陣形。
広場がざわめく。
「戦うのか」
ダリオが笑う。
「面白い」
リシェルは望遠鏡を覗いた。
そして小さく言った。
「違う」
「撤退準備」
黒潮提督カイロンは、連合艦隊と戦う気はない。
合理的な男だ。
だがその時、黒潮旗艦から再び信号旗が上がった。
通訳が読み上げる。
『港に通告』
『自由圏の決断を確認する』
沈黙。
次の旗が上がる。
『連合を受け入れるか』
『それとも自由を守るか』
広場が静まり返る。
黒潮は待っている。
連合も待っている。
どちらも攻撃していない。
決断を、港に委ねている。
ダリオが笑った。
「最高だ」
「選択の自由だ」
アレクシスは海を見つめた。
白い帆と黒い帆。
どちらも秩序。
だが形が違う。
リシェルが言う。
「あなたが決めるべきではありません」
アレクシスは頷く。
「ここは自由圏だ」
広場の中央で、契約掲示塔が光る。
新しい契約案が表示された。
『連合防衛契約』
『黒潮契約』
『自主防衛契約』
三つの選択。
署名数で決まる。
王も議会もない。
あるのは契約だけ。
人々が端末を握る。
沈黙の中で、署名が始まる。
数字が動く。
秤が揺れる。
そしてアレクシスは思う。
これは戦争ではない。
文明の選択だ。
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