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婚約破棄?結構です。では国家運営は自己責任で ~辺境が黒字化したら王都が困り始めました~  作者: 雪乃フィオナ
第1部 秤の王国

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第59話 玉座の重さ

 帝都。


 皇帝謁見の間。


 赤い絨毯の上に、重い沈黙が落ちていた。


「平原決戦、撤退」


 皇帝の声は冷たい。


「勝てた戦だ」


 レオニードは跪いたまま答える。


「持続しませんでした」


 空気が凍る。


「帝国は持続を問わぬ」


 皇帝が言う。


「帝国は勝利を問う」


 短期決戦思想。


 恐怖による圧倒。


 だが将軍は静かに言う。


「南部蜂起は拡大しています」


「鎮圧すればよい」


「鎮圧すれば、さらに拡大します」


 重臣たちがざわめく。


「弱気だ」


「王国に毒されたか」


 レオニードは顔を上げる。


「王国は恐怖で動いていない」


 その言葉が、空気を裂いた。


「帝国は恐怖で動く」


 皇帝が立ち上がる。


「それが秩序だ」


 視線がぶつかる。


 皇帝の目に怒り。

 将軍の目に疲労。


「将軍、解任する」


 重い言葉。


 場が凍る。


「後任は中央軍総監とする」


 強硬派。


 恐怖一点突破型。


 レオニードはゆっくりと頭を垂れる。


「承知しました」


 だがその背は折れていない。


 退出する。


 回廊。


 若い将校が駆け寄る。


「将軍!」


「静かに」


 小さく制す。


「帝国はまだ崩れぬ」


 だが内部は揺れている。


 ――


 王城。


「レオニード更迭」


 報告が届く。


 アレクシスは目を閉じる。


「早い」


 カイルが問う。


「悪い報せか」


「いいえ」


 ゆっくりと首を振る。


「帝国は短期決戦に傾きます」


 つまり焦る。


「次は無理をする」


 ミレーヌが数字を並べる。


「帝国債、急騰」


 市場は冷静だ。


 恐怖国家は内部安定を失い始めた。


 セシリアが言う。


「今なら、連合案を出せます」


 沈黙。


 アレクシスは窓の外を見る。


 帝国を潰すのは簡単だ。


 崩壊は近い。


 だがそれでは血が流れ続ける。


「提示します」


 短い言葉。


「降伏ではない」


「参加です」


 大陸機能連合案。


 軍需規格統一。

 共通金融監査。

 危機時共同防衛。


 恐怖国家を、包み込む。


 ――


 帝都郊外。


 レオニードは私邸に戻る。


 机に置かれた一通の封書。


 王国から。


 開封する。


『帝国を滅ぼす気はありません』


『構造を接続する提案があります』


 静かに目を閉じる。


 恐怖は強い。


 だが恐怖は、疲れる。


 帝国は今、選択を迫られている。


 玉座は重い。


 だが構造はもっと重い。


 文明の分岐は、


 目前に迫っていた。

本話もお読みいただき、ありがとうございました!


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